EVの本質は静かで新しい移動体
一方で、EVは低速走行時に車両接近警報装置で発する音が車外へもたらされる。「キーン」というような音だが、これは静粛性に優れるEVが走って近づいていることを歩行者などへ知らせる措置だ。音を出す理由は、歩行者がEVの接近に気づきやすくするためだが、ことに目の不自由な人たちからの要請が大きかった。見て確認することの難しい目の不自由な人たちは、道を歩くとき周囲の音に頼っている。EVの時代になっても、EVが近づくことの危険を耳で察知したいとの要望だ。
このため、部分的なモーター走行のあるHVも車両接近警報装置を搭載することになっている。一方で、車両接近警報装置の音は、エンジン音に比べ聞こえにくいのではないかと疑問の声がある。そこから、市街地など混雑した場所でEVは危ないという人もいる。しかし、それは誤認だ。
日産自動車は2010年に初代リーフを市場導入する前、米国でエンジン車のティーダとリーフを使って、目の不自由な人にそれぞれのクルマが発進し近づいてくるのをどれくらい確認できるかという試験を行っている。米国で試験が実施された理由は、リーフが米国で先に市販されたからだ。
結果、リーフの車両接近警報装置の音のほうが先に気づきやすく、近づいていることをエンジン車より先に知ることができた。エンジン車といえども、近年は低速で走行した場合かなり静かだという実態もある。EVが低速で音を発する背景には以上のような理由があり、その音量はエンジン車と比べても十分人の耳に届く水準になっている。
そうした背景があるにもかかわらず、初代リーフ発売後、数々の自動車メーカーが世界各地でリーフと異なる音色や音質の車両接近警報装置の音を出し、今日に至っている。なかには運転の楽しさを謳ってきたメーカーが、その銘柄らしい音作りにこだわったと宣伝するに至っている。
しかし、本来の目的は、健常者はもちろん目の不自由な人の不安も取り除き、安全性を高めるためだ。その音色がさまざまに変わったのでは、耳で聴きわけるのが難しくなる。どの音がEVなのか聴くだけで区別がつけにくくなるからだ。EVの安全確保の要となる装置に対する本末転倒なメーカーの主張、あるいは自己満足である。
こうした姿は視野の狭さを思わせる。自分たちの都合でしか社会を見ていない証でもある。売れればよい、儲かればよいといった自己中心的な発想だ。消費者にはそんなメーカーの姿を見わける賢さが必要だ。たとえ運転が楽しくても、姿が格好よくても、弱者を無視する企業活動には厳しく対処すべきではないだろうか。
なぜならEVは、環境対応だけでなく自動運転の実現を含めて、健常者だけでなく障害者を含め老若男女区別なく万人の個人的移動の自由を実現する可能性をもつからだ。





















































