ホンダ 記事一覧

TEXT:福田 雅敏
水素燃料電池(FC)を世界に誇る先端技術に……現役EV開発エンジニアが「ホンダ・クラリティFUEL CELL」を愛用して実感した燃料電池の可能性(後編)[THE視点]

[前編]では、実際に筆者が乗る「ホンダ・クラリティFUEL CELL」の印象を中心に、ランニングコストはどのくらいかかるかを示した。そこで示したものは、車両が悪いわけでは断じてなく、整備がまだまだ整っていない水素インフラ全体の問題を内包している。[後編]では、現在の水素ステーションの問題などに触れつつ、水素社会の未来について簡単に考察してみたい。 採算度外視が実情の水素ステーション運営 日頃から燃料電池車(FCEV)に乗っていて感じるのは、水素ステーションのインフラ整備の問題だ。筆者の走行パターンでは、水素を満充填時の航続可能距離が450~500kmと表示される。これだけであればガソリン車と遜色なく思われるが、ステーションの少なさが問題なのである。ガソリンスタンド、EVステーションの数はいずれも3万ヵ所前後であるのに対して、水素ステーションは4月現在170ヵ所程度である。 高速道路に至っては、5月現在1つもないのだ(現在、東名高速足柄SAに建設中)。筆者の通勤ルートは片道50kmあるが、その間にあるのは、通勤ルート近辺に3ヵ所である。少し遠くに行ってようやく2ヵ所。東京・神奈川エリアでこの状況である。 さらに開店時間にも制限がある。10時~16時まで・13時~18時までという開店時間で、全部のステーションがいつでも使えるわけではないのである。おまけに日曜はステーションが休みの場合も多い。 ただ、店側のやる気がないわけでは決してない。実際に店員さんに話を聞くと、1日に充填に訪れるFCEVは10台程度だという。1台5,000円の料金と計算しても1日5万円しか売り上げがないことになる。これでは水素ステーションが増えないのも納得がいくというものだ。 ちなみにだが、水素充填の渋滞を経験したこともある。都内のとある水素ステーションでの話だが、2台あるディスペンサーのうち1台が故障。その1台をFCバスが使用していた。FCバスは充填量が多いため時間がかかる。1台にかかる時間は約20分。このバスの後にもう1台FCバスの予約が入っていたため、都合40分待つことになった。 その時間ももったいないので、先に40分ぶんの用事を済ませてからステーションに戻ると、FCバスの充填は済んでいて「ミライ」が充填をしていた。そしていざ自分の番になると、先にタンクローリーからステーションに水素を充填するという。それに要する時間が50分。偶然に偶然が重なった例だが、このように長時間待たされた経験があった。 このようなリスクを考え、筆者は航続可能距離が200kmを切ると水素の充填を考えるようにしている。加えて言うなれば、FCEVは“水欠”になったら終わり。ロードサービスを呼んだとしても、水素ステーションが開いていないことには五里霧中となってしまうのだ。 実際にFCEVが必要な現場で車両が水欠寸前になり、水素を求めた挙句200kmも離れた場所までレッカーされたという冗談のような実話もある。もし夜中に水欠となれば目も当てられない状況になるだろう。運良く自宅まで辿り着けたとしても、そこには水素はないのだ。EV用充電器の設置が世界から比べて遅れている日本だが、FCEVの視点から比べると、羨ましいほどのインフラが整っているように見える。

TAG: #THE視点 #水素インフラ #燃料電池車(FCEV)
TEXT:福田 雅敏
FCEVは実用的だが一般普及はまだ早いか……現役EV開発エンジニアが「ホンダ・クラリティFUEL CELL」を愛用して実感した燃料電池の可能性(前編) [THE視点]

筆者は現役のEV開発エンジニアであるが、実はプライベートでは「ホンダ・クラリティ FUEL CELL」に乗るFCEVユーザーである。「クラリティ」に乗り始めてまだ日は浅いのだが、実際にFCEVに乗ることで見えてきた水素エネルギーの現実もある。今回はFCEVの利点と課題をユーザーの視点で話してみたい。 走り心地はEVそのもの 「ホンダ・クラリティ FUEL CELL」は、2016年に販売された。国内ではリース販売専用モデルだったこともあり、非常に希少なモデルと言われている。販売台数は、国内では500台程度で、海外も含めると1,900台程度と言われている。 筆者の場合、席を置く「東京R&D」がリースしている車両を使用している。筆者は2013年頃よりFCEVに興味を持ち始め、2018年からFCEVトラック・バスの開発にも携わり、FCEVの可能性を色々と学んできた。こうして日常の足として使用することで、ユーザーの立場からもFCEVについて理解を深めたいと考えている。ちなみに90年代にも「トヨタ RAV4EV」、初代「プリウス」を日常の足に使用し、新しいパワートレインの車を試してきた。 まず、クラリティのスペックを簡単に紹介する。全長4,915×全幅1,875×全高1,480mmで空車重量が1,890kg。最高出力130kW(177ps)/最大トルク300Nm(30.6kgm)のモーターに、最高出力103kWのFCスタックを搭載。141Lの水素用タンクを備え、航続距離は750km(JC08)となっている。 デザインは好みもあると思うが、かなり凝った造形で、特にフロントヘッドライト周りとリアサイドのスパッツ、室内とトランクとの間にガラス窓を設けるなど、内外ともにかなり作り込まれている。 走りはEVそのものであり、言われなければFCEVだとは誰も気づかないと思う。「クラリティ」の場合、最近のEVのように高出力のモーターによる発進加速を争うようなモデルでもないので、それほど強烈なEV感は味わえないが、SPORTモードを使えばそれなりに速く走れる。1,890kgもある車体だが重さは感じない。高速道路を多用する筆者だが、高速域での静粛性も高く快適である。 ただ、車格が少し大きいので取り回しが悪いのと、水素タンクがリアシート下とトランクに置かれているので、トランクの使い勝手が悪いのが難点である。そのほか装備面では、バッテリー式EVのように、FCから外部へ電気を供給できる可搬型外部給電機もあるのだが、120万円程度するので導入は見送った。

TAG: #THE視点 #クラリティFUEL CELL #燃料電池車(FCEV)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
ホンダ、EVスクーター「EM1 e:」を発売……デイリーEVヘッドライン[2023.05.22]

ホンダ初の市販EVスクーターがいよいよ発売 着脱式バッテリーを採用した原付一種クラス 【THE 視点】本田技研工業は、EVスクーター「EM1 e:(イー・エム・ワン・イー)」を8月24日に発売すると発表した。 「EM1 e:(イー・エム・ワン・イー)」は、交換式バッテリー「ホンダ・モバイル・パワー・パックe:」(以下、MPP)を電源に採用。車両自体は、内燃エンジンの50cc未満に相当する原付一種の扱いとなる。 価格は29万9,200円で、内訳は「EM1 e:」の車両本体価格が15万6,200円。「MPP」が8万8,000円。MPP専用充電器の「ホンダ・パワー・パック・チャージャーe:」が5万5,000円(各税込み)。電源系が価格の半分を占めている。 「EM1 e:」は、今年3月に大阪と東京で開催された「モーターサイクルショー」にて展示はされていた。今回は発売日と価格が公表された形だ。 電源を含むパワートレインは、「MPP」1個をシート下に搭載。駆動は後輪の「インホイールモーター」(交流同期モーター)が行う。モーターの最高出力は1.7kW(2.3ps)で最大トルクは90Nm(9.2kgm)。 内燃機関車であるホンダの原付一種「ダンク」<3.3kW(4.5ps)/4.1Nm(0.42ps)>と比べて最高出力は劣るものの、最大トルクはなんと倍の数値を出している。なお、航続距離は53km(30km/h定地走行テスト値)。「USB Type-A」のソケットを搭載しているため、電子機器の充電も可能だ。 ホンダはこれまで、日本郵便などフリート向けにEVスクーターを販売していたが、ようやく一般向けEVバイクが市販化となった。大きな特徴は、交換式バッテリーの「MPP」を採用したことだろう。筆者もこれまで何度も「MPP」をレポートをしてきたが、「MPP」は汎用性が高く、バイク以外への活用も期待できる。万が一の際には非常用電源としても利用可能だろう。 また、「MPP」は、バッテリーのシェアリング事業を手がける「Gachaco」(ガチャコ)も導入している。サービスの整備が進めば、充電要らずのEVバイクという新しい市場が生まれてもおかしくはない。今後利便性もさらに向上すると思われるので期待したい。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ブリヂストン、アメリカでEV向けオールシーズン・タイヤ「トゥランザEV」を発表……「フォード・マスタング・マッハE」と「テスラ」の全モデルがターゲット ★★フォルクスワーゲン、「ID.7」のAWD長距離対応モデル「GTX」の登場を予告……2023年9月に発売予定[詳細はこちら<click>] ★★BYD、「アット3」がカーシェアサービス「エニカ」で利用可能に……全国のBYD正規ディーラーにて車両の受け渡し・返却が可能[詳細はこちら<click>] ★★BMW、新世代EV「ノイエ・クラッセ」を2026年から中国・瀋陽で生産……同車向けの高電圧バッテリーも中国で現地生産 ★★グッドイヤー、EV向けの新タイヤ「エレクトリックドライブGT」をアメリカで発表……メタンの熱分解で得られるカーボンを配合したオールシーズン型 ★ステランティス、ホットハッチ「アバルト500e」のメタバースストアをオープン……好みの仕様などを仮想空間上でオーダー ★パナソニック、EV事業で丸紅と合弁会社を設立……法人のEV導入・運用をサポート ★新電元、EV用小型充電器「見せない普通充電器」を発売……最高出力6kW、設置スペースの大幅な節約が可能[詳細はこちら<click>] ★トヨタ紡織、鞍ケ池公園<愛知県豊田市>にて低速電動モビリティを実証実験……場所に連動した施設情報などを、音などと合わせてエンターテイメント化し案内 ★フィスカー、家庭用EV充電器「フィスカー・パルサー・プラス」を発表……EV用小型充電器の「ウォールボックス」と提携 ★フォード、アメリカで充電インフラの業界団体「ナショナル・チャージング・エクスペリエンス・コンソーシアム」に参画 ★日産、沖縄県竹富町とEVの活用で連携……西表島ならではのEV活用を島民とともに検討 ★HKS、「人とくるまのテクノロジー展」に出展……EV用交換式バッテリーパックなど展示 ★日本特殊陶業、「人とくるまのテクノロジー展」に出展……絶縁性に優れたEVなど向けのセラミックスボールベアリングなど展示 ★「ジャパンEVラリー白馬 2023」、参加者募集中……7月22日(土)〜23日(日)に長野県白馬村にて開催 ※ 「人とくるまのテクノロジー展 2023 」……パシフィコ横浜(YOKOHAMA横浜市西区)にて5月24日(水)〜26日(金)に開催

TAG: #EM1 e: #EVバイク #THE視点
TEXT:TET 編集部
ヴェゼルのEV版かと思いきや。ホンダがSUVの新型EV「e:Ny1」を披露。2023年秋より欧州で発売

ホンダの英国法人は5月12日(現地時間)、欧州向け新型電動SUV「e:Ny1(イーエヌワイワン)」を発表した。ヴェゼルにそっくりなこのモデル、e:Nシリーズの欧州向けモデルとして今秋の発売が予定されている。 EV専門ブランド「e:N」シリーズ第一弾 e:Ny1は、ホンダの電気自動車(EV)専門サブブランド「e:N(イーエヌ)」シリーズの第一弾にあたるモデル。EV専用のボディ骨格「e:NアーキテクチャーF」を採用し、スポーティな走りや意のままに操れる運転感覚が追求されている。 公開された画像からも想像できるように、日本でも販売されている「ヴェゼル」に非常に似ており、フロントグリルが閉じられている以外は、エクステリアから両者を区別することは難しいほど。さらにいえば、昨年4月に中国でデビューした電動SUV「e:NS1」(東風ホンダ製)および「e:NP1」(広汽ホンダ製)と見た目がほぼ同じで、グローバル展開を見据えた壮大な計画のもと生まれたデザインであることがうかがえる。 ホンダによると、e:Ny1は大容量バッテリーを搭載することで412km(WLTCモード)の航続距離を達成し、モーターは150kW(204ps)の最高出力と310Nmの最大トルクを発生するとのこと。また、フロントリッドに内蔵された充電ポートは最大100kWの急速充電に対応し、約45分で最大80%まで充電可能だ。 さらに、急いでいる場合では最短11分で約100km分の充電ができるとのことだから、都市部での普段使いではまったく痛痒を感じないだろう。なお、こうした充電システムの制御についてはスマホ用アプリ「My Honda+」で行えるという。 >>>次ページ 仮想敵はプジョー e-2008  

TAG: #BEV #e:N #新型車
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
ホンダ、リチウムイオン・バッテリーの国産化を推進……デイリーEVヘッドライン[2023.05.01]

GSユアサ/ブルーエナジーと協力関係を強化 2027年4月より量産体制へ 【THE 視点】本田技研工業(ホンダ)/GSユアサ/ブルーエナジーの3社は4月28日、リチウムイオン・バッテリーの共同研究開発体制について連携を強化すると発表した。 ホンダとGSユアサはかねてよりリチウムイオン・バッテリーの共同研究開発の体制を深めてきた。今回は、そこにブルーエナジーも加えての量産投資計画が、経済産業省の施策「蓄電池に係る供給確保計画」に認定された。これにより、今後拡大が見込まれているバッテリーの国内需要に対応していくという。 事業総額約4,341億円のうち、助成金額はその約3分の1の約1,587億円(最大)となる。生産規模は20GWh(国内)で、2027年4月に生産ラインを稼働させ、同年10月より本格量産を開始。2030年にかけても順次ラインを立ち上げて量産体制を整えていくという。 生産規模の20GWhという数値は、バッテリー容量50kWhのEVに換算すると、40万台分に相当する。ホンダの2022年の国内生産台数は64万台程度なので、2030年には6割程度のバッテリー生産能力を国内に持つことになる。これでようやくホンダが電動化に向けて動き出したように感じる。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★エネオス、法人会員向けEV充電サービスを開始……経路充電サービス「ENEOS Charge Plus」にて展開、100%再生エネルギーを使用した充電も可能 ★★凸版印刷、パワー半導体事業を開始……ウェハーを製造代行受託、製造プロセスはJSファンダリ新潟工場内に ★★米国カリフォルニア州、2036年以降販売の中・大型車もZEV以外を禁止に……ゴミ収集車とローカルバスは2039年までにZEVでなければならないとも規定 ★ステランティス、バッテリー用のニッケルと硫酸コバルトをオーストラリアから調達……アライアンス・ニッケル社の株式を11%(920万ユーロ/約13 億9,000万円)購入 ★ボッシュ、アメリカで炭化ケイ素(SiC)半導体の製造を計画……アメリカの半導体企業「TSIセミコンダクターズ」を買収、EV需要に対応しカリフォルニアにて生産へ ★メルセデス・ベンツ、2023年第1四半期のEV販売台数が5万1,639台……前年同時期比89%増、グループ全体の販売台数は50万3,483台[詳細はこちら<click>] ★ヤマハ、広島G7サミットに合わせた自工会展示ブースに電動製品を出展……「ひろしまゲートパークプラザ」<広島市中区/5月18日(木)~21日(日)>にて、EVスクーター「E01」などを展示

TAG: #THE視点 #バッテリー #国内ビジネス
TEXT:TET 編集部
軽EVやSUVも。ホンダが新たに4車種の電気自動車を国内投入

ホンダは4月26日、電動化を踏まえた企業変革に関する説明会「2023ビジネスアップデート」を開催し、今後の商品計画などについて発表した。計画では2026年までに4種類のEVを国内市場に投入するとのこと。詳しく内容を見ていこう。 2024年〜2025年にホンダから軽EVが2モデル登場 ホンダの発表によると、2024年前半に先陣を切って「N-VAN」ベースの軽商用EVがデビューする。こちらは既に昨年末プロトタイプが公開されたもので、航続距離200kmという目標値と、ガソリン車と同等の100万円台のスタート価格に設定されることが明らかにされていた。今回この既報が再確認されたわけだが、販売時期は昨年末時点で2024年春とされていたのが2024年前半へと改められた。単なる表現の違いかもしれないが、半導体不足の影響を受けての軌道修正の可能性もある。 そして今回の発表で最も注目されるのが、軽乗用車「N-ONE」をベースとしたEVを2025年に市場投入すると明言されたこと。2020年にデビューした現行の2代目N-ONEは個性的なエクステリアやマニュアルトランスミッションの設定など、各所にこだわりを感じさせるプレミアムな軽トールワゴンだが、一方で価格設定もライバルよりやや高かった。 ただ、EV版が追加されるということはバッテリー搭載も考えて設計されていることの証左であり、開発コストが上がってしまった理由も納得できる。先行する軽EVの「日産サクラ」や「三菱ekクロスEV」に、プレミアムな質感で真っ向勝負を挑むモデルとなりそうだ。 細かいところに注目すると、サクラとekクロスEVは全高1650mm超と一般的なタワーパーキングには入らないのに対し、N-ONEはFF車なら同1545mmでギリギリ入庫可能となっている。最近はマンションの立体駐車場に設置できる充電設備も登場しているから、EV版N-ONEの登場が更なるEV普及のきっかけとなる可能性もありそうだ。そのためには、サクラやek クロスEVの約250万円というスタート価格を下回ってほしいところだが、価格については現時点では明かされていない。 さらに、今回の発表では2026年にSUVタイプを含む小型EV2機種を発売することも明らかにされた。これについて詳細は明らかになっていない。推測だが、昨年4月に中国で東風ホンダから販売が開始されたヴェゼルベースのEV「e:NS1」が国内導入される可能性もある。e:NS1は中国の工場で生産されるEVだが、既にホンダはミニバン「オデッセイ」で中国産の車両を国内導入すると発表済み。その続編となる可能性もある。 >>>次ページ トヨタや日産と同じ土俵に

TAG: #N-ONE #戦略
TEXT:烏山 大輔
ホンダ、上海モーターショーでBEVの「e:N」シリーズ3車種を世界初公開。中国でのBEV100%目標も5年前倒し

2023年4月18日、ホンダは上海モーターショーで、電気自動車(BEV)「e:N(イーエヌ)」シリーズの第2弾となる「e:NP2 Prototype(イーエヌピーツー プロトタイプ)・e:NS2 Prototype(イーエヌエスツー プロトタイプ)」と、e:Nシリーズ第3弾となるコンセプトモデル「e:N SUV 序(xù)」を世界初公開した。「序」は中国語で「プロローグ」を表し、e:Nシリーズとして新世代の幕開けを迎えるという意味合いを込めている。中国市場において、今後これらのモデルを投入しe:Nシリーズを拡充することで、「2035年までにEVの販売比率100%」の達成を目指していく。 写真は左からe:N SUV 序、e:NS2 Prototype、e:NP2 Prototype 、e:N GT Concept(2021年に発表された2026年までの発売を予定しているコンセプトカー)。 目標を5年前倒し、「2035年までにEVの販売比率100%」 ホンダは、グローバルでの目標である「2050年にホンダが関わる全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現」を掲げ、中国においては2027年までに10機種のホンダブランドEVの投入を予定している。 今回発表されたe:NP2 Prototypeとe:NS2 Prototypeは、ホンダが提案する新しい価値を持ったEVとして開発が進められており、e:Nシリーズ第2弾として2024年初頭に発売される予定だ。 またe:Nシリーズ第3弾となるe:N SUV 序については、SUVらしいワイルドさと近未来的な知性を兼ね備えた新世代のe:Nシリーズとして開発が進められている。今回発表されたコンセプトモデルをベースにした量産モデルは、2024年内に発売される予定である。 ホンダはこれらのEVモデルの投入により、中国における電動化を加速し、「2040年までにEV・FCEVの販売比率100%」の目標を前倒しして、「2035年までにEVの販売比率100%」の達成を目指す。

TAG: #BEV #e:N #コンセプトカー #上海モーターショー
TEXT:烏山 大輔
ホンダ、ヤマト運輸と発売前の軽商用EVで集配業務の実用性を検証

本田技研工業株式会社とヤマト運輸株式会社は、ホンダが2024年春に発売を予定しているN-VAN(エヌバン)をベースとした、新型軽商用EVの集配業務における実用性の検証を2023年6月から8月まで実施する。近年、EC市場の拡大に伴い物流の需要が高まる一方で、温室効果ガス排出量の削減など、サステナブルな物流の実現に向けた取り組みが必要とされているためである。 2050年までのカーボンニュートラルを目指す両社の取り組み ホンダは2050年までにホンダが関わる全ての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルを目指す取り組みを進めており、日本市場においては、2024年春に発売予定の新型軽商用EVを含め、身近な車種である軽自動車からEVの普及に向けた取り組みを進めている。 また、ヤマトグループは、「2050年温室効果ガス自社排出量実質ゼロ」および「2030年温室効果ガス排出量48%削減(2020年度比)」という目標を掲げ、2030年までにEV20,000台の導入(2020年1月より500台のストリートスクーターを首都圏に順次導入)を含む様々な取り組みを進めている。 そして今回ホンダとヤマトグループは、ホンダが2024年春に発売予定の新型軽商用EVを活用し、環境負荷軽減効果、集配業務における実用性や車両性能などを検証するために協力することを発表した。さらに、充電オペレーションやエネルギーマネジメントに関する各種データを取得し、より実用性の高いEVの運用に役立てることも目的である。 新型軽商用EVは、大容量でフラットな荷室空間を持つ軽商用バン「エヌバン」をベースに開発された。ヤマトグループは、小型モバイル冷凍機「D-mobico(ディーモビコ)」を2台搭載し、冷蔵・冷凍品の配送にも対応する予定だ。このディーモビコは、モバイルバッテリーで駆動し、ドライアイスを使用しないため、より環境に配慮した配送が可能である。 全国3ヵ所での実証実験、寒冷地での検証も実施 実証実験は2023年6月1日から8月31日までの3ヵ月間に車両3台を使い実施する。この実験は、ヤマト運輸の中野営業所(東京都杉並区)、宇都宮清原営業所(栃木県宇都宮市)、神戸須磨営業所(兵庫県神戸市)の3ヵ所で行われる。 実証実験では次の3点を検証する。 まず、EVを導入した際の環境負荷軽減効果について検証する。EVの導入により、CO2排出量の削減などの環境負荷軽減効果が期待されるが、この効果について、実際の配送業務におけるデータを取得し、詳細に検証する。 次に、集配業務における実用性や車両性能について検証する。車両の使い勝手や航続可能距離などのEV独自の実用性に加えて、ドアの開け閉めや乗り降りが多い集配業務を通じた車両の耐久性、さまざまな特徴を持つエリアでの車両性能などを検証する。具体的には、配送荷物が多く乗り降りの機会が多い東京23区エリア、1度の配送における走行距離が比較的長い栃木エリア、坂が多くアップダウンのある兵庫エリアで、それぞれの状況におけるEVの性能を検証する。 最後に、EV運用における各種基礎データの取得・検証を行う。日々の集配業務における車速、アクセルやブレーキなどドライバーの運転操作や、空調による電力消費量、走行後の充電量や充電時間帯などの各種基礎データを取得し、複数台のEV車の運用を想定した充電オペレーションとエネルギーマネジメントの検証を行う。 また、今回の実用性の検証にとどまらず、冬季の集配業務を想定した、外気温が氷点下になる寒冷地での充電・走行テストなど、様々な環境下での検証を行っていく。今後も、さまざまな環境下での検証を通じて、商用EVとしての実用性を高め、顧客ニーズに応える軽商用EVの開発・普及を目指す。

TAG: #商用EV
TEXT:烏山 大輔
日産とホンダが上海モーターショー2023に出展。EVやコンセプトカーを展示予定

中国・上海で開催される「上海モーターショー2023」に、日産自動車株式会社はコンセプトカーの「Max-Out(マックスアウト)」をはじめとする幅広いラインナップを展示することを発表した。 一方、ホンダは、電気自動車「e:N(イーエヌ)」シリーズの第2弾プロトタイプを世界初公開すると発表した。両社とも中国市場向けにデザインされた電動車両や新技術を展示する予定であり、ホンダは二輪車の展示やカスタマイズモデルの展示も行う。上海モーターショー2023は4月18日から27日まで開催される(一般公開日は4月20日から4月27日)。 日産は中国の多様なニーズに応えるために、新型車や世界初公開のコンセプトカー2車種を出展する予定である。コンセプトカーのマックスアウトは、日産の長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の一環として、将来の持続可能で革新的なモビリティを体現するデジタルコンセプトカーとして公開された。今回のモーターショーでは、このコンセプトカーの実車を初めて中国で展示し、優れた操縦安定性や快適性など、新しいドライビング体験を提供することを目指している。 さらに、中国市場向けにデザインされた新たなEVコンセプトカーに加え、EVやe-POWERを搭載したさまざまな電動車両を展示する予定である。日産ブースでは、プレスデーの初日は電動車両、二日目はSUVを中心とした展示を行う。中国向けにデザインされたSUVのコンセプトカーは二日目に公開予定だ。 ホンダは電気自動車「e:N(イーエヌ)」シリーズの第2弾プロトタイプを世界初公開する。ホンダ四輪ブースでは、イーエヌシリーズの第2弾プロトタイプに加え、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、そして電動二輪車を3モデル展示し、中国におけるホンダの電動モビリティラインナップを紹介する。また智能化技術のブースでは、新世代コネクテッド技術「Honda CONNECT 4.0」や全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360」の技術を体験できる。 さらに二輪ブースでは、大型二輪販売チャンネル「Honda DreamWing」に投入する新しいグローバルモデルを中国初公開するとともに、カスタマイズモデルの展示を行うなど、ホンダの多彩な“FUN”を具現化するモデルが展示される予定だ。

TAG: #モーターショー #中国
TEXT:福田 雅敏
マリン・レジャーにも電動化の波、ホンダ・ヤマハも独自技術で出航……現役EV開発エンジニアによる「ジャパンインターナショナルボートショー2023」レポート[THE視点]

「ジャパンインターナショナルボートショー2023」(一般社団法人 日本マリン事業協会)が3月23日(木)~26日(日)にパシフィコ横浜(横浜市西区)を中心に開催された。今回は自動車ではないが、船舶にも電動化の波が押し寄せていると聞いた。実際に会場でユニークな電動船舶を見つけたのでレポートする。 電動船の販売企業が出展、メーカーにより違いも まずは、電動船を唯一展示していたのが友池産業のブースだ。33.87kWhのリチウムイオン・バッテリーを2個(4モジュール構成×2個)船内前後に搭載し、電動船外機を2基搭載している。 船外機のカバーに115と書かれた数値がそのまま馬力値で、その船外機が2基がけなので230psということになる。モーターの冷却は海水を吸い上げて実施しているという。バッテリーの充電は三相交流(AC)の200Vの普通充電のみだ。 次に見たのはEV船販売(株)。社名そのものの事業を展開する企業だ。実機の展示はなくパネルでの紹介だったが、紹介されていたのは総重量19トン(免許の関係)の2艇。顧客の要望に合わせて製作するという。 紹介されている船のうち1艇でユニークに感じたのは、大阪で既に実働している長さ21mクラスのもの。「トルキード」社製の50kWのモーター2基、「BMW i3」のバッテリー(40kWh)を2基、そして補助電源として発電機を搭載しているとのこと。ちなみに充電は、EVの急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」にも対応するという。 大手ホンダ・ヤマハも出展、「ホンダ・モバイル・パワー・パック :e」は船舶にも 会場で一番大きなブースを構えていたのがヤマハ発動機である。ボートや船外機がずらり並ぶ中、次世代電動操船システム「HARMO(ハルモ)」が展示されていた。 「ハルモ」は電動推進ユニットとステアリングユニットを統合したシステムとなる。ステアリングユニットは、スクリューが左右に動き向きを変えるもの。48Vのバッテリーを船内に搭載し、約6psのモーターで小型船を動かすという。2020年8月から北海道小樽市の小樽運河クルーズにて実証運航を行っている。 次に大きなブースを構えていたホンダでは「小型電動推進機コンセプト」を「ジャイロ・キャノピー :e」とともに展示していた。 「小型電動推進機コンセプト」は、「スマートエネルギーWeek 春」などでもレポートした脱着式可搬バッテリー「ホンダ・モバイル・パワーパック :e(MPP)」で駆動するというもの。 船内に「MPP」を2個搭載し「小型電動推進機コンセプト」に電力を供給する。電動なだけに非常にコンパクトかつスリムで、最高出力3.7kWのモーターで小型ボートを動かせる。 今回も感じたが、ホンダが「MPP」にかける意気込みは相当なもので、陸から海にまで及ぶ。ヤマハの「ハルモ」も電圧が一致することから、ヤマハの推進機にもパックを使用できるのではと思った。是非、コラボレーションして欲しい。

TAG: #THE視点 #ジャパンインターナショナルボートショー2023 #電動船
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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