Contents
Honda 0 シリーズの価値は自動運転レベル3にあり?
先に述べた通り、ASIMO OSはAD(自動運転)やADAS(先進運転支援システム)などのシステムを制御するECUを統合的にコントロールする。今回のCES2025においてホンダは、Honda 0シリーズの技術の中枢としてASIMO OSと並び、自動運転技術を強調して取り上げている。
ホンダは、2021年に自動運転レベル3(アイズオフ):条件付自動運転車(限定領域)に適合する先進技術を有する「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」を搭載した「LEGEND(レジェンド)」を発売し、世界で初めて自動運転レベル3の実用化に成功している。
その実用化にあたってホンダは、交通事故の抑制はもちろんのこと、「人の運転であれば回避できた」というような事故は絶対に起こしてはならないという前提のもと、あらゆる運転条件や事象を想定し、Honda SENSING Eliteを開発したそうだ。
そして、ホンダはこのアイズオフ技術を普及させていくことが、交通事故での死者をなくす道筋だと強調。Honda 0シリーズを通じて、より多くの顧客の手が届く自動運転車をグローバルで提供していくと力強く表明した。
そのうえで、Honda 0シリーズではまず高速道路での渋滞時アイズオフから自動運転技術を搭載し、OTAによる機能アップデートを通じて、運転支援・自動運転レベル3適用の範囲を拡大するとのことだ。自動運転レベル3では、運転主体が人からクルマへと変わり、映画鑑賞やリモート会議など、これまでにはできなかった「ドライバーによる移動中のセカンドタスク」が可能になるという。
その実現のために、AI学習はもちろんのこと、人やモビリティの研究で培ったホンダ独自の協調AIを活用することが明らかにされた。これにより人の運転でも難しい周囲の交通参加者との「譲り合い」といった協調行動の精度をより一層向上させるのだという。また、急な動物の飛び出しや落下物など、想定外の出来事に対しても素早く適切に対処できる、信頼性の高い運転支援を実現することが宣言されている。
次世代に向けてルネサスと高性能SoCの開発契約を締結
2026年の市場投入を見据えてお披露目されたHonda 0シリーズではあるが、このCES2025においては、さらにその先の2020年代後半に投入する次世代のHonda 0シリーズについても発表がなされた。とはいえ、具体的な車両が明かされたわけではなく、クルマのシステムを制御する役割を持つ複数のECUを、コアECUに集約したセントラルアーキテクチャー型を採用する方針が示されたのだ。
ホンダは、Honda 0シリーズの説明にあたって、「SDV」という言葉を用いている。これは、購入後も機能や性能が進化し続けるクルマ、いわゆる「ソフトウェアデファインドビークル(SDV)」のことを指したものだ。
SDVの中心となるコアECUは、AD/ADASといった運転支援やパワートレイン制御、快適装備など、車両のさまざまなシステムを一元的に管理する。そのため、コアECUにはより高性能なSoC(システム・オン・チップ)が必要となるが、これには従来に比べて高い処理能力が必要となるほか、それに伴う消費電力の高まりを抑制することが求められるのだという。
その課題解決に向け、ホンダは半導体大手のルネサス・エレクトロニクスとコアECU向け高性能SoCの開発契約を結んだことを今回のCES2025内で発表している。
これにより、Honda 0シリーズはさらなる進化を遂げる可能性が高まる。数年内に具現化されるコアECU搭載車両にも期待したいところだ。
北米では新たな充電サービスやHonda 0シリーズでユーザーが稼げるサービスも?
そのほかにも、北米において高品質な充電網を自動車メーカー8社による合弁会社「IONNA(アイオナ)」を通じて拡充することや、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の生成AI技術などを取り込んだ新充電サービスが展開予定と発表。
また、開発中の「ホーム・エナジー・マネージメント・システム」に、BMW、フォードとの合弁会社「ChargeScape」のVGI(Vehicle Grid Integration)システムを組み合わせ、北米で展開しているEV向け充電サービス「Honda Smart Charge」を一層進化させることで、ユーザーの電気代とCO2の削減に貢献する新サービスを、2026年以降に北米などで開始することもアナウンスされた。
このサービスにおいてHonda 0シリーズの車両は「仮想発電所」として機能し、家庭への電力供給だけでなく、電力系統へバッテリーから電力を供給することで電力の安定化と、収入獲得の両面が期待できるとされている。
Honda 0シリーズは、その見た目の斬新さに目が行きがちだが、真の凄さはその中身と車両がもたらす移動や生活体験なのかもしれない。