イベント
share:

桃田健史の視点:JMS関連報道で目立つ「日本が世界に対してEVで出遅れ感」に対する違和感とは


TEXT:桃田 健史 PHOTO:桃田 健史
TAG:

第1回ジャパンモビリティショーが開幕したが、テレビニュースなどでは「日本のEV出遅れ感が浮き彫りになった」といった切り口の報道を見かけることが多い。はたして、そうした見方は本当に正しいのだろうか。

東京モーターショー改め、新生「ジャパンモビリティショー」として開幕した今回のショー。

東京ビッグサイトの東館には、トヨタ、ホンダ、日産、スズキ、マツダ、三菱、スバル、日野、いすゞなど、日系メーカー大手を筆頭にメルセデス・ベンツ、BMW、そして中国のBYDなどが大きなブースを構えた。

各社が展示したコンセプトモデルのほとんどがEVであり、また既存の量産車についてもEV推しが目立った印象がある。

こうしたジャパンモビリティショーでの光景を真正面から捉えれば、「世の中は大きなEVシフト」が起こっており、「日本も近い将来、EVが当たり前の世の中になっていく」と思われるかもしれない。

だから、開幕初日を取材した、テレビのニュース番組や新聞、そして経済系のネットニュースなどでは、こうした会場の様子を”別の角度”から表現したといえるだろう。

それが、「日本のEVに対する出遅れ感」だ。

果たしてそれは本当か?

一歩先んじた海外ショーのEVシフト

確かに、グローバルのモーターショーや次世代車を発表する各種のショーにおける、近年の流れを振り返れば、今回のジャパンモビリティショーに先んじて、グローバルでのいくつかのショーでは一気にEVシフトが進んだ印象がある。

例えば、中国では2010年代初頭から国の政策としてEVシフトを打ち出し、中国全土の中規模または大規模な都市を中心とした、公共交通機関のEV化を進め、その流れを一旦軌道修正しながら、乗用車のEVシフトを国として推し進めた。そうした国の政策が、北京ショー、上海ショー、広州ショーなどを通じて国民に広く広報されてきたという経緯がある。

また、2016年に発効したCOP21(国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議)での「パリ協定」。さらに、2018年にCOP21が示した、いわゆる「1.5度努力目標」が転機となり、2050年カーボンニュートラルがグローバルで注目される中、欧州連合がいち早く、欧州グリーンディール政策を掲げ、その中で大胆なEVシフトを打ち出した。

これにより、欧州のモーターショーは様変わりしていくことになる。

先読みができない状況で、各社それぞれの主張

海外でのモーターショーにおけるEVシフト、また今回のジャパンモビリティショーでのEVシフトがどのような演出になったにせよ、グローバルでの課題は「将来の自動車のあり方が先読みできない」状況であることに変わりはない。

なぜならば、グローバルでの自動車市場の流れは、技術先行型だけではなく、国や地域での環境政策や投資政策による規制等に大きな影響を受けており、仮に各国で政権交代が起こると、自動車関連施策が大きく変わる可能性を秘めているからだ。

また、ウクライナ侵攻や、中東での戦闘など極めて深刻な事態の発生に伴う、経済活動の不確実性を日本も含めたグローバルの人々が実感しているところだ。

さらに、電動化の視点では、国や地域によって、EVシフトを支えるための社会環境には大きな差がある。

そうした中で、グローバルで経済活動を行っている日系大手自動車メーカー各社が、単なるEVシフトではなく、様々なパワートレインや燃料の活用を視野にいれた事業戦略を描くことは当然だ。

そうした中、ジャパンモビリティショーでは、日系メーカー各社が考えるEVのあり方を示したといえるだろう。

これを、海外ショーとEVシフトに向けた演出を強化した時期の差だけを切り出しての、「日本がEVシフトで出遅れている」という表現には少々無理がある。

ジャパンモビリティショーの会場内を巡り、各社関係者と意見交換しながら、そう感じた。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
BEV大国の中国で販売が失速! ここ数年でPHEVのシェアが伸びていた
中国市場でファーウェイのEVが爆発的人気! ライバルを凌ぐ激安っぷりと超豪華内装のAITO M9とは
more
ニュース
レンジローバーPHEVの使用済みバッテリーを再利用! エネルギー貯蔵システム「BESS」で真の循環型経済の実現を目指す
家を買ったらヒョンデのEVもついてくる!? ヒョンデKONAとYAMADAスマートハウスのセット販売が開始
日産は中国市場で年間販売台数100万台達成を目指す! 経営計画「The Arc」に沿って戦略的コンセプトカー4台を公開
more
コラム
テスラ・モデルYに600km走れるRWD登場も日本導入はナシの予想! 日本は「ジュニパー」の登場に期待
爆速充電と超豪華な内装を引っ提げたミニバン「MEGA」が爆誕! 驚きの中身とひしめくライバルとの比較
テスラが日本で全車30万円一律値下げ! 補助金が制限されるもお買い得度ではモデルYが圧倒!!
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
誰もが感じる「ポルシェに乗っている」という感覚! ポルシェはBEVでもやっぱりスポーツカーだった
佐川急便とASFが共同開発した軽商用EV「ASF2.0」に乗った! 走りは要改善も将来性を感じる中身
more
イベント
中国市場のニーズに合わせて開発! 日産が北京モーターショー2024で新エネルギー車のコンセプトカーを出展
レース前に特別に潜入! フォーミュラEに参戦する日産チームのテント内は驚きと発見が詰まっていた
日産がフォーミュラE「Tokyo E-Prix」開催前スペシャルイベントを開催! 六本木ヒルズアリーナに1夜限りのサーキットが出現
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択