自身の生活スタイルを考えてから購入の踏み切るべし
<使い方とのミスマッチとリセールバリューが後悔を生む>
もうひとつのわかれ目は、クルマの使い方とEVの特性が合っているかどうかだ。EVの性能は外気温に影響を受けやすいという特性がある。とくに冬季は、リチウムイオンバッテリーの化学的特性上、低温環境で内部抵抗が増加し、取り出せる電力量が低下する。加えて車内の暖房にも電力を消費するため、カタログ上の航続距離(一充電走行距離)から、外気温や車種によって異なるが、20〜40%程度低下するケースもある。近年はヒートポンプを採用する車種が増え改善しているとはいえ、週末ごとに300〜500km程度の長距離を走る人のなかには、旅先での充電計画を練ることを負担に感じる人も少なくない。

連休の高速道路では急速充電器に行列ができることもある。この点を理解せずにカタログ値だけを見て購入すると、「冬場に走れる距離が想定より短い」という不満につながる。逆に、こうしたバッテリーの特性をあらかじめ理解し、余裕をもった運用ができる人は後悔しにくい。
もっとも、インフラ側の改善は着実に進んでいる。経済産業省などの集計によれば、2024年度末(2025年3月)時点で国内の公共用充電器は約6.8万口、うち急速充電器は約1.2万口である。経済産業省は2023年10月に策定した「充電インフラ整備促進に向けた指針」で、2030年までに公共用充電インフラ30万口程度という目標を掲げており、環境は年々よくなっている。

それでも現時点では、長距離走行が多く、自宅充電が難しいユーザーほど後悔する可能性が高いことは否定できない。加えて見逃せないのがリセールバリューだ。EVは車種によって差が大きいものの、一部ではICE車より下落幅が大きい例もみられる。数年での乗り換えを前提に購入した人が売却時に落胆することもありえるのだ。長く乗りつぶすつもりで買うのか、短期で乗り換えるのか。購入前にそこまで考える必要がある。
<後悔しないための条件と購入前のチェックポイント>
EVにはICE車にない明確な利点がある。モーター駆動による滑らかで力強い加速、静粛性、そしてパワートレインにかかわる定期交換部品が少なく、メンテナンス項目も減る点である。回生ブレーキが減速の多くを担うため、摩擦ブレーキの作動頻度が減り、パッドの摩耗も抑えられる。日常の走行距離が自宅充電の範囲内で完結する人、静かで滑らかな乗り味を重視する人にとって、これらの価値は日々の満足感に直結する。

電気料金の単価やガソリン価格の変動を踏まえたランニングコストの試算も、後悔を避けるうえで欠かせない検討事項である。実際、先のJ.D. パワー調査(2024年)でも、維持費の低減を実感したユーザーの9割近くが次回もEVの購入を検討すると回答している。
購入を検討する際には、国や自治体が実施する購入補助制度の有無や金額も判断材料となる。これらの制度は年度や予算によって内容が変動するため、購入時点での最新の公的情報を必ず確認する必要がある。制度を前提に総費用を見積もっていた場合、条件を満たさなかったり予算が終了していたりすると、想定外の出費となり後悔の一因となる。

整理すると、後悔しない人の条件は明快だ。自宅に充電設備を設置でき、1日の走行距離が数十km程度に収まり、長距離移動は年に数回程度。あるいは長距離用にICE車やハイブリッド車をもう1台もっている人である。この条件に当てはまるなら、先に挙げたEVの美点を存分に享受できるはずだ。
反対に、自宅充電が難しく長距離走行も多いなら、現時点ではハイブリッド車を選ぶほうが合理的だろう。大切なのは流行に乗ることではなく、自分の使い方を冷静に見つめること。それさえ間違えなければ、EVへの乗り換えで後悔する可能性を大きく下げられるのだ。















































