3月18日〜19日に開催されたBEVとPHEVのみの展示イベントを訪れた、自動車ジャーナリストの嶋田智之さんが抱いた実感とは。 徐々に浸透してきたBEVの存在 日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会のデータを基に日本自動車会議所が取りまとめた数値によると、2022年に新車として販売された乗用車の中でマイルドハイブリッドやFCEVを含めた電動化モデルが占めた割合は、45.4%だった。ところがモーター駆動もしくはモーター駆動がメインとなるBEVやPHEVは合わせても、その中の2.8%を担っているに過ぎない。販売面ではまだまだ少数派なのだ。 けれど、あくまでも感覚的なものではあるものの、近頃では電気自動車という乗り物が普通に受け入れられるようになってきている。まだ購入には至っていないし、ためらいもあれば迷いもあるのかもしれないが、展示されているクルマたちを眺める人々の視線がうがった感じではなく、何だかとっても自然だったのだ。3月18日〜19日に開催された『EV:LIFE FUTAKOTAMAGAWA 2023』の会場で、僕はそんなふうに感じていた。 このイベントは自動車雑誌『LE VOLANT』が2021年から開催している、BEVにPHEVというモーター駆動もしくはモーター駆動をメインとして走行するクルマのみを集めて展示する催しだ。東京・世田谷区の二子玉川ライズショッピングセンターの真ん中を貫く通路や広場に国内外の17ブランドのクルマがズラリと並べられて、買い物に来たり映画を見に来たりした人たちも、間近でクルマを見たり実車に触れたりすることができるのが、まず素晴らしい。 発売前のプロトタイプや導入が期待されている国内未導入のクルマなどもいくつか並べられ、事情通のクルマ好きたちの期待にも応えていた。 また古いフィアット500やフォルクスワーゲン・ビートルなどの歴史的名車をBEVにコンバートしたクルマが並ぶコーナーが用意されていたり、給電機能のあるBEVのバッテリーを利用して電子ピアノのライヴが行われたり、会場に面した蔦屋家電の協力で家電製品を使ったキャンプを提案するコーナーが作られていたりと見どころも多かった。 ただ環境意識に訴えかけるのではなく、EVがある暮らしはこんなふうに明るく楽しいという提案がそこここにあって、EVという古くて新しい乗り物に対する精神的な距離感を上手に縮めてくれていた。一般の人にとってはショールームにEVを見に行く、試乗しに行くというのは、ちょっとばかり特別なこと。その敷居を上手に下げていた印象だ。 特に人気のあったステランティスの3台 会場のどのブランドのブースでもお客さんが楽しそうな笑顔でクルマのそばにいるのを見ることができた中で、最も印象的だったひとつがステランティスのブースだった。 なかなか手に入れることがむずかしいノベルティがもらえるキャンペーンを展開していたこともあるのだけど、やっぱり大きいのは展示されていたクルマたちだろう。 キャラクターがはっきりとしていて人目を引くモデルが3台、それらを前にクルマの説明を受けている人や室内に乗り込んで細かなところをチェックしたりする人が後を絶たなかったのだ。 女性やお子さん、それに意外や40〜50代の男性などに人気が高かったのが、「フィアット500e」。ブランド初の量産BEVモデルで、1957年に誕生した歴史的な名車、ヌォーヴァ500が持つ独特の世界観を、電動化時代を前に新たに解釈しなおしてゼロから設計・開発したモデルだ。 古くから知られた500ならではの明るさと楽しさ、それにEVならではのメリットや味わいが無理なく融合したクルマである。ちなみに展示されていたのは目下のところBEVでは世界で唯一のオープントップモデルだ。 20代から50代と幅広い年齢層の男性が取り囲んでいたのは、「ジープ・ラングラー・ルビコン4×e」。こちらはBEVではなくPHEVの4WDモデルだが、モーターだけで42kmの距離を走行することができる。 ルビコンのネーミングが与えられていることからも想像できるとおり、緻密な電子制御と相性が抜群なモーター駆動を武器に、シリーズ最強=ジープ・ブランド最強の悪路走破性を誇っている。大自然が生み出す美しい音と静寂を耳で楽しみながら道なき道を走ることもできる、というわけだ。 お洒落なカップルやファッショニスタたちに注目されていたのは、「プジョーe-208」。パリジャン&パリジェンヌそのものといった小粋な雰囲気を醸し出すルックスは、ディテールを除くと内燃エンジン搭載モデルとほぼ一緒。その埋もれることはないけれど決して悪目立ちもしないさりげなさこそが、大きな魅力といえる小粋な5ドアハッチバックだ。とはいえ乗り味は非凡で、スポーティなハンドリングも上質な乗り心地も、もちろん力強さも、BEVモデルの方が一枚上手と評価する人も少なくない。