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TEXT:御堀 直嗣
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀直嗣 第4回:EVを走らせるモーターの基本

磁場を利用して作動するモーター 電気自動車(EV)を駆動しているのは、モーターだ。そのモーターを動かすため、電気を蓄える(リチウムイオン)バッテリーが車載されている。 モーターは、あらゆるものに使われている。電子レンジや洗濯機などの家庭電化製品はもちろん、スマートフォンでさえマナーモードの振動機能はモーターで行っている。エンジン車でも、パワーウィンドウや電動パワーステアリング、パワーシートなど、様々にモーターは使われており、身近な存在だ。 電気を流すと、なぜモーターは回るのか。 モーターは、回転軸(ローター)と、それを囲む筒状の構造(ステーター)で構成されている。ステーターの磁石を利用した磁場の効果で、ローターを回転させる。 もっと噛み砕けば、磁石にはN極とS極があり、NまたはSの同じ極同士は反発しあい、異なる極は引きあう力が働く。同じ極同士が反発する力を使って、モーターは回転軸を回すのだ。 EVで使われるモーターは、ステーターだけでなくローターも磁石になっている。互いの磁石のN極とS極が反発しあうことを利用している。しかし回転するとN極とS極が向きあい、引きあって回転を止めてしまいかねない。そこで、N極とS極が向きあわないように電流の方向を変え、常に反発しあう同じ極同士が向くようにしている。 直流と交流、それぞれの方式 電気には、直流と交流がある。直流は、プラスからマイナスへ一方向に電気が流れる。身近なものでは乾電池がそれだ。+と-の表記があり、逆に装填すると電気が流れず、機器は動かない。電気が一方向にしか流れない証だ。 もうひとつが交流だ。これは電気が流れながら、+と-が交互に入れ替わる。家のコンセントに流れてくる100ボルトの電流はこの交流である。したがって、コンセントの差込で、プラスとマイナスを確認しなくていい。 電流の+と-が交互に入れ替わることで、モーター内の磁石のN極とS極を切り替え、ローターを回転させるのが交流モーターだ。これがEVで使われている。 しかし直流モーターという事例もある。これは直流の電気を流しながら、ローターの軸受けのところにN極とS極を切り替える仕組みがあり、NまたはS極が同じ極同士で向きあうよう電流を切り替え、ローターを回転させている。ローターの端には整流子と呼ばれる部品がある。菓子のバームクーヘンを切り分けたような形をしている。軸受け側にはブラシと呼ばれる部品があり、ここに整流子が触れたり触れなかったりを繰り返すことで、電流を切り替え、N極とS極が向きあわないようにしている。 直流モーターでも、ブラシのないブラシレスという種類がある。ステーター側の電磁石に流す電流を、トランジスターを使った回路で切り替え、同じ電極同士が向きあうようにしている。 市販EVはすべて交流モーターを使っているが、エンジン車をEVに改造したコンバートEVでは、手に入りやすく安価な直流モーターを使う場合が多い。ただ近年では、改造用の交流モーターも手に入るようになり、コンバートEVでも交流モーターを使う事例がある。 永久磁石式か、巻き線式か? 市販EVで使われているのが、永久磁石式同期モーターと呼ばれる交流モーターだ。これは、ステーターに電磁石を用い、ローターには永久磁石を使う。 電磁石は、鉄芯に銅線を巻き付け、これに電気を流すと磁石になる。電気を使う磁石なので電磁石と呼ばれる。 永久磁石は磁力を備えた金属で、子供のころに遊んだフェライト磁石が代表例だ。しかしEVで使うには磁力が弱く、1トンを超える重さのEVを自在に加速させることはできない。そこで磁力を高める改良が施されている。 磁力を増すために使われるのが、希土類(レアアース)と呼ばれる元素だ。具体的にはネオジムが使われている。元素の周期表で60番目の金属だ。これを混ぜることで、フェライト磁石の約10倍の磁力が得られる。どれほど磁力が強まったかというと、一度、N極とS極が向きあい、くっついてしまうと、人の力では引き離せないほどの強さだ。ネオジム磁石は、1984年に住友特殊金属(現・日立金属)の佐川眞人らによる日本の発明である。 ネオジム磁石の何よりの利点は、優れた磁力で力強くモーターを回せるのはもちろん、ローターにも電磁石を使う場合に比べ小型化できるところにある。したがって、EVのみならず、エンジンとモーターを搭載するハイブリッド車では不可欠な存在となっている。 ネオジム磁石はしかし、120℃を超えると磁力が失われてしまう。このため、高温対策としてディスプロシウムという希土類元素を添加物として加え、熱への耐久性を高めている。 こうして市販EVの多くが、永久磁石式同期モーターを採用している。 一方、世の中の多くがEVへ移行していくと、資源問題に直面しかねない。希土類元素と呼ばれるほど、希少で資源量が限られるからだ。そこでローターにも電磁石を使う、巻き線式と呼ばれる交流モーターを使うEVも市販されている。 たとえば、ドイツのアウディやメルセデス・ベンツ、あるいはテスラにも採用例があり、日本車では日産アリアが巻き線式モーターを使っている。 巻き線式モーターは、鉄芯に銅線の巻き数を増やせば出力を高められる。しかし巻き線数が増えるほど寸法が大きくなりやすい。そこでいかに効率よく銅線を巻き付けるかがカギを握る。 巻き線式モーターを使うEVは、電気を流さなければ磁力を持たない鉄と銅だけでの回転となるため、走りだしたあとではアクセルを戻したときの滑空感が一段と高まり、EVならではの滑るような走りをいっそう強調することができる。 この先、EVの台数が増えれば増えるほど、素材の調達で影響の少ない巻き線式モーターを見直すようになっていくのではないか。すでに巻き線式の交流モーターを使うメーカーは、EV時代の一歩先の試行錯誤をはじめているといえる。

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知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀直嗣 第3回:バッテリーを活かす制御

バッテリー使用の適正温度とは 寒い冬を迎えると、バッテリーの容量が足りないと実感することがあるかもしれない。電気自動車(EV)で駆動用に車載されるリチウムイオン・バッテリーも同様だ。 バッテリーの出力や充電の性能は、電流と内部抵抗の掛け算によって算出される。内部抵抗とはいわば損失で、温度が下がると電解液の性状やリチウムイオンの移動が低下する特性がある。このため、寒い時期には充電しにくくなったり、あるいは温かな季節にはもっと走行距離を延ばせていた充電残量でも、どんどん電力が減って早めに充電しなければならなくなったりする。 エンジン車でも、たとえば軽油を使うディーゼル車は、寒冷地仕様の燃料でないと冬場に始動できなくなる場合があり、特性を知ったうえで利用することが望まれる。 リチウムイオン・バッテリーに話を戻せば、逆に高温になり過ぎても、熱暴走などといわれる異常な発熱や発火の恐れがある。そこで車載バッテリーを冷却したり、出力を抑えることで温度上昇を防いだりする必要がある。高速道路を走ったあと、急速充電をしようとしてもなかなか充電できないといった事例があるが、これは熱暴走を起こさせないための制御が働くためだ。 一般的に、バッテリーは人が快適に暮らせる温度が適しているともいわれ、昨今のEVは冷却や暖房機能を備えることで、適正温度の範囲で使えるような対策が施されている。ことに液体冷却を採用すると、温度を管理しやすくなる。 三元系リチウムイオン・バッテリーの特徴 初代の日産リーフは空冷によって冷やしながら、正極にマンガン酸リチウムを採用することで熱暴走を防ぐ対策が行われていた。空冷であることによって、廃車後のリチウムイオン・バッテリー再利用のための分解作業がしやすい利点もあった。液体冷却のような強制冷却でなくても、車載バッテリー容量が多くなかったので、走行風を利用することで適性に冷却できた。そのうえ、正極のマンガン酸リチウムはスピネル構造と呼ばれる金属結晶構造を持ち、万一の過充電になっても結晶構造が崩れにくく、短絡(ショート)しにくいので、熱暴走が起きにくかった。リーフが発売されてから、深刻なバッテリー事故が一件も起きていない背景に、こうした慎重なバッテリー採用が機能していた。 一方、スピネル構造は結晶が崩れにくい反面、リチウムイオンを蓄える容量が少なくなる。このため、現在のリーフを含め多くのEVが三元系と呼ばれ、マンガンのほかにコバルトとニッケルという3つの元素をあわせた正極とすることで、容量を増やし、より長い走行距離を実現できるようになった。 層状構造と呼ばれ、リチウムイオンを含む量の多いコバルトは、万一リチウムイオンが抜けきってしまうと結晶構造が崩れてしまいかねない。そこで、リチウムイオンが正極から抜けきってしまうことを防ぐため、充放電の制御をクルマが行うことも重要だ。 EVは充放電の状況を常に監視し、これを製造した自動車メーカーが通信を利用して一台ずつ把握している。したがってEV販売台数の多い自動車メーカーほど、市場でリチウムイオン・バッテリーがどのように充放電されているかの知見を豊富に持つことができる。その実績を基に、どこまで電力を使ってよいのか? 充電ではどこまで負極にリチウムイオンを移動させてよいかを、危険が生じないぎりぎりまで攻め込んだ制御プログラムをつくることができるようになる。いくら机上で計算しても、消費者が市場でどのように使っているかを知らなければ、最大の性能は引き出せない。

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知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第2回:進化するバッテリー技術

性能向上が求められたEV用バッテリー ドイツのフェルディナント・ポルシェが最初につくったのは、電気自動車(EV)だった。ところが、蓄電池(バッテリー)の性能が十分でなく、次にガソリンエンジンを発電用に使うハイブリッド車(HV)を開発した。発電した電力でモーター駆動を行う、シリーズ式ハイブリッドシステムだ。ここでいうバッテリー性能とは、1回の充電で走れる距離についてである。 動力性能という点では、ベルギーのカミーユ・ジェナッツィが1899年に自動車として初の時速100kmを達成し、それはラ・ジャメ・コンタントと名付けられたEVによる快挙だった。このことから、EVが高性能な素養を持つことがわかる。 また、米国のヘンリー・フォード夫人であるクララは、デトロイト・エレクトリック社の1915年型EVを愛用していた。20世紀初頭、ガソリンエンジン車に比べ、EVは女性にも運転しやすく、静かで、上品な乗り物だったのだ。 しかし、20世紀に世界的な普及を果たしたのはガソリンエンジン車だ。トーマス・エジソンの発明によってランプから電灯に切り替わったあと、米国の石油会社が燃料の販売先としてエンジン車に目をつけ、ガソリンの販売をはじめたからだ。 一方のバッテリーはというと、以来100年近くもの間これといった進化がなく、2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野 彰博士が、1990年代にリチウムイオン・バッテリーの実用化に道筋をつけたことでようやく躍進し、EVが実用的な一充電走行距離を手に入れられるようになったのである。 それまでは、ポルシェなどが使った鉛酸とよばれるバッテリーが中心だった。電極に鉛を使い、これに希硫酸を電解液として用いることで化学反応を起こさせ、鉛の原子が電子を放出し、正極から負極へ電気が流れる仕組みだ。充電はその逆の化学反応になる。充放電のときの化学反応で、電極の物質は変化している。 EVを変えたリチウムイオン 1960年代に実用化されたニッケル・カドミウム(通称ニッカド)や、1990年に実用化されたニッケル・水素吸蔵合金(一般にニッケル水素)といった、いわゆるバッテリー容量がより大きいバッテリーが生まれると、電動の模型や家庭電化製品、あるいはHVや一部EVなどで使われた。これらバッテリーの充放電の仕組みも、鉛酸と同様、電極の物質が電解液によって化学反応を起こし、電子を放出して物質が変化することで電気の流れを起こす。 これらバッテリーの弱点は、電極の材質が化学反応によって変化するため、次第に物質の化学変化が起こりにくくなり、いわゆる劣化という状態となって充電性能が落ちる。 これに対し、リチウムイオン・バッテリーは、正極の電極材料に含まれるリチウムイオンが、正極と負極の間を行き来することで電気の流れを生み出すので、電極の材質は変化しないため、劣化しにくい。 また、1セル(ひと組の正負極によるバッテリー最小単位)が生み出す電圧が高いので、同じ電流を流した場合でも電力を大きくできることから、バッテリー容量も大きくなり、一充電走行距離を長くできる。 以上のように、バッテリーとひと言でいっても、鉛酸やニッケル水素などと、リチウムイオンでは、まったく素性が異なるのである。リチウムイオン・バッテリーが革新的といわれる理由がそこにあり、吉野博士もノーベル賞を受賞できたといえる。 ポルシェやジェナッツィ、あるいはクララ・フォードの時代から最大の懸案であり、EVの弱点であったバッテリーが、リチウムイオンの実用化で大きく進化し、一充電走行距離を確保できる時代が訪れた。そうなると、もともと動力性能や運転のしやすさなどで優れたEVが、実用の域に達し、普及の兆しが表れたのは、当然の成り行きといえるのである。 リチウムイオン独特の使い方 ただし、革新的バッテリーであるリチウムイオンには、高性能であるが故の注意点がある。電極に含まれたリチウムイオンが移動するため、過充電の状態になると、電極の結晶構造からリチウムイオンがすべて抜け出てしまう。これにより電極材料の結晶構造が崩れ、短絡(ショート)する懸念があるので、過充電とならないような制御が必要だ。 そこで、適度に電気を使ったらこまめに充電したり、必ずしも100%の満充電にしようと思わないようにする使い方が、リチウムイオン・バッテリーには適している。そのほうが、バッテリー寿命を永くもたせることにも通じる。 大電流や高電圧を利用するEVでは、ことに過充電や過放電の悪影響が大きくなるため、バッテリー充電の制御をクルマが行っている。 逆にニッカドやニッケル水素のバッテリーは、充電された電気を使い切ってから充電をはじめないと満充電にできない特性があった。したがって、こまめな充電はよくないとされてきた。このバッテリー特性による得手不得手という違いにおいても、リチウムイオン・バッテリーは従来と別の扱いになることを知っておくとよい。 リチウムイオン・バッテリーのそうした特性は、スマートフォンなどで使われているリチウムイオン・バッテリーも同じなので、充電をこまめに行い、必ずしも満充電にしないで利用するほうが、バッテリーにやさしい使い方となり、寿命を永く保つ秘訣でもある。

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[新連載]知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣

第1回 EVが生み出す自動車の変化 EVは「代替自動車」ではない! 電気自動車(EV)は、エンジン車やハイブリッド車(HV)などの代替ではない。ここからすべてははじまる。 しかし一般的には、脱二酸化炭素のための代替案との認識が広まっている。それが、あらゆる歪みを生じさせている。 たしかにEVは、エンジンがモーターに代わり、燃料タンクがバッテリーに代わり、使う燃料がガソリンや軽油に代わって電気になるという表面上から、エンジン車やHVの代替と考えられがちだ。 だが注目すべきは、使う燃料(エネルギー)が異なることにより、走行性能や運転の仕方、あるいは燃料補給(EVでは充電)の考え方まで違ってくることであり、そこをよく理解する必要がある。 電気に支えられた生活の中で 電気はいまや、暮らしのあらゆる面で不可欠なものとなっている。スマートフォンはもちろん、電子レンジや冷蔵庫、テレビ、空調に加え、調理でもIH(インダクションヒーティング=電磁誘導加熱)のヒーターで料理をすることができる。トイレのウォシュレットも、もはや欠かせないものではないか。もし、ここで停電が起きたら、スマートフォンの充電ができなくなり、情報から孤立してしまう。冷凍食品は台無しになり、電子レンジでのわずか数分の調理も不可能だ。冷暖房にも不自由し、暑さ寒さに耐えなければならない。通常の暮らしが成り立たなくなるのだ。 クルマでの移動については、エンジン車のほうが停電に関係ないと思うかもしれない。だが、信号が消え、交通が混乱し、ガソリンスタンドへの燃料搬送が滞れば、結果的に不自由する。いっぽうでEVであれば、車載のバッテリーから電力を自宅へ供給することで、一時的な停電に対処できる。かえってEVに乗ることが、暮らしの安全保障につながるのである。 そうしたことからも、EVに乗ることは、暮らしを守る電力について真剣に考える機会を与え、電気の質にもこだわる意識が芽生えるようにもなる。 20世紀初頭、まだ明かりはランプに頼り、調理は竈で行っていた。薪を燃やし、石炭ストーブで暖まり、火を使うことが暮らしを支えていた。その延長として、石油を燃やして使うエンジン車が栄えた。エンジン車誕生の前にEVがすでにあったと伝えられるが、EVよりエンジン車が広まった背景にあるのは、灯油を使うランプが電灯に代わり、石油の使い道がなくなったことに困った石油事業者が、エンジン車の燃料としてガソリンを売る事業を展開したからだ。20世紀が石油の時代といわれるゆえんがそこにある。 しかし21世紀は電気の時代であり、クルマがEVであることは必然なのだ。 時代の転換点に立つ自動車 そのうえでEVとエンジン車の違いは何かといえば、EVは振動も騒音もなく、排出ガスも出ず、動力特性はフラットトルクで、変速機を必要とせず、車体寸法の大小を問わず上質な乗り味を手に入れられるところにある。 逆にいえば、エンジンは不都合の塊といえる。振動と騒音があり、煩くて不快だ。有害物質や二酸化炭素を含む排出ガスを出し、環境を汚染する。出力特性が山なりなので変速機が必要で、加速に段差がある。高級であるためには車体が大きくなることで偉さを示すしかない。カール・ベンツがガソリンエンジン自動車を発明した当時、それまでの馬や馬車での移動に比べエンジン騒音が大きかったため、人々に眉をひそめられ、対応策として消音装置(マフラー)が付けられた。それでもエンジン車が普及することで、大気汚染や気候変動が起こり、健康被害に悩まされたり異常気象の被害に遭う人が生まれる。低回転での出力が足りず、変速機というギア比で力を補わなければならない。大馬力でのゆとりや、ゆったりした乗り心地の高級さを求めるなら、車体を大きくしなければならない。 そうしたエンジンの不都合を克服しようと改善してきたのが、1886年にガソリンエンジン車が生まれて以来の歴史である。 しかし、EVであれば、モーター駆動により振動もなく静かである。逆に、静かすぎるということで、低速では通過音をあえて出すほどだ。排出ガスが出ないので、大気汚染も気候変動も起こさない。モーターは、低速から大きな回転力(トルク)を出す原動機なので、高速まで滑らかに加速して心地よい。駆動用バッテリーを車載することで車両重量は増えるが、その効果として微振動が抑えられ、上質な乗り心地になる。静粛性と合わせて、軽自動車の日産サクラや三菱eKクロスEVでさえ、登録車のハイブリッド車より快適だ。つまり、小さな高級車という価値が生まれるのである。 充電や整備、あるいは自動運転へ向けた適合性などについては、いずれまた話すときがあるだろう。いずれにしても、世界人口が80億人に達したいま、ガソリンエンジン車が発明された19世紀末に比べ世界人口は5倍も増えた。そして排出ガスを出すエンジン車が世界に13億台もあれば、地球環境が大きな負荷を受けるのは当然だ。 だからエンジン車からEVにするというだけでなく、そもそも電気の世紀を快適に暮らすうえではEVこそがふさわしい。そうした時代の転換点に、我々はいるのである。

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