次期ケータハムのスポーツカーはヤマハとの共作 愛知県名古屋市に本社を構えるVTホールディングスと、静岡県磐田市に本社を構えるヤマハ発動機は、VTホールディングス傘下の英国スポーツカーメーカーCaterham EVo Limited(以下、ケータハム)が量産・市販化に向けて開発を進めている新型EVスポーツクーペ・プロジェクト(以下、プロジェクトV)に、ヤマハ発動機がパートナーとして参画し、協業を進めていくことを2024年10月2日に発表した。 ケータハムは、ライトウェイトスポーツカーとして人気が高かった「ロータス・セブン」の生産をロータス自身が止めるのに際し、そのセブンの生産権や生産に必要な治具などを買い取り、ケーターハム版のセブンを誕生させたことで有名なイギリスのスポーツカーメーカーだ。1970年代から基本的な構造は変えず、生産と進化を続けてきたものの、内燃機関を搭載することが将来的には難しくなることを見越して、新たなEVの開発が計画された。 そうして「プロジェクトV」と名づけられたEVの開発計画により誕生したコンセプトカーが、2023年7月の英国グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで世界初公開された。日本でも2024年1月の東京オートサロンで展示が行われ、このイタルデザインの手による流麗なEVスポーツクーペの姿をご記憶の方も多いのではないだろうか。 「プロジェクトV」は、ライトウェイト、シンプル、ファン・トゥ・ドライブという、ケータハムのドライビングプレジャーを最重視するDNAを受け継ぐEVスポーツクーペだとVTホールディングスは述べている。現在、量産・市販化に向けてケータハムは東京R&Dとプロトタイプ車両の開発・製作を進めており、プロトタイプ車両の完成目標は2025年央頃と発表されている。 東京R&Dは、自動車の試作・設計、材料実験などを業務とする一方、2000年代には少量生産モデルのライトウェイトスポーツカー「VEMAC(ヴィーマック)」を誕生させたり、1980年代前半から電気自動車の自主研究に乗り出すなど、ケータハムが進める「プロジェクトV」のパートナーとしてこれ以上望み得ない強力なパートナー企業である。 一方、今回発表された協業パートナーのヤマハ発動機が果たす役割とは何か。それはEVのパワートレイン主要部に当たる「eアクスル」を独自に開発し、その試作品をケータハムと東京R&Dが開発・生産を進めるプロトタイプ車両向けに供給することだ。さらに、車両の運動制御においてもヤマハ発動機の技術・知見を提供し、”Caterham Powered by Yamaha Motor” を実現すると意気込む。 2023年7月の「プロジェクトV」計画発表時、パワートレインはリヤアクスルに搭載する200kW(272馬力)のシングルモーターと、55kWhリチウムイオン・バッテリーの組み合わせとされ、0-100km/h加速は4.5秒未満、推定最高速度は230km/hを目標に据えていることが明かされている。しかし、ヤマハ発動機と協業することにより、この目標値に変化が生じるのかは今回の発表で言及されていない。 2021年に日本のVTホールディングス傘下となり、変革を推し進めるケータハム。そこに日本が誇るモビリティ関連企業の東京R&Dとヤマハ発動機がジョイントすることで、どのようなシナジーが生み出されるのか、「プロジェクトV」の将来が楽しみでならない。