昨今、クルマにとって電動化とともに重要なのはデジタル化だ。「CASE」がその象徴だろう。BMWはこの自動車界における大変革期を、あるポルトガルの企業と乗り越えようとしていた。 ソフトウェアに特化した企業と手を組む 電気化を推進するとともに、いわゆるデジタライゼーションに力を入れているBMW。おもしろい取材を、i5の試乗会が開催されたポルトガル・リスボンで出来た。 私が訪れたのは、リスボンのちょっと郊外にある再開発地区。経済危機を経たポルトガルが、新たな振興策としてテック産業に力を入れると宣言したのが2018年。一帯は誘致地区だと思う。 ITの知識と技術を豊富に持った人材がどんどん育ってきているのを背景に、BMWでは、「クリティカルソフトウェア Critical Software」とのジョイントベンチャーで、「クリティカルテックワークス Critical TechWorks」なる企業を立ち上げている。 「私たちは、車両のデジタライゼーションが急ピッチで進むことを以前から予想しており、さまざまな形で、しかも速いペースで、それに対処する必要性をずっと感じていました」 背景について、BMWから出向して、クリティカルテックワークスを統括するヨッヘン・キルシュバウム氏はそう説明する。 「もちろん、私たちが本社を置くミュンヘンを中心に、ドイツでも人材を探しました。でも限界があるのです。そこで国境をまたいで、この業務にぴったりの企業を探したのです」 キルシュバウム氏は、BMW本社に20年以上在籍し、主業務は、ソフトウェア開発。なかにはコネクテッドカー、インフォテイメント、自動運転が含まれているそうだ。 「BMWは言うまでもなく100パーセントのソフトウェア企業ではありません。でも私たちが探したのは、最初からソフトウェアに100パーセント特化した企業でした。そして出合ったのが、ポルトガルのクリティカルソフトウェア。ジョイントベンチャーをスタートさせたのが2018年でした」