#行政
充電インフラ整備促進に向けた指針(仮称)の案(出展=経済産業省)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
EV用充電器が2030年に30万口・平均出力80kWへ……経産省が新指針でインフラを強化[2023.09.01]

いよいよ本腰を入れるEV用充電インフラの大幅拡充 充電規格についてもガイドラインを制定し利便性を担保 【THE 視点】経済産業省は8月28日、充電インフラ整備促進に向けた指針(仮称)の案について公表した。 経産省はこれまで、2030年までに「公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置する」との目標を掲げ、約3万基の整備を進めてきた。 今回の発表では、充電器設置目標を倍増(2030年までに15万口→30万口)させ、充電器全体の総数・総出力数を現在の10倍(約40万kW→約400万kW)にするという。電動化社会構築に向け、国主導で充電インフラ整備を加速させる構えだ。 急速充電は、高速道路上の機器を高出力化する(最高出力90kW以上、150kWも設置)。高速以外でも50kW以上を目安とし、平均出力を倍増(40kW→80kW)させることで充電時間を短縮し、利便性の高いインフラを整備する。 同時に、限られた補助金で効果的に設置を進めるため、費用対効果の高い案件を優先(入札を実施)して費用低減を促進し、充電事業の自立化を目指す。課金方式については、充電した電力量(kWh)に応じた従量課金を2025年度に実現するとしている。 商用EVについては、エネルギー・マネジメントを中心的に進めてコストを低減し、ユーザー・事業者双方にとって有利な料金制度を実現する。エネマネにより商用車の充電に伴う負荷を平準化・分散化させる。 さらに超急速充電(350kW等)やさらなる高電圧化への対応は今後の選択肢の一つとし、普通充電器についても従来の6kWから10kWに見直す。 急速充電規格については、国内は「CHAdeMO」がほとんどを占めているが、海外では「CCS2」/(欧州)「NACS」(米国)/「GB/T」(中国)が過半数を占めている。この事情を鑑みて、CHAdeMO協議会を中心に充電事業者やOEMなどの意見を取り入れたガイドラインの作成を行なう。 充電の通信規格についても、オープンプロトコルの「OCPP」や「ECHONET」を用いることを求めていく。車両と充電器の組み合わせで生じる不具合の解決などについては、2023年度中のマッチング・テストセンターを設置し準備を進める。 これらは、パブリックコメントを経て、10月上旬を目処に指針を策定する。ちなみに充電器の数の表現だが、1基で複数口の充電口を持つ機器が増えたことから、「基」から「口数」に変更された。 EVの普及において、これまで「卵が先か鶏が先か」、つまり車両の普及とインフラの整備のどちらが先をいくべきかの議論がされてきたが、今回の経済産業省の発表が実現するとすれば、「インフラの問題でEVが普及しない」とは言えなくなる。今後7年間で10倍と言うことは、毎年約4万基ずつ増えることになる。これまでの設置数以上の数が毎年増加する計算だ。 充電器の高出力化で充電渋滞の緩和なども見込まれる。高速道路外への一時退出を許可する充電の検討や、マッチング・テストセンターの設置の準備など、EVユーザーの利便性についても検討されていることが、今回の発表により明らかとなった。国はEVの普及に向けて本腰を入れたとみて間違いない。 この発表が絵に描いた餅とならぬよう、国主導でインフラの拡充を引き続き推進・実現してもらいたい。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★日産、「ポータブルバッテリー from LEAF」を発売 ……9月1日(金)より日産の正規ディーラーにて販売開始。「リーフ」のバッテリーを再利用し、JVCケンウッド/フォーアールエネジーと共同開発。最大容量は633Whで、AC出力は最大900W。一般的な100VのコンセントのほかUSB-A/-Cのポートも搭載。充電は家庭の電源はもちろんシガーソケットからも行なえる。 ★★ダスキン、営業車両に軽商用EVを導入 ……軽自動車規格の商用EV「ASF2.0」2台を導入し9月1日(金)より実証実験を行なう。CO2の排出量削減効果とランニングコストを検証する。ASFはコスモ石油が資本業務提携するEVのスタートアップ企業。[関連記事はこちら<click>] ★★オペル、3台のEVをワールドプレミアへ ……ドイツ・ミュンヘンで開催するモーターショー「IAAモビリティ2023」にて「ビジョナリー・オペル・エクスペリメンタル・コンセプトカー」「コルサ・エレクトリック」「アストラ・スポーツツアラー・エレクトリック」を出展する。 ★経産省・産総研(NEDO)、商用EVを用いた実証「スマモビプロジェクト」を開始 ……国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、トラック・バス・タクシー事業者から、商用EVの車両・走行データの受け入れを開始した。運行管理とエネルギーマネジメントシステムの検討とシミュレーション技術の開発に活用する。バスは大阪市高速電気軌道など、トラックはCJPT、タクシーはGOが参画。 ★ユアスタンド、「愛・地球白公園(モリコロパーク)」の駐車場内にEV用充電器を設置 ……9月1日(金)より、「モリコロパーク」<愛知県長久手市>においてEV用充電器を稼働。最高出力6kWの機器を4台設置し、会員登録なしのQRコード決済にて利用可能。 ★ユビ電、三井住友オートサービスと富士電機より資金調達 ……「シリーズB 3rd」ラウンドにて、2社より合計2億円の資金を調達。累計調達額は14億6,800万円となり、電力環境と充電インフラの拡充を目指す。 ★自動運転EVのチューリング、5.2億円を新たに調達 ……山本一成CEO・田中大介COO・エンジェル投資家5名の計7名より資金調達し、累計額は15.2億円に。2025年に販売予定(100台限定)の自社開発EVの開発資金に充てる。 ★ヒョンデ、小型SUVの新型EV「コナ」を代官山T-SITE<東京都渋谷区>に展示 ……年内の国内発売を前に9月28日(木)まで先行展示。「ヒョンデ・カスタマー・エクスペリエンス・センター横浜(CXC横浜)」でも展示を行なう。 デイリーEVヘッドライン[2023.09.01]

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「モビリティ水素官民協議会の中間とりまとめ」資料より抜粋(出典=経済産業省)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
「FCEV普及の見通しが不明で投資計画が立たない」……経産省、官民協議会の中間報告を公表[2023.07.13]

問題点の洗い出しと将来に向けての現実的な議論を確認 中距離・高稼働のFCEVについては35MPaの低圧車載タンクが有用 【THE 視点】経済産業省は7月11日、「モビリティ水素官民協議会の中間とりまとめ」を公表した。 モビリティにおける水素の普及に向けて、2022年9月より水素供給側・自動車メーカー側・物流事業者側・荷主側・国・地方自治体が一体となって将来像を共有し、必要な政策を議論する検討会を行っている。 2023年6月に水素基本戦略の改定があったことを踏まえ、現状の打破に向けて各団体が一定の前提の元に将来の見通しと普及に向けた課題を共有したのが、この度の中間とりまとめと言える。 燃料電池車(FCEV)は、電力を作るための水素の充てん時間が短く航続距離が⻑いといった強みを有している。それを踏まえて走行距離と稼働時間が長い商用車の分野では、FCEVがバッテリー式のEVよりも有用であることは、世界的な常識になりつつあり、欧米でも商用車へのFCEVの導入が加速しつつある。 しかし、自動車メーカーと物流・荷主企業・水素供給企業は、各々がFCEVの需要の見通し、FCEVと水素ステーションの普及台数見通しが不明というのが現状で、投資計画が立てられないといった三すくみの状態となっている。具体例を挙げれば、⾞両や⽔素の価格が高額な点や⽔素ステーションの整備が進まないなどの課題が挙げられる。 今後は野⼼的な導⼊⽬標を策定するとともに、現在は未策定のトラック(8トン超)の転換⽬標や、充填インフラの導⼊プランの設定を検討していくという。 また「⽔素基本戦略」の改定も踏まえて各ステークホルダーへのさらなるヒアリングを行ない、⾞両導⼊価格やランニングコストの低減、商⽤⾞に対応する⽔素ステーションの整備や設備のマルチ化と運営費低減、高い需要が⾒込まれる地域の選定等を⾏っていくという。 FCEVを日常利用する筆者は、電動車としてはエネルギー源(水素)の充填時間が短いという利点は十分に理解している。そして問題だと感じてきた商用車用ステーションの整備不足が、今回の発表で明るみに出たと捉えている。 また、FCEVに搭載する水素用タンクは、これまで70Mpaの高圧がひとつの基準のように扱われてきたが、中近距離を⾼稼働⾛⾏するモビリティについては、35MPaの低圧タンクの導入が有用との報告もあり、方向転換ともいえる内容を発表している。 高圧水素の充填は、それだけ電力のコストもかかっている。低圧にすればそれを低減できることになり、水素価格の抑制に繋げられるだろう。このあたりの議論も行われるようになったのは嬉しい。今回の発表はもちろんこれだけではないのだが、普及に向けた本気度が感じとれる中間とりまとめだった。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ケータハム、クーペの新型EVコンセプトカーボン「プロジェクトV」を発表……2025年後半から2026年前半に発売予定[詳細はこちら<click>] ★★横浜ゴム、EV用サマータイヤ「アドバン・スポーツEV」を発売……2023年秋頃より欧州で発売、16サイズを予定[詳細はこちら<click>] ★★アルピーヌ、2023年に新型「A310」を含む新型EVを7車種発表……独自のEV用プラットフォームを開発へ ★パワーエックス、北海道室蘭市と連携協定を締結……室蘭港にて電気運搬船および蓄電池を活用 ★ホンダ、経産省の実証事業「令和5年度 蓄電池等分散型エネルギーリソース次世代技術構築実証事業」に参画……東京電力など計13社による事業、潜在的なエネルギーソースであるEVなどを活用 ★メルセデス・ベンツUSA、2023年4月〜6月期のEVの売り上げが増進……「EQ」シリーズ全体で1万1,927台を販売、前年同時期比608%増 ★永輝商事、フランス「IES Synergy」のEV用充電器を輸入販売……最高出力6kWタイプの小型普通充電器から180kWの大型急速充電器まで計3機種を用意 ★エネチェンジ、スーツ専門店のアオキにEV用充電器を設置……神奈川県内の2店舗(AOKI横浜三ツ境店<横浜市瀬谷区>/津久井城山店<相模原市緑区>)に最高出力6kWのタイプを1基ずつ ★アウディ、鹿児島県屋久島町にて「e-tron」のレンタカーサービスを開始……屋久島町と連携し脱炭素化を支援、役場の公用車に「e-tron」を1台貸与など[関連記事はこちら<click>] ★日本郵船、中国にて大型EVトラックを使用した実証実験を開始……日系現地法人のパナソニック四維、三井住友海上火災中国と共同、自動車物流事業に導入 ★リョービ、6000トンのダイカストマシン「ギガキャスト」を導入……自動車用のバッテリーケースを生産可能 ★日揮HD、オーストラリアにて水素製造プラントを受注……住友商事の現地法人から受注、年産250トンの水素を製造 ★BMW、芸術家のマルク・ブランデンブルグ氏によるアート絵を描いた「iX1」を発表……ドイツのシュテーデル博物館との長期的なパートナーシップの一環で デイリーEVヘッドライン[2023.07.13]

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