#名車
TEXT:渡辺陽一郎
EVってこれからの時代の乗りものなのにHonda eはたった1代で消滅! Honda eを作った意味ってドコにある?

Honda eってなんのために販売された? 2025年上半期(1〜6月)に国内で売られた乗用車のうち、エンジンを搭載しない電気自動車の販売比率はわずか1.4%だった。日本で電気自動車を売りにくい理由はいくつか挙げられるが、もっとも有力な事情は車種が少ないことだ。小型/普通車の市場占有率が50%に達するトヨタでも、トヨタブランドの電気自動車はbZ4Xのみになる。このように選択肢が乏しいと、電気自動車がほしくても、ニーズに合った車種を見つけられない。売れなくて当然だ。 そしてホンダは、2020年に電気自動車のHonda eを発売したのに2024年に終了した。電気自動車はこれから普及させるべき分野だから、改良やフルモデルチェンジを積極的に行うべきだが、車種を廃止してしまった。 この理由をホンダに尋ねると以下のように返答された。 「Honda eは、ホンダにとって実質的に最初の電気自動車だから、先進技術を満載した。インパネには5つの液晶スクリーンが並び、通常はミラーで得られる後方の情報も、サイド/センターカメラシステムに表示される。その代わり価格も高かった(発売時点の価格は451〜495万円)。今後はN-ONE e:などにより、ホンダの電気自動車も普及段階に入るため、Honda eは役割を終えて販売も終了した」 Honda eはたしかに装備を充実させていた。前述の内容に加えて、車内Wi-Fiやスカイルーフなども全グレードに標準装着した。 その一方で駆動用リチウムイオン電池の総電力量は35.5kWhに留まり、1回の充電で走れる距離も、WLTCモードで259〜283kmであった。価格が高い割に、1回の充電で走行できる距離は短い。つまりHonda eは「ホンダにはこのような先進的で楽しい電気自動車も開発できます!」とアピールするためのクルマだったといえる。 そのために一定の期間を経過すると「役割を終えて販売も終了した」わけだが、ここにホンダの欠点がある。Honda eを気に入って買ったユーザーはどうなるのか。改良版を購入して今後も乗り続けたいと思っても、それはできない。Honda eをせっかく開発したのだから、装備をシンプルに抑えて価格を下げたグレードを加えるべきだったが、それもせずに終了させた。 ホンダにはこのパターンが多い。ハイブリッド車のインサイトも、ホンダでは「初代は軽量な2人乗りのクーペでハイブリッドの低燃費を訴求して、2代目はGの価格を189万円に抑えて普及を図った。3代目はハイブリッドの上質な走りを味わえる上級車種とした」という。各世代でインサイトの役割が異なるわけだが、フルモデルチェンジのたびにクルマ作りと価格が変わると、ユーザーは乗り替えられない。 いい換えれば、ホンダが顧客の視線に立たないから、Honda eは廃止され、インサイトは世代によってクルマ作りを大きく変えた。CR-V、オデッセイ、シビックのように、国内における車種の廃止と販売の復活を繰り返す朝令暮改も同じ理由だ。

TAG: #名車 #国産車 #絶版車
TEXT:御堀直嗣
ホンダのEVは「Honda e」からじゃないんだぜ! かつて販売したフィットEVを覚えているか?

あのフィットにもEVがあった ホンダは、2012年8月に、フィットEVの国内リース販売を開始した。対象は、自治体や企業というフリート(団体)利用者である。2年間で約200台の限定的な内容だ。 車載するリチウムイオンバッテリーの容量は20kWhで、一充電走行距離は、当時のJC08モードで225kmであった。車両価格は、消費税(5%)込みで400万円である。 車体色は、限定的なリース販売であったこともあり、ブルーパールの1色のみだ。 特徴的なのは、リチウムイオンバッテリーに東芝製のSCiBを採用したことである。 SCiBは、負極にチタン酸リチウムを用いることで、一般的な炭素と比べ、リチウムイオンが負極に出入りする際の容量低下を抑えることができ、急速充電に適しているとされる。 東芝によれば、充放電のサイクル回数が2万回以上とあり、これはほかのリチウムイオンバッテリーの4~5倍にのぼる。一方、容量や電圧で劣る面があるとされるが、フィットEVのモーター出力は92kW、最大トルクは256Nmで、初代日産リーフの80kW、254Nmと比べてもほぼ同等であり、あえて不足があるというほどではないはずだ。 また、SOC(State Of Charge=バッテリーの充電状態)で0~100%まで繰り返し使え、それでも劣化が少ないといわれる。 実際、SCiBは、三菱i‐MiEVでバッテリー容量の小さい10.5kWhのMグレードにも使われ、満充電からの走行距離は短くなるが、バッテリー劣化が少ないため、あえて中古車でMグレードを選ぶ例もあるほどだ。 ホンダ関係者でフィットEVを乗り続けている人も、充電や走行性能でとくべつ劣化に悩むような不満はないと語っている。 5ナンバー車というフィット本来の使い勝手のよさもあり、フィットEVが一部のフリート関係者でのみ使われ終わってしまったのは残念である。 遡ればホンダは、1988年からEVの研究をはじめたという。 最初の実験車は、シビックシャトルをベースにしていたように記憶している(ややあやふやだが……)。1990年代初頭、国内自動車メーカーでEV開発が行われた際、実験車両として選ばれたのは、トヨタRAV4、日産プレーリーなどSUVが多かった。床下にバッテリーを車載する都合上、積載性がよかったためだろう。ただし、当時はいずれも車載するバッテリーは、エンジン車で補器用に使われる鉛酸であった。 次いで、ホンダが本格的にEV開発を進めたのは、ホンダ EVプラスになってからといえる。 このモデルはバッテリーはまだリチウムイオンではなく、ニッケル水素であった。このため、一充電走行距離は10・15モードで210kmである。空調には、ヒートポンプが用いられ、省電力への取り組みがすでにあったといえる。 DCブラシレスモーターの性能値は明らかにされなかったが、試乗する機会があり、運転してみると、EVらしく出足が鋭く、そこからの加速も躍動感があり、VTECのガソリンエンジンで魅了してきた、ホンダ車らしい活気を感じることができた。 国内への導入は1997年に、36カ月のリース販売で、国内法人営業での取引であった。しかも約20台という限定数だ。したがって、フィットEVと同様に、一般の消費者が手にする機会はなかった。 価格は発表されなかったが、リース料金は保守整備を含め26万5000円で、36カ月で954万円に達する。とても一般の手には負えない金額になる。 一方、ホンダEVプラスは米国でも実証実験の一環としてリース販売され、米国では個人への提供もあった。 カリフォルニア州に住む一家族を取材する機会があり、両親と子どもの4人家族に話を聞くと、性能にはとても満足しているとのことであった。米国では未成年の子供を学校へ両親が送り迎えする(あるいは、スクールバスを利用しなければならない)とき、子どもたちにとってEVであることが誇らしく、友達に自慢したという話もあった。 ほかに、自宅の車庫で充電プラグを充電口に差し込むのは子どもの役目で、そうした親の手伝いのできることも子どもたちを喜ばせていた。セルフスタンドでのガソリン給油は、子供にはさせられない。排出ガスを出さないだけでなく、日常的な使い勝手のなかで、子どもにも役割分担できるよさがEVにはあることを知ることができた。

TAG: #EV #名車 #国産車
TEXT:山本晋也
180SXとの加速バトルで勝利するCM……は面白いけど失敗だった!? 初代日産リーフが残した偉大なる足跡

2010年に登場した初代リーフ 2024年上期の当期純利益が前期比で9割以上減(2962億円→192億円)となったことが話題になるなど、ネガティブなニュースが目立つ日産自動車。一部には「EVに特化したことが危機的な経営状況を招いた」といった声もあるようです。 EVに力を入れすぎた結果、現時点でニーズの高まっているプラグインハイブリッドやe-POWER(シリーズハイブリッド)の市場投入が十分でない……という見方が、そうした批判を生んでいるそう。とはいえ、日産の主力商品はまだまだガソリンエンジン車であって、EVシフトはそれほど進んでいないという事実もあるのですが、おそらく「リーフ」というEV専用モデルをいち早く販売した、EVの先駆者というイメージが、そうした印象を生んでいるのでしょう。 逆にいえば、自動車ファンにとって、それほど「リーフ」というのは衝撃的なモデルであり、EVシフトを象徴する1台として認識されているといえます。いま、あらためて初代リーフが登場したときの自動車ファンに与えた大きなインパクトを振り返ってみたいと思います。 初代リーフが日本で正式に発表されたのは2010年3月のことでした。バッテリー総電力量は24kWhでJC08モードでの一充電航続距離は200km。エントリーグレードの価格は376万4250円で、当時の補助金は最大78万円となっていましたので、ギリギリ300万円を切るくらいの車両価格になるという感覚でした。いまほどクルマの値段が上がっていない時代でしたから、かなり高価な印象もありましたが、“ある程度”実用的なEV専用モデルが購入できるようになるというのは大いに話題となりました。 そんな最初のリーフに、筆者が触れたのは忘れもしない2010年12月4日のこと。実際に発売開始となった直後の試乗となりました。もっとも、いまも昔も日産に取材する伝手があまりない筆者は、日産のヘッドクォーターで開催された一般向け試乗会に当選、発売が始まったばかりのリーフを運転することができたのです。 当時の印象を思い出せば、ドライビングフィールは「自然」をキーワードに仕上げられていたと記憶しております。アクセルペダルに対する反応は、いきなり最大トルクを発生できる電気モーターでありつつ徐々にトルクが盛り上がっていくような感触になっていましたし、回生ブレーキと協調していながらブレーキペダルの操作に違和感も覚えないものでした。 メカニズム的に注目したのは、当時としてはかなりしっかりとした「リヤディフューザー」を備えていた点。2010年にはエンジン車においてもディフューザー的な空力デバイスが装備されるモデルが増えていましたが、どうしてもマフラーが存在しているため、理想的とはいい難い形状のモデルも見受けられました。 しかして、リーフの場合は、フロア下からリヤバンパーにかけて“キレイ”に一体化したディフューザー形状となっていたのです。航続距離を稼ぐために空気抵抗を減らす必要があるためでしょうが、EVは空力デザインにおいても自由度が高いと確認させられたのも初代リーフの思い出です。

TAG: #リーフ #初代 #名車
TEXT:小鮒康一
リーフやi-MiEV以前にも量産EVはあった! じつは長〜い国産EVの歴代モデルを振り返る!!

1990年代にもEVが量産されていた いまでは日常的に見かけることも増えてきたEVたち。その普及の第一歩といえるのが、2010年に市販モデルがリリースされた三菱i-MiEVと日産リーフによるところが大きいといえる。 ただ、それ以前にも量産されたEVは存在していた。今回はそんな黎明期に登場した量産EVを何台かピックアップしてご紹介しよう。 トヨタRAV4 EV 現在はPHEVモデルもラインアップするトヨタのミドルクラスSUVのRAV4。ただ、EVモデルはなんと初代モデルの時代にすでに存在していたのだ。 1996年7月に発表、同年9月に発売を開始したRAV4 EVは、初代RAV4の3ドアモデルをベースとし、駆動用バッテリーを床下に収納したもの。駆動方式は前輪駆動となり、最高出力は45kW/165N・mと現代のEVに比べるとかなりマイルドなものとなっていた。 搭載されていたバッテリーはニッケル水素バッテリーで、満充電の航続可能距離は10・15モードで215kmとなっており、4人分の座席とヒートポンプ式エアコンを装備して実用にも十分に耐えうるものとなっていた点も特筆すべきポイント。 ただ、メーカーの希望小売価格は495万円と高額で、ユーザーのほとんどが官公庁などのリース契約となっており、結局328台をリリースするに留まっている。 ホンダEVプラス 現在、電動化を推し進めているホンダも1990年代にEVをリリースしていたメーカーのひとつで、1997年9月にEVプラスというハッチバックモデルのリース販売をスタートさせている。 このEVプラスは、一見すると当時のコンパクトカーであるロゴに似たスタイルをもっており、ロゴをベースとしたEVと勘違いされることもあるが、全長は4045mmとロゴよりも30cm近く長く、全幅も1750mmの3ナンバーサイズとなっていることからもわかるように、EV専用に開発されたオリジナルボディだったのだ。 EVプラスは今後のEVの開発にフィードバックを行う目的で実際の走行・使用状況のデータを収集可能な記録装置を備えており、リース販売が終了後はすべてホンダが車両を回収していた。 10・15モードの航続可能距離は210kmとなっており、最高速度は130km/h以上と日常使いには十分な性能をもっていたが、本格的なホンダの量産EVは2020年に登場したHonda eまで待たねばならなかった。

TAG: #名車 #量産 #電気自動車

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