見た目も走りも楽しめるのがヤマハ流
<走行音まで調律する「人機一体」への執念>
TRICERA protoが単なる走行性能の追求にとどまらないのは、サウンドデバイス「αlive AD」を搭載している点にも表れている。EVは走行音が極めて静かだが、この装置は走行音を意図的にチューニング&調律することで、操縦に没入するドライバーの高揚感を増幅させる。「音を奏でる」文化をもつヤマハだからこそ、EVの静粛性を単なる無音として放置せず、聴覚体験をドライビングプレジャーの構成要素として積極的に設計する発想が生まれた。視覚と触覚に加え聴覚まで動員して「乗る喜び」を作り上げようとする姿勢は、楽器メーカーとしての顔ももつヤマハならではだ。

デザインも独創的だ。3輪構造を強調したセンターフレームがアーチ型のシルエットを形成し、ドライバーの人間空間とメカニカルな機能空間を明確に対比させた構成が、見る者に強烈な印象を与える。3輪パッケージの構造そのものを「魅せる」新しいスタイリングの提案でもある。

現時点ではあくまで研究開発の段階であり、量産・販売に向けては法規対応も含めた課題がある。しかしEV時代に「コーナリングの楽しさ」を人間研究視点で再定義しようとするヤマハのアプローチは、新たなドライビングプレジャーの可能性を切り開く。OX99-11から30年余り。ヤマハの4輪への夢は、3輪という逆転の発想から再び動き始めた。
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