EVはなぜリセールが悪い? 愛車を数年間使って売却するとき、電気自動車は売却額が安くなるといわれる。果たして本当なのか。 個々の売却額は、車両の状態によって異なるから一概にいえないが、残価設定ローンの残価は指標になる。 残価設定ローンとは、契約時に数年後の残価を設定して、残価以外の金額を分割返済するローンだ。残価は払っていないから、返済期間を満了しても車両は自分の所有にならないが、月々の返済額は安くなる。そして返済期間を満了したら、車両を返却することも可能だ。 そして同程度の価格の車種を同じ期間使って返却しても、残価が高ければ月々の返済額は安くなり、残価が低いと返済額は高くなる。そして残価は、リセールバリューの高い車種は高額になり、低い車種は安くなる。 そこで電気自動車と、価格の近いガソリンエンジン車で、残価設定ローンの残価を比べてみる。軽自動車サイズの電気自動車、日産サクラ(X:259万9300円)の場合、5年後の残価は85万7000円だ。新車価格に占める残価の割合は33%になる。 日産ルークス ハイウェイスター (Gターボ アーバンクロム プロパイロットエディション 4WD:239万9100円)は、5年後の残価が105万5500円だから、新車価格に占める残価の割合は44%だ。サクラの33%に比べて高い。 そのために、サクラの新車価格はルークスよりも約20万円高いのに、5年後の残価は、逆に約20万円安くなってしまう。サクラは電気自動車のベストセラーで、2024年度(2024年4月から2025年3月)に国内で新車として売られた電気自動車の36%(3台に1台以上)を占めた。サクラはここまで人気が高いのに、リセールバリューが心配され、5年後の残価の割合はルークスよりも11%低い33%に留まった。 これはつまり、自動車業界に「中古の電気自動車を扱うと損をする」という認識が根強く残り、残価率を高められないことを示している。 このままでは電気自動車を取り巻く状況は変わらない。少なくともサクラのような人気車は、認定中古車にも力を入れて中古車価格の下落を防ぎ、残価設定ローンの残価率を高めていかねばならない。 リセールバリューを向上させないと、ユーザーも安心して電気自動車を購入できず、新車販売台数を増やすことも難しい。