#岩尾 信哉
TEXT:岩尾 信哉
米テスラ、米国ネバダ州に2工場増設を発表。 EV用バッテリーとEVトラック「セミ」を生産

電気自動車(EV)専業メーカーである米テスラは、去る1月24日に米国ネバダ州リノ郊外の生産拠点である「ギガファクトリー・ネバダ」に2工場を新設すると発表した。それぞれEV向けバッテリーとEVトラック(トレーラーヘッド)である「セミ」を生産する。新工場新設への投資額は36億ドル(約4,690億円)を想定している。 EV用バッテリー生産を大幅増強  最近では戦略的といえる世界的な値下げ(モデル3とモデルY)で話題となったテスラだが、米国での追加の設備投資を発表することになった。新たに建設されるバッテリー工場では最新のリチウムイオン・バッテリーセル「4680」を生産し、生産能力は年間で小型車用として最大200万台分となる予定。「セミ」初の量産施設については、具体的な生産台数の見込みは示されなかった。 これまでテスラが62億ドル(約8,000億円)を投資してきた「ギガファクトリー・ネバダ」では、EV用のモーターやバッテリーパックのほか、家庭用バッテリー「パワーウォール」などをも生産してきた。ちなみに、2014年にテスラが設立した同工場で生産されたバッテリー総数は73億個(150万個のバッテリーパック)を数える。 今回、発表された新バッテリー工場の生産規模は100GWh(4,680バッテリー)に及ぶ。2030年までにバッテリー生産量を約100倍に引き上げ、バッテリーコストを半減するという目標達成をテスラは掲げている。従業員数は両工場合わせて約3,000人となるという。 EVトラックの量産を開始 テスラが2017年に発表した商用EVトラックである「セミ」は、約5年を経た2022年12月に世界的飲食品メーカーであるペプシコに、ようやく第1号車が納車されたばかりだ。 「セミ」では商用EVにふさわしいブレーキ周りの耐久性の高さやメインテナンスの容易さなどが謳われ、将来に向けて自動運転技術の採用を見据えている。走行性能に関しては、0―100km/h加速が5秒、車両総重量36トンの荷物満載状態で20秒。電費性能は「航続距離が500マイル(約800km)、燃料消費率2kWh/マイル」とのデータをテスラは公表しており、専用充電器「メガチャージャー」によって充電を行うとのことだ。

TAG: #テスラ #岩尾 信哉
TEXT:岩尾 信哉
ソニーとホンダはEVに何をもたらすのかーEVにおけるプロダクトデザインとは

期待を集めた「プロトタイプ」 去る1月5日から開催されたCES2023において、ソニーとホンダの合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ(以下、SHM)」は新たなEVブランド「AFEELA(アフィーラ)」を立ち上げたことを明らかにした。ソニーとホンダのコラボレーションと聞いて胸躍る世代にとっては、否応なく注目せざるをえなかった。自動車のみならず、ITビジネス関連など、様々なメディアで採り上げられていることからも、世間の注目度の高さが窺える。 SHMのプレゼンテーションではアフィーラ・ブランドのコンセプトの表明と、採用予定のIT技術の詳細な説明が用意されていた。対して、スタイリングなどデザインについては、「期待過多」の観は否めなかった。あくまでこちらの勝手な思い入れもあってか、壇上に姿を現したモデルのスタイリングにはデザイン上の冒険は見られず、保守的と思えてしまった。「家電見本市」としてのCESでのソニー・グループのプレゼンテーションの場であったことを忘れてはいけなかったのだ。SHMにとっては、EVブランドの立ち上げとともに、ソニー・グループとして多くのるインフォテインメント、エンターテインメント技術を自社のEVに与えると表明することこそが重要といえた。 微妙に変化したデザインコンセプト 正直に言えば、もっと斬新なスタイリングをまとったコンセプトカーが登場すると期待したのだが、見た目はエッジを効かせたキャラクターラインさえも存在しない立てだった。発表されたアフィーラ・ブランドの車両として名称を与えず、ザインスタディやコンセプトカーとも名乗っていない。実際のテストベッドとなるかどうかも明確ではないことは、ソニーの意図が反映されているに違いない。 個人的にはホンダが生産技術、安全技術の具体化などでどのような関わり方をするのか、ホンダ側のスタンスも訊いてみたいところだが、まずはSHMとして、先端IT技術を駆使したエンターテインメント性をEVに与えること。そのためのテクノロジーを披露する意味合いが強い「プロトタイプ」であることを認識すべきだろう。  振り返れば、すでにソニーはSHM設立以前に、2種類のEVコンセプトモデルを発表していた。「ヴィジョンS01」は、2020年に登場した「ヴィジョンS」が2022年CESでの「S-02」の登場とともに改称されたものだ。 スタイリングはS01がクーペセダン、S02がクロスオーバーSUVに仕立てられていた。「プロトタイプ」はS01と同じく4ドアクーペではあっても、微妙に異なるデザインスタンスがとられていたのは、将来の量産モデルに「予見を与えたくない」ということかもしれない。 サイズ感は直球勝負 それでは「プロトタイプ」について明らかにされたスペックの概略について触れておこう。 ちなみに北米市場の量販カテゴリーであるミドルクラスセダンに属するホンダの新型アコードは、全長が約4,970mm、ホイールベースが約2,830mm(どちらも北米仕様)。これに比べて、上記3車のホイールベースは3,000mm前後と、150mm以上長く採っているのは、モーター搭載によってパワートレインのレイアウトの自由度が高いEVならではといえる。  プロトタイプのプラットフォームは新型アコード用のグローバルプラットフォームをベースとしているはずだが、量産モデルでは現在ホンダとGMが共同開発中のEV用プラットフォームを採用するはずだ。   削ぎ落とすデザインはソニーの思想の表れか なにより、今回発表されたSHMの「アフィーラ」プロトタイプでは、デザイン上のシンプルさが際立っている。既存の量産EVの多くが、商品性として「トレンドを外したくない」ことから、クロスオーバーSUVという現状でのマーケットでの鉄板デザインに乗るといった風潮がある。これに抗うようなチャレンジ精神を斬新なデザインを与えて成立させることは想像以上に困難な作業といえるはずだ。 エクステリアで目を引くのは周囲の状況を感知するセンサーによってノブを廃したドアパネルだ。センサー技術とホンダの安全技術の融合というテーマはわかりやすくデザインに反映されている。  さらにフロントエンドのLEDヘッドライト間、リアではコンビネーションランプ中央部分に「メディア・バー」と名付けたディスプレイを装備している。「知性を持ったモビリティがその意思を光で語りかける」というコンセプトを掲げるインタフェースには、バッテリーの充電ステータスなどが表示されるという。 インテリアを見ると、左右方向にスッキリと仕立てられた液晶パネルが特徴的。ヴィジョンS01よりも上下に薄く仕立てられている。ステアリング形状は上部を切り取った長方形の上部を切り取ったU字型デザインとされているのも、デザイン要素を削除する手法といえる。  将来の量産EVのエクステリアデザインについては未知数といえ、ある意味で「どうにでもなる」といえなくもない。ともかくプロトタイプに機能的なギミックは少なく、プレーンさが際立っており、インテリアでもシンプルさを追求する意図は見て取れる。ソニーのプロダクトデザインの真髄を思い浮かべれば、機能美を備えたシンプルさであると捉えたい。  ともあれ、2025年に登場予定のSHMの量産EVには、自動車の商品性の意味を変えるほどのプロダクトデザイン、願わくば自動車業界の常識を覆すような製品レベルまで辿り着いてほしいものだ。  

TAG: #ソニーホンダ #岩尾 信哉

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
BEV大国の中国で販売が失速! ここ数年でPHEVのシェアが伸びていた
中国市場でファーウェイのEVが爆発的人気! ライバルを凌ぐ激安っぷりと超豪華内装のAITO M9とは
more
ニュース
ミラーとタイヤとホイールをとことん突き詰めたら600kmオーバー! アウディEV史上最長の航続距離を実現するパッケージが登場
イケイケのBYDの次なる一手は認定中古車市場への進出! 「BYD CERTIFIED」開始でEV購入のハードルがダダ下がり
ホンダの「H」マークが様変わり! 新たなEVシリーズを2024年末以降に発売予定
more
コラム
イケイケだったテスラに何があった? イーロンマスクが1.5万人規模のリストラを発表!
固体電池を早くも実用化! 中国のEVセダンは競争激化で「価格も航続距離も性能も」驚異的な世界に突入していた
日産が発表した中期経営戦略! 2026年に100万台の販売増加を打ち出した「The Arc」に立ちはだかるハードル
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
誰もが感じる「ポルシェに乗っている」という感覚! ポルシェはBEVでもやっぱりスポーツカーだった
佐川急便とASFが共同開発した軽商用EV「ASF2.0」に乗った! 走りは要改善も将来性を感じる中身
more
イベント
中国市場のニーズに合わせて開発! 日産が北京モーターショー2024で新エネルギー車のコンセプトカーを出展
レース前に特別に潜入! フォーミュラEに参戦する日産チームのテント内は驚きと発見が詰まっていた
日産がフォーミュラE「Tokyo E-Prix」開催前スペシャルイベントを開催! 六本木ヒルズアリーナに1夜限りのサーキットが出現
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択