ガソリン車からの乗り換えやすさを考えて開発
さまざまなクルマが展示されたジャパンモビリティショー2025。なかでも多くの注目を浴びたのが、スズキブースのステージ中央の特等席に置かれた新作EVのコンセプト、「Vision e-Sky(ビジョンeスカイ)」だ。
軽自動車のEVに先鞭をつけた日産サクラ・三菱eKワゴンが好セールスを記録したものの、あとに続くライバル車は現れず3年が経過した。ようやく9月にホンダN-ONE e:が新たな選択肢として登場したが、それでも物足りなさを感じるのは、きっと軽自動車業界を長年牽引してきたスズキとダイハツから現実的なモデルが提示されていないためだろう。
そしてようやくこのタイミング、ジャパンモビリティショー2025でいよいよ軽自動車業界の巨頭スズキが動き出した。2026年度の販売を目指して開発したEVコンセプトカー「Vision e-Sky(ビジョンeスカイ)」を世界初公開したのだ。
と大上段に構えてみたが、ビジョンeスカイはこれまでのスズキ車と同様、とても親しみやすく気軽に付き合えそうなクルマで、いい意味で肩の力が抜けている。「ちょっとそこまでお買い物」なんていう使い方がとても似合う、スニーカー感覚のクルマだと言える。
コンセプトカーだから、やや現実離れした大径タイヤを装着していたり、室内のボタンがほとんど静電タッチ式だったりするけれど、全体としてはこれまでのスズキの血統から大きく逸脱せず、ことさらにEVであることを主張していないのがちょうどいい。
やや背高で丸みを帯びた2ボックススタイルのボディは、オーソドックスなヒンジ式のドアを4枚備え、奇をてらったところがなくごく自然な佇まい。充電口もガソリン車の給油口と同様の位置にあるので、言われなければEVだと気づかないかもしれない。それぐらいフツーなのだが、それがスズキの狙いでもある。
開発目標の航続距離は270km。これは通勤・買い物など、平日の平均的な軽自動車の使われ方と、週末のちょっとした遠出を加味して必要十分な距離としてスズキが導き出した値なのだという。つまり、闇雲に航続距離の長さを追ったりはしていない。
フロントグリルに相当する位置には、充電中の状態やクルマの起動状態を表示するシグネチャーライトが設置され、外からも愛車の状態を確認できるようになっている。
これにより、エンジン車と比べ極端にフロントまわりの開口部は少ない。コンセプトカーだからなのかと思いきや、スズキによれば市販モデルでも極力このデザインは踏襲していきたいのだというで、ここは先進性を感じられる部分かもしれない。
一方で、前述した静電タッチ式の室内ボタン類に関しては、シニア層が使うことも考え、物理ボタンを適切に配置することが検討されているという。もしかしたら室内の印象は、今後に大きく変化するかもしれない。
ビジョンeスカイに一貫して言えることは、「これまで乗ってきたガソリン車から如何に違和感なく乗り換えてもらうことができるか」を徹底的に考えて開発されているということ。だから乗り込んだときにアクセントとして少し新しさを感じられるようにする部分はあっても、EVだからといって先進技術や革新的なレイアウトで圧倒しようという思いは、スズキ側には一切ないのだという。
非常に現実的かつ以前からのスズキの顧客を大事にしようという姿勢がうかがえる、納得のコンセプトカーがビジョンeスカイだ。
斎藤充生
































