国産初のBEV大型路線バスは乗客にもメリット大 東京都北部と埼玉県川口市、さいたま市などを中心に、1日あたり約28万人もの利用者を抱える路線バス会社の国際興業。そこに新たなEVバスの導入が発表された。 導入されたのは全長約10.5m、乗車定員68人の国産初のBEV大型路線バス、いすゞ「エルガEV」だ。同社のさいまた東営業所に、埼玉県内では初導入となる1台が配備され、さいたま市内の各路線で営業運転を開始する予定だという。 エルガEVは、モーター走行による走行中のCO2排出量ゼロを達成しているだけでなく、モーターを後輪の左右に搭載することで、車内最前部から最後席まで床面がフルフラット化されていることが特徴。これにより車内の転倒事故防止や、幼児・高齢者の移動、離着席を容易にするなど利用者の快適性がエンジン車に比べて向上している。また、災害などの非常時には家庭用100V電源として、外部への給電が可能となっている。 国際興業とパワーエックスの提携が目指すもの 今回エルガEVの導入に合わせて、国際興業は充電システムメーカーのパワーエックスと提携したことを発表した。これにより、国際興業さいたま東営業所には、パワーエックスが開発した、EVバス専用としては初となる蓄電池型超急速EV充電器「Hypercharger Pro」が設置された。 大容量蓄電池を搭載したこの充電器は、営業所の電力ピークを抑制し、電気料金を削減しながら最大出力150kWの高出力で効率的な充電を可能にする。さらに、車庫屋上に設置されたオンサイト太陽光発電設備からの余剰電力も活用することで、運行に伴う温室効果ガスの排出削減も図るのだという。 両者の提携により、これらの導入および運用実績をもとにして、国際興業は今後の自社の運輸事業者向け商事機能を生かして、パワーエックスの「Hypercharger」と「Hypercharger Pro」の拡販、およびその運用ノウハウを他のバス事業者にも共有していく構えだ。 一方パワーエックスは、運用データとバス事業者からのフィードバックをもとに、蓄電池を活用した充電システムを、EVバスの導入にも対応可能な次世代のエネルギーマネジメントソリューションとして開発を進める。さらに、災害への備えとして「Hypercharger Pro」の蓄電システムを自立運転できるようにして、停電時でも車両充電や営業所のBCP電源として活用できる機能を提供していく予定だという。 EVと充電器の双方を蓄電池として機能させ、災害時の地域貢献に役立てる取り組みはまさに理想的なパッケージだ。今後、運用実績を積み重ねて、各地域にその成果と仕組みが普及していくことを願いたい。
#いすゞ