コラム
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知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第10回:自由自在な電気自動車の駆動方式


TEXT:御堀 直嗣
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FWDからRWDへ変化したボルボ

スウェーデンのボルボは、それまでFWDと4WDで販売してきた「XC40」と「C40」のEVを、今春からRWDで日本市場へ導入すると発表した。エンジン車でこのような変更をするのは容易ではない。

RWDへの変更理由としてボルボは、FWDでは加速中にトルクステアが生じる可能性があり、RWDとすることによって、より安定的で滑らかな加速ができるようになるとする。トルクステアとは、加速の際に左右の前輪に伝えられるトルクに差が生じ、ハンドルをとられる症状をいう。

タイヤ性能においても、グリップ力には限度があり、前輪は操舵に、後輪は駆動に割り振ることで、より安定的な走りができるという点は、かねてよりいわれてきたことだ。

FWDのエンジン車をひとつの特徴としてきたホンダも、EV専用車の「ホンダe」ではRWDを選択した。それによって前輪の操舵角度を大きくとれるようになり、最小回転半径は4.3mと小回りがきくようになった。ホンダの軽エンジン車である「N-ONE」が回転半径4.5~4.8mなので、3ナンバー車の「ホンダe」でも軽自動車より機敏に走れることになる。

そのほか、EVは床下一面にバッテリーを搭載し、数百キログラムに及ぶ重量の部品が前後タイヤの間に収まるので、車両の前後重量配分が均等になりやすい。このことから、どの駆動方式であっても、前後のタイヤへの負担はより均等化され、操縦特性がより素直になる潜在能力を持つ。

EVが生み出す新たな可能性

上級車種は別としてエンジン車はFWDが主流であるため、エンジン車と共通のプラットフォームを持つコンバートEVはFWDとならざるをえなくても、EV専用プラットフォームで設計される車種が増えるにしたがい、RWDを基本とするEVが増えていくかもしれない。それによって、エンジンルームを必要としないEVでは、車体前部を荷室として活用することもできるようになり、利便性や利用価値を新しくしていける可能性がある。

過去から積み上げられてきた今日のクルマの形にとらわれる必要もなくなってゆけば、今とまったく違う姿のEVが、人の移動を支えていくことになるかもしれない。それによって、より合理的で効率よく、方向転換などの自在性も高まったEVが道を走るようになると、これまで考えられなかった交通の仕方が生まれるはずだ。また、排出ガスがないことで屋内を走れることも、新たな移動の発想のひとつとなるだろう。

EVは、単に二酸化炭素の排出がないという環境性能だけでなく、駆動方式の選択の自由や、それにともなう車体空間の使い方、方向転換などへの自在性も加わることで、いっそう便利な乗り物になっていく期待が大きい。


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