リマック 記事一覧

リマック・ネヴェーラ(photo=リマック・オートモビリ)
TEXT:福田 雅敏
3億円でも庶民派……スーパーカーの新たな価値を提示するEV「リマック・ネヴェーラ」

日本初上陸した個体は「アドリア海の真珠」そのもの スーパーカーや高級中古車の販売を手がけるビンゴは、クロアチアのハイパーEVメーカー「リマック・オートモビリ」の日本代理店を務めることとなった。それに伴い、同社の市販モデル「ネヴェーラ」が日本に上陸した。その発表会に赴いたのだが、実車を前にした感想をレポートしたい。 既に「デイリーEVヘッドライン」で何度も伝えている「ネヴェーラ」だが、日本に上陸した個体は、東欧クロアチアの美しさそのものをEVで表現していた。「アドリアブルー」と言える瑠璃色のボディカラーに、レンガ色をしたインテリアカラーは、リマックの故郷であるクロアチアの“アドリア海の真珠”と称される都市「ドゥブロヴニク」のイメージである。 上陸した個体はアドリアブルーだが、ボディカラー/インテリアカラー/ホイール/ブレーキ等のカラーは、オーナーの好みに合わせ自由に選ぶことができる。海外では2022年夏より既に納車も始まっているが、150台の限定販売となる。価格は2ミリオン・ユーロ(税別約3億2000万円)と破格である。 ニュル7分05秒298の理由はパワーだけではない 性能も破格で、およそ2,000psというとてつもない高性能パワートレインが搭載され、120kWhのバッテリーで490km(WLTP)の航続距離を持つ。その高性能ぶりの一部を紹介すると、0-100km/hは1.81秒、最高速度は410km/hに到達する。外観で目を引く専用の20インチホイールには、ミシュランの「パイロットスポーツ4S」を履いている。フロントは275/30R20、リアは315/35R20のサイズとなる。 0-100km/hもそうだが、ドイツ・ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェでは、量産EVの最速の7分05秒298というタイムを樹立。その秘訣はもちろん2,000psのパワーであることは間違い無いのだが、4つのホイールをそれぞれ独立制御できる「リーマック・オールホイールトルクベクタリング」と「アクティブエアロダイナミクス」と言われる空力性能に優れたボディデザインもあってこそだろう。フロントボンネットとリアウイングは可変式となって走行状態に合わせて可動するようだ。 ちなみにボディはフルカーボンのモノコック構造。高い剛性と軽量化に寄与している。5年という開発期間の中には、45回のクラッシュテストも含まれており、安全性が徹底的に検証されている。

TAG: #EVスーパースポーツ #THE視点 #充電インフラ
リマック・ネヴェーラ(photo=福田 雅敏)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
美しき豪速EV「リマック・ネヴェーラ」が日本発売……0-100km/h加速1.8秒[2023.09.19]

最高出力1,940ps・0-100km/h加速1.8秒・価格約3億1500万円と脅威の数字の羅列 日本初公開となった個体は鬼神的数値と相反する美しい佇まい 【THE 視点】ハイパーカーの輸入・販売を手掛けるビンゴは9月13日、クロアチアのEVメーカー「リマック オートモビリ」の市販モデル「ネヴェーラ」の日本導入を発表した。実車は15日まで「ARTA MECHANICS & INSPIRATIONS」<東京都江東区新木場>にて展示した。 このデイリーEVヘッドラインでも伝えてきたハイパーEVが、筆者の想像より早く日本に上陸した[詳細はこちら<click>]。注目の高性能スポーツEVだけに、いち早く現車を確認すべく会場に向かった。 「ネヴェーラ」のスペックは驚異的である。4つのホイールにそれぞれモーターを搭載した4モーターのAWDで、最高出力1,427kW(1,940ps)・最大トルク2,360Nm(240.7kgm)を発生し、最高速は412km/h、0-100km/h加速は1.81秒を誇る。ちなみに展示車のナンバープレートは、そのパワーにちなんだ「1400KW」が刻印されていた。 最大容量120kWhバッテリーを搭載し、航続距離は490km(WLTP)。ボディサイズは4,750×1,986×1,208mmでホイールベースは2,745mm、車両重量は2,300kg。生産台数は150台で、価格は200万ユーロ(約3億1,500万円)からとなっている。日本でのデリバリーは2024年第三四半期以降になるとのこと。 日本初上陸となったマシンは、地中海に面したクロアチアらしさを感じる個体だった。0-100km/h加速はマッスルカーも裸足で逃げ出すような鬼神的な数字を叩き出しながらも、ボディと内装はその数値と相反するように美しい。 筆者の勝手な印象だが、クロアチアの「アドリア海の真珠」と称される港町「ドゥブロヴニク」を彷彿とさせるカラーを纏っている。外装はアドリアブルー(勝手に令名)をまとい、内装はレンガ作りの建物を彷彿とさせるベージュの内装。“クロアチアの誇り”と言わんばかりの佇まいである。 コクピットに座ることができたが、車内にある3つのディスプレイは、ボディカラーと同じアドリアブルーに発色され、とてもエレガントにも感じた。 この個体は、関東にも台風が上陸した9月8日に日本に空輸され、それからデパートでの内覧会を経て13日〜15日まで一般公開された。一種の「デモカー」のような個体だという。 海外の試乗会ですでに約3万km走行し、展示後は「モビリティリゾートもてぎ」で、購入希望者向けの試乗会を行ったようだ。日本で既に数台のオーダーが入っているという。来年後半には、公道でも見られるかもしれない。 なお、「ネヴェーラ」の詳細は別項を立ててリポートしたい。また、本媒体のスタッフが、「もてぎ」の試乗会で、実際にに同乗することができたようだ。そちらのレポートもお待ちいただきたい。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★アイシン、EV関連事業に5,000億円を投資 ……9月14日に開催した「中長期事業戦略説明会」で、今後3年間で5,000億円を投資しEVなどへの対応を加速すると発表した。2027年に第3世代の「eアクスル」を投入するという。 ★★ジャガー、エンジン車の受注を今年末で終了 ……「F-タイプ」「XE」「XF」「XFスポーツブレイク」の生産を2024年モデルをもって終了する。「F-タイプ」は11月21日(火)、他3車種は12月19日(火)をもって受注も終了するとのこと。2025年以降はピュアEVのみを扱うブランドとなる。 ★★ルノー、商用車「トラフィック」のEVを発表 ……新型商用EV「トラフィック・バン・E-テック・エレクトリック」を本国で発表した。最高出力90kW(122ps)・最大トルク245Nm(25.9kgm)で、航続距離は297km(WLTP値)。最高速度を90km/hに抑えたロングレンジ(322km)モデルも用意するという。 ★★AESC、バッテリーのマザー工場を茨城県茨城町に竣工 ……年間6GWhの生産能力を持つ工場で、従来品に比べてエネルギー密度を1.3倍、充電速度を35%短縮した次世代バッテリーの生産を2024年3月から開始するという。 ★スズキとパナソニックが電動車を共同開発 ……スズキとパナソニック サイクルテックが、電動アシスト自転車の駆動ユニットを活用した新型電動モビリティの共同開発に合意した。スズキが企画・実験と担当し、パナソニックが試作車の製作・駆動ユニットの提供を行なうという。 ★ホンダ、「モトコンポ」が復活 ……折りたたみのユニークなスクーター「モトコンポ」の後継となる新型EVスクーター「モトコンパクト」をアメリカで発表した。価格は1,000ドル(約14万8,000円)未満だという。 ★ZF、EVバス向けのモジュラー型ドライブユニットを発表 ……最高出力380kW(517ps)で3速のギアボックスを内蔵したユニット。急坂に対応し航続距離の延伸も期待できる。ユニット自体も小型なため、フルフラットの車内設計がしやすくなる。 ★ポルシェ、「タイカン」がEVの最大高度変化の新記録を樹立 ……「タイカン4・クロスツーリスモ」が、中国にある海抜マイナス218.845mのアイディン湖から、標高5,355.134mチベット・ホントゥダバン山の登山に成功し、ギネス記録を打ち立てたという。 ★エネチェンジ、病院へのEV用充電器の導入を推進 ……医療品物流のアルフレッサと協業し、同社の持つ医療機関ネットワークにEV用充電器の設置を進めるという。 ★新電元、商用EV向け急速充電器を改良 ……最高出力50kWの「SDQCシリーズ」を13年ぶりに改良。「SDQC2F50」として11月より発売する。課金決済をしないスタンドアロンタイプで、長時間の使用が可能。 ★プラゴ、EV充電ステーション事業推進のために新たに資金調達 ……日本政策金融公庫・新宿支店/三井住友銀行/りそな銀行・池袋支店から新たに協調融資を受けた。累計の調達額は13億1,700万円となった。 ★東京ガス、相模大野のマンションにEV用充電器を大量導入 ……野村不動産管理の新築分譲マンション「プラウドタワー相模大野クロス」<神奈川県相模原市南区>に、東京ガスのEV充電サービス「イーブイレスト」の導入が決定した。物件の平置き駐車場の全207区画に設置される。 ★京都のアパートメントホテルがEV用充電器を導入 ……全16室の高級アパートメントホテル「ホテルマステイ神宮道」<京都市東山区>に、テラモーターズのEV用充電設備「テラチャージ」を3基導入した。最高出力3kWの普通充電タイプとなる。 ★神戸市で自動運転小型EVバス「ミカ」の一般試乗会を開催 …神戸市の須磨海岸で9月23日(土)〜29日(金)まで開催する。走行区間は須磨海岸内管理用通路(JR須磨駅〜願いの椰子の木)で、運賃は無料。小型EVバス「ミカ」はエストニア製の車両で定員は8名。自動運転レベル4に対応している。 ★日産、「アリア」の駆動システムがアメリカで受賞 ……電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」が、アメリカの自動車媒体ワーズ社の「10ベストエンジン&推進システム」に選出されたという。 デイリーEVヘッドライン[2023.09.19]

TAG: #THE視点 #ニューモデル #ハイパーEV
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
リマック、2000ps級EVスーパー・スポーツ「ネヴェーラ」を英国で初納入[2023.06.01]

4モーターを搭載で最高出力1,427kW(1,941ps) エンジン車にはできないEVスーパーカーの新世界 【THE 視点】リマックは5月31日、EVスーパーカー「ネヴェーラ」を英国で納車したと発表した。「ネヴェーラ」は2021年に発表された世界150台限定の超高性能EV。世界各地で納車が始まっており、今回は英国での初納車となった。 リマックは、2009年クロアチアに設立されたEVメーカー。2011年には「ネヴェーラ」の前身となるEV「コンセプトワン」を発表し、2018年春に「ジュネーブ・モーターショー」にてコンセプトカー「C_Two」が発表。「ネヴェーラ」はその市販モデルだ。ちなみに2018年にはポルシェが資本参加し、開発が加速した。 「ネヴェーラ」は、カーボンファイバー製のモノコックシャシーに4つのモーターを搭載して4輪を独立して駆動する。システム総合の最高出力は1,427kW(1,941ps)で、総合の最大トルクは240.7kgmとなる。バッテリーの最大容量は120kWhだ。 これらの数値からも読み取れるように、2022年には、公道を走るEVとして最高速度となる412km/hを記録。2023年には、1日で23件の加速性能および制動能力記録を達成した。 「ネヴェーラ」は早い話、2,000psのモンスターEVである。エンジン車でこれほどの性能を出そうと思うと、エンジン自体の大型化もそうだが、何より排ガス対策や熱対策などで、ボディが余計に大型になりがちだ。当然空力性能も悪化する。もちろんコストだって相当にかかってしまう。 2,000psを達成できたのは、EVだからと言って良いだろう。「ネヴェーラ」のボディは全体的に低いデザインとなっているが、2,000ps級のマシンでこのスタイルを実現するのは困難だと思われる。また筆者の想像だが、2,000psのエンジン車をつくるよりも開発コストは低いのではないだろうか。 EVは、スーパーカーにエンジン車にはない価値を生み出せる。リマックが「ネヴェーラ」をもってそれを証明した。いつか日本でお目にかかれる日を楽しみにしている。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、米国にバッテリー工場を建設……事業に21億ドル(約2,900億円)の追加投資も[詳細はこちら<click>] ★★メルセデス・ベンツ、中型ミニバンタイプのEV「EQT」及び商用タイプ「eシタン」を本国で発売開始……「EQT」が4万9,444.50ユーロ(約740万円)、「eシタン」が37,740ユーロ(約560万円)から[詳細はこちら<click>] ★★フィアット、小型EV「トポリーノ」を発表……2人乗りの都市型電動モビリティ[詳細はこちら<click>] ★東京都、「令和5年度集合住宅等への充電設備普及促進事業」を開始……EV充電器の購入・設置費用を助成、6月30日(金)〜令和6年3月29日(金)まで受付[詳細はこちら<click>] ★神奈川県、法人向けに「令和5年度神奈川県事業用EV導入費補助金」の受付を開始……4月27日(木)〜12月28日(木)まで受付、EVのバス・トラック・軽トラック・タクシーが対象[詳細はこちら<click>] ★オムロンとユビ電、新たなEV充電器をオムロン岡山事業所にて実証実験……EV充電用コンセントに後付け可能な充電機器、個別測定で充電サービス「ウィーチャージ」より課金 ★テラモーターズ、富山県舟橋村にEV充電器「テラ・チャージ」を導入……舟橋村役場など計2ヵ所の公共施設に ★大阪メトロ、「大阪・関西万博」の会場整備従事者向けの通勤バスにEVバスを導入……65台を順次導入、6月1日より「舞洲〜夢洲(万博会場)間 」「咲州〜夢洲(万博会場)間」にて運行 ★国際航業、「V2H」の効果測定サービス「エネがえるEV・V2H」を開始……有償版として正式にスタート、太陽光発電なども総合的に測定 ★小型EV輸入販売のベクトリクス・ジャパン、「自治体・公共week・スマートシティ推進EXPO」<東京ビッグサイト(東京都江東区)/6月28日(水)〜30日(金)>に出展……小型三輪EV「I-カーゴ」の2023年仕様を展示 ★フォーミュラE第10戦ジャカルタ、今週末に開催……現在のランキングトップはニック・キャシディ選手(エンビジョン・レーシング) デイリーEVヘッドライン[2023.06.02]

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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