理由はリチウムイオン電池の性能低下にある 「電気自動車はリセールバリュー(数年後に売却するときの価値)が低い」といわれる。リセールバリューの判断は難しいが、残価設定ローンの残価(残存価値)が目安になる。 たとえば電気自動車の日産リーフX(新車価格は408万1000円)では、残価設定ローンの4年後の残価は約110万円だ。残価率(新車価格に占める残価の割合)に置き換えると27%になる。 一方、ミニバンの日産セレナe-POWERハイウェイスターV(新車価格は373万5600円)は、4年後の残価が約180万円だ。新車価格はリーフXがセレナe-POWERハイウェイスターVよりも約35万円高いのに、4年後の残価は、逆に70万円も安くなってしまう。セレナe-POWERハイウェイスターVの4年後の残価率(新車価格に占める残価の割合)は48%だから、リーフXの27%を大幅に上まわる。 それなら電気自動車のリーフに交付される補助金まで含めて計算したらどうなるか。2025年度にリーフXを購入した場合、国から交付される補助金額は89万円だ。新車価格の408万1000円から、この補助金額を差し引くと、実質価格は319万1000円になる。4年後の残価が約110万円であれば、実質価格から割り出した残価率は34%だ。やはり、補助金を引いた実質価格をベースにしても、セレナe-POWERハイウェイスターVの48%よりも低くなってしまう。 リーフに限らず、電気自動車の残価率は全般的に低い。その理由は、駆動用リチウムイオン電池の性能低下にある。充放電を繰り返しながら走行距離が伸びるに連れて、1回の充電で走れる距離が短くなるわけだ。 とくに2010年に発売された初代(先代)リーフは、リチウムイオン電池の総電力量が24kWhと小さかった。性能劣化の対策も行き届いていなかったので、「中古のリーフを買ったら、1回の充電で100kmも走れなかった」という話が聞かれた。 このような事情から「電気自動車の中古車は、走行できる距離が短くて使えない」という話が広がり、中古車価格も下がった。売却額や残価設定ローンの残価も低く、売りにくいクルマとされてしまった。 しかし直近では、電気自動車の開発者は「以前に比べてリチウムイオン電池が劣化しにくく、急速充電器の連続使用にも耐えられるようになった」という。今後は電気自動車のリセールバリューも、少しずつ高まるだろう。