#カーボンニュートラル
TEXT:TET編集部
ただEVを作って販売するだけでは真のカーボンニュートラルは実現しない! トヨタが取り組む電池3R活動の意義

カーボンニュートラル実現意向けたトヨタの活動 カーボンニュートラルの実現を目指したクルマづくりに取り組むトヨタは、これにあわせて「リデュース・リユース・リサイクル」の3R活動や、廃棄物を最小限に抑えるよう設計に織り込む「サーキュラーエコノミー(資源循環型の経済システム)」にも取り組んでいる。 なかでも電動車専用バッテリーについては、省資源でできる電池の開発や長寿命電池を開発し、長期間安心してクルマに乗ってもらえることを目指している。その後、リビルト・リユースとして、最後にCO2排出量の少ない方法でリサイクルを行うといった「電池3R(①Reduce ②Rebuilt・Reuse ③Recycle)」の考えのもと、限りある資源を大切に使う取り組みに着手している。 その実行計画として「第7次トヨタ環境取組プラン」を策定。この計画のなかでは、2025年を目標に、“電動車の普及を見据え、安全で効率的な電池3Rの仕組みの構築”を掲げており、「グローバルで最大限の電池回収・無害化」「日本・米国・欧州・中国・アジアの5地域で電池3Rの運用を開始」というふたつの取り組みを具体的に進めている。 これに伴い北米トヨタは、Redwood Materialsとの協業を開始し、ハイブリッド車とバッテリーEVの使用済み電池をリサイクルする取り組みを始めた。今後、さらに「電池3R(①Reduce ②Rebuilt・Reuse ③Recycle)」を各国・地域の状況に合わせながら、電動車の普及を支える社会基盤の整備に貢献するという。 トヨタの電池3Rに対する主な取り組みは以下の通り。 1)リデュース 電池を革新 リチウムイオン電池のエネルギー密度の向上やバイポーラ構造の電池のBEVへの採用、良品廉価な普及版電池やさらなるパフォーマンス性を追求した電池の開発など、多様な選択肢をお届けできるようラインアップの拡充を進める。 BEVのバッテリー関連性能の改善 bZ4Xでは、冷間時のバッテリー暖機性能向上などによる低外気温下における充電時間の短縮や、消費電力の抑制と空調制御の最適化による実航続距離の延伸など、絶え間なく電動車の実用性の向上を図っている。 2)リビルト・リユース 電動車用バッテリーで大容量スイープ蓄電システムを構築 JERAとともにリユースした電動車(HEV、PHEV、BEV、FCEV)の駆動用バッテリーを活用し、大容量スイープ蓄電システムを構築する取り組みにも着手。性能および容量の差が大きい使用済みの車載電池のリユースを可能としている。 定置用蓄電池システムの開発・実証 東電ホールディングスの「定置用蓄電池の運用技術・安全基準」とトヨタの「電動車用蓄電池のシステム技術」を融合して定置用蓄電池システム(出力 1MW、容量 3MWh)を開発。このシステムを、豊田通商とユーラスエナジーホールディングスが、ユーラス田代平ウインドファームへ導入し、4社が連携した実証試験をすでに開始している。 3)リビルト・リユース・リサイクル ハイブリッドバッテリーの取り組み トヨタは、ハイブリッド車から取り外した使用済みのニッケル水素バッテリーを検査、再組立て(リビルト)し、2013年より定置用の畜電池として、また2014年からは車両用の補給電池として再利用する取り組みを開始。エコな再生エネルギーとして活用している。 海外での取り組み 北米ではRedwood Materials社と協業することで電池回収・リサイクルに取り組む。両社のHEVとBEVの使用済み電池リサイクル協業を拡大するとともに、Redwood社のリサイクル網から正極活物質(CAM)と負極銅箔を調達し、回収した希少金属をリサイクル、電池サプライチェーンに還元する。これにより、北米内の資材循環を実現している。 BEVの分野で海外メーカーに遅れをとっていると揶揄される日本メーカーであるが、バッテリーのリサイクルやリユースなども含めた活動なしには、本当の意味でのカーボンニュートラルは実現しない。その意味でも、トヨタの電池3R活動の意義は大きい。

TAG: #3R #TOYOTA #カーボンニュートラル
TEXT:TET 編集部
フォードがドイツ・ケルンにEV専用工場を開設……2026年末までに年産200万台が目標

歴史ある工場が最先端のEV生産施設に転換 歴史ある工場を20億ドルを投じて改造した「フォード・ケルン電気自動車センター」が、正式にオープンした。1930年にケルン市ニーエルに設立され、フォード・モデルA、タウナス、カプリ、グラナダ、フィエスタなど1,800万台以上を生産してきたケルン工場が母体。 新EVセンターはフォードにとって世界初のカーボンニュートラルな車両組立工場となる予定で、新しいプロセス、機械、技術の導入により、工場内のエネルギー使用量を削減し、カーボンニュートラルを実現。2023年4月に発表された「Road to Better」の重要なマイルストーンとなる。 「Road to Better」とは、すべての人が自由に移動する夢を追求できるような、より持続可能で包括的かつ公平な交通の未来を築くことを目指した、フォードの取り組みを示す。カーボンニュートラルを2035年までに施設、物流、直接のサプライヤーなど、欧州のフットプリント全体で達成、2050年までに車両の運行、生産、サプライチェーンにおいても実現することを掲げている。 年間25万台のEV生産能力を持つ新EVセンターは、125ヘクタールの敷地に、最新の生産ライン、バッテリー組み立て、最先端の自動化された組み立て設備が導入され、欧州市場向けに新世代のEVを生産。2026年末までに年間200万台のEVを販売するというフォードのグローバル計画をサポートする。ドイツの熟練した製造業の雇用と、欧州における自動車生産の将来を確保する目的も持っている。 施設の運営に必要なすべての電気と天然ガスは、100%認証された再生可能な電気とバイオメタンを用いる。施設と工程を暖めるために必要な熱は、地域のエネルギー供給会社が運営する外部の発電所とゴミ焼却場で生成され、専用の蒸気ネットワークを通じてフォードに供給される。2026年にはこの熱供給のための営業排出量を約60%削減し、2035年までにこの排出量を完全にゼロにする予定という。 フォード・ケルンのEVセンターが完全に稼働すると、カーボンニュートラルとして独立した認証を受けることになる。この認証は定期的に監査され、残存する排出物については高品質のカーボンオフセットを購入することで調整される。

TAG: #カーボンニュートラル #フォード #工場
TEXT:陶木 友治
「EVシフトが急速に進み始めた裏側にあるもの」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第1回

電気自動車の登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。「伝説の自動車アナリスト」として知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつける連載企画の第1回です。 Q.ここ2~3年で、EVに対する関心が急激に高まり、普及に向けた取り組みも急速に進んだ印象があります。何か理由があるのでしょうか? 一言で説明することは難しいですね。順を追ってひも解いていきましょう。 ポイントとなるキーワードをいくつか挙げるとすると、一つ目は「カーボンニュートラル」になります。昨今、地球温暖化を抑制するために世界各国がCO₂削減に向けた取り組みを進めていますよね。その対策のひとつとして、CO₂を排出するガソリン車からCO₂を排出しないEVへのシフトを図る動きが本格化し始めたのが理由です──というのが一般的な回答になりますが、実際のところは、気候変動対策をめぐる世界的な潮流を利用して、それぞれの国、なかでも欧州が自分たちの強みを生かしたルールメイキングを図り、自らが有利になる競争を仕掛けてきているというのが実情です。 EVシフトは、エネルギー問題と密接に関係しています。地球温暖化防止策としてCO₂排出量を大幅に減少させる可能性が高いEVは、将来の自動車の姿として重要な役割を担うとかねてより期待されてきましたが、動力となる電力を化石燃料で発電していてはCO₂を削減したことになりません。 そのためEVには再生可能エネルギー経由の電力を使用することが望ましく、その分野で強みを持っていたのが欧州です。だから彼らには、「カーボンニュートラル」の取り組みを機にEVシフトを加速させ、他国に先行したいという思惑があったのです。 カーボンニュートラルは「地球のため」「環境のため」という本来の崇高かつ純粋な目標がスタートにあったとしても、どちらかと言うと欧州のビジネス利益を拡大するための方策、具体的には「自国の経済安全保障の構築・強化」という意味合いが昨今は強まっている政策なのです。これが二つ目のキーワードです。 三つ目は「新型コロナウイルス感染症の流行」です。コロナ禍によって、世界は戦後最悪の経済危機に直面しました。対面によるコミュニケーションの制限や移動の停滞で生産活動や物流がストップするなど、あらゆる業界に影響を与えています。 自動車分野ももれなく影響を受け、多くのメーカーが減産を余儀なくされたことは記憶に新しいところです。とはいえコロナはプラスの影響ももたらしています。例えば多くの会議がオンラインで開催されるなど、コロナの感染拡大が進化圧となって様々な分野のデジタル化が促進されることになりました。 社会のデジタル基盤やユーザーのデジタル嗜好の強まりが、デジタルと相性が良いEVシフトを強めている背景があります。 もともと自動車業界では、100年に一度とも言われる大変革期を象徴して「CASE」という言葉が使われていました。CASEは、Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の略で、従来は保有から利用への転換である「MX(モビリティトランスフォーメーション)」を実現する技術革新の意味合いから注目されてきました。 ところが昨今の議論を見ていると、「GX(グリーントランスフォーメーション)」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉とともにCASEが語られるようになってきています。 どういうことかと言うと、EVシフトは「MX」を実現するためのものというよりも、カーボンニュートラルを達成する「GX」や「DX」を実現するためのものとしての文脈で語られる風潮が強まっています。その変化を促したのが、デジタル化への進化圧となったコロナです。 Q.まさかコロナがEVシフトに影響を与えているとは思いませんでした。 CO₂もウイルスも、どちらも人間の目には見えません。カーボンニュートラルは、目に見えないCO₂削減の取り組みをマネーに変える欧州発の新しい経済ルールです。ウイルスやCO₂のような微小なものが企業の行動指針に影響を及ぼすようになったのがここ2~3年に起こった出来事なのですが、そのきっかけとなったのは、アメリカ・トランプ前政権の崩壊です。 トランプ前政権は欧州のルールメイキングに抗い、その流れに歯止めをかけようとしていました。トランプ前政権時、アメリカが「パリ協定」から脱退したことを覚えている人も多いと思いますが、あれもその動きの一つです。 端的に言ってしまえば、カーボンニュートラルに向けた行程の策定をめぐって、各国間の争いが激化しており、トランプ前政権は欧州のルールメイキングに「待った」をかけようとしていたのです。トランプ政権が巨大なダムとなってカーボンニュートラルへの流れをせき止めようとしていたわけです。 ところがトランプ大統領は再選を果たせず、2020年にバイデン政権が誕生しました。バイデン政権は方針転換し、EVシフトに舵を切って欧州と同じようにルールメイキングで主導権を握ることを狙い始めました。 「トランプ政権」という名のダムが決壊した結果、自動車業界においてEVシフトが激流のように進むようになったのです。EVシフトが加速した背景には、こうした政治的・経済的な動きが潜んでいるのです。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

TAG: #EV経済学 #カーボンニュートラル #中西孝樹

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