それぞれの寸評
田中誠司
すべてにおいて扱いやすく、見ていて刺々しさもなく、内外装はそこそこのクオリティ。白いボディカラーや内装色もあいまって、これは電気自動車界の無印良品なんだなという印象を受けた。そう考えると、最初モデルSやモデルXを作ってからモデル3、モデルYに降りてきた製品展開やブランディングは、順番が逆のようで面白くもある。
曽宮岳大
今回の3台のなかで、スポーティ感は一番強い。流線形のフォルムもそうだが、アクセルの踏み込み量に対する加速度の立ち上がりが、スポーツカーを感じさせる。もちろん常にロケットのように飛び出すわけではなく、鋭い加速を示すのはアクセル踏み込み量を強めた時だけで、アクセル開度が大きめの時に、加速をより強めに演出するテスラのチューニングは、エンジン車に対する挑戦のように感じた。
乗り味は、ガツガツしたような突き上げ感は抑えられていて、マイルドと言っていいレベルだと思う。ハンドリングについては、バッテリー搭載位置が低く、低重心なのはいいが、ブレーキングでフロントタイヤに荷重を乗せたい場面で、フロントタイヤに荷重が乗る感覚はやや薄く感じた。バッテリーという重量物がフロントサスペンションを上からではなく、後ろ方向から押している感覚、というと少し言い過ぎかもしれないが、そんな印象を受けた。この点ではむしろ重心位置が高いエンジン車の方が、荷重がタイヤに素直に掛かっていく様子を意識しやすく、ドライビングプレジャーにも繋がっていると思う。今後のEVではこの辺りの乗り味がどう変化していくのか楽しみだ。
烏山大輔
モデルYは動き出し時にかなり重さを感じるが、ひとたびアクセルを踏み込めば0-100km/h加速3.7秒の実力の通り、スーパーカー並の速さを発揮する。乗り心地も足回りが固く、ステアリングもクイックなのでまさにスポーツカー的だ。個人的には好きな部類の動きなので、問題なく受け入れられるレベルだ。
ライバルはもともとICEを作っていたが、テスラはBEV専業メーカーらしく0からBEVだけを設計しているので、ICE作りの制約や先入観がない。実用的なフランクの大きさもその一例だ。
ドライバーの正面にメーターはなく、速度はセンターメーターの右上に表示される。物理スイッチはステアリングスポークの2個とパワーウインドウとハザードのみ。他のスイッチはないので、ミラーの角度調整はおろかエアコンの吹き出し方向やドラミラーの角度調整さえセンターディスプレイで行わなければならない。
それが面倒だという意見もあるが、我々は生活の中でスイッチやボタンが多いものから、ほとんどの操作をディスプレイで行うものに切り替わっていないだろうか、それは携帯電話だ。だからテスラはスマホユーザー、特に生まれながらスマホが当たり前にあったデジタルネイティブ世代にうけるのだろう。
テスラ モデルY