Hyundai Motor Club JAPANという組織は【Becoming a hub connecting owners and manufacturers】である。
いきなり押しつけがましいスタートで申し訳ありません。Hyundai Motor Club JAPAN(以下HMCJ)の会長を務めます、辻榮亮(つじえりょう)と申します。
今回、The EV タイムスへの寄稿ということでどういった内容にしようかとややしばらく思案をしておりました。悩んだ結果のあのタイトルとなった次第です。うちのメンバーからは「いつも通りじゃないか」との声が聞こえてきそうですが、つまり収まるところ、そういうことだと改めて感じた今回でもありました。
それはなぜ?どういう意味なんだ?というところから進めていこうかと思います。いかにして立ち上げて今に至るのか。日本の地ではおよそ得策ではない(売れない)とまで言われるメーカーを愛するのか。
そんな少し尖った視点からお伝えできればと思いますのでお付き合いください。
12年ぶりの日本再参入。オンライン直販だからこそ見えた「クラブの必要性」
ヒョンデが日本で乗用車事業を始めたのは2001年でした。全国の協力事業者と販売・修理網を築き、累計約1万5000台をお届けしましたが、2009年に乗用車の販売を終了します。その後も約600台のオーナーは、全国の拠点での点検に支えられ、ヒョンデとの縁をつないできました。そして2022年2月、約12年ぶりにEVとFCVに特化して日本市場への再参入を発表します。ZEV(ゼロエミッション車)専業という大胆な舵切りに加え、売り方も大きく変えての再出発でした。その売り方こそが、私たちがオーナーズクラブの必要性を考える出発点になったのです。
再挑戦にあたり、ヒョンデは直販システムを採用しました。当時の日本ではテスラしか行っていなかった、いわゆるディーラーを置かない販売形態です。これには「全国どこで買っても値段が変わらない」「ネット完結で買える」「ディーラーマージンがないため車両価格が抑えられる」といった大きなメリットがあります。
一方でデメリットとしては、「実店舗数が限られる」「情報がネットに偏りがちになる」「実車を見たり試乗する機会の喪失」などが挙げられます。このデメリットのほとんどは、購入者の「不安」に直結します。店舗が少ないことは整備拠点の少なさに直結し、メーカーそのものに触れる機会の喪失は、ある意味で非常にリスキーな選択とも言えます。
SDVと圧倒的な技術力。巨大メーカーが日本で直面した「足りないもの」
少し時系列を巻き戻しますが、私が再挑戦の情報を知ったのは2022年2月のプレスリリースでした。ヒョンデの日本再挑戦には驚くとともに、強い安心感もありました。同社が自社の「強み」をよく分かっていると感じたからです。これからの自動車は、ハード以上にソフトが価値を左右する時代(SDV=ソフトウェア定義車両)になります。同社は設備投資と研究開発に巨額を投じ、そこには次世代のコア技術もしっかりと含まれています。さらに韓国には世界有数のバッテリーメーカーが揃っており、強固なサプライチェーンを持っています。次世代自動車に不可欠な技術を自社と自国でそろえたうえでの日本再参入。この準備の厚みは決定的な強みです。
メーカーとして、グローバルな視点で見れば足りないものは何もないかもしれません。現代自動車グループは世界第三位の規模を誇る素晴らしい企業です。けれど、そんな巨大メーカーでも、日本での知名度や「信頼」といった部分では、まだ足りていないものがありました。それが先ほどの「オンライン直販による不安」につながるのです。
それを補う存在として、私たちのHMCJがあります。前身のIOQ(IONIQ OWNERS QLUB)やIONIQ情報館(旧Twitterコミュニティ※1)は最初、情報が圧倒的に少なかったヒョンデについて、オーナー同士が情報を交換できる場にしたいと立ち上げました。ディーラーが無いからこその隙間を、私たちが埋める。メーカーとオーナー(予備軍を含め)をつなぐ「ハブ」となる。これが、私たちがHMCJを続けている最大の理由です。
JMS(ジャパンモビリティショー)の会場で、HMCJメンバーがヒョンデスタッフに混ざって来場者に車両の良いところや悪いところを説明していた光景がありました。これは非常に意義深いことです。単なるセールストークではなく、自ら購入し使ってみての「生の声」だからこそ、伝わるものがあるのです。
〈JMS画像〉
楽しむだけじゃない。EVキャンプやJMSで社会とつながる模範的コミュニティへ
私たちは、単に「楽しいだけの集まり」で終わらないことも大切にしています。たとえば、私たちが関わる「EV SUMMER CAMP」は、キャンプを楽しむ場でありながら、EVを防災にも活かすための学びの場でもあります。総参加台数は114台を数えました。楽しいから人が集まり、集まるからこそ社会の役に立てる。クラブの意義はそこにあると考えています。
韓国本国との交流が教えてくれたこと。オーナーが「ハブ」になる楽しさ
JMSのような機会に、よりヒョンデのことを正しく楽しく知ってもらい、またそれを他者へ伝えられるように、HMCJメンバーには韓国へ行く機会があります。世界第三位のメーカーの本社本国がどのように考え、グローバルで展開しているのか。こういったことにリアルに触れてもらうためにヒョンデ韓国本社、及びヒョンデ日本本社のバックアップのもと行われています。先日も15名ほどで韓国へ行ってきました。最新の整備拠点である水原ハイテクセンター、ヒョンデ牙山(アサン)工場、現代製鉄 唐津製鉄所、など一般公開されていない施設を見学してきました。
また、本国で活動しているHMCK(※2)との交流も行われます。HMCKはオーナーズクラブとしての活動はもちろんですが、自身でレーシングチームを運営しておりレース活動を通じてモータースポーツ文化の醸成に貢献しています。またボランティア活動なども盛んにおこなわれており、地域貢献を通じて単なる車好きの集まりではなく、自動車文化を通じて社会とともに成長する模範的なファンダムモデルとして位置づけられています。我々、HMCJとの交流も2024年から始まり、昨年はHMCJ正式発足に合わせてキム会長も二度目の来日をし、ともに祝ってもらいました。
「あらゆることに共感し、それを日本でも行いたい」。その思いで、韓国本国外では初の公式組織としてHMCJを発足させました。東京とソウル、対馬と釜山。まさに隣国でありながら色々と取りざたされる両国の関係ですが、私たちのこうした交流が関係改善の一助になれば、という個人的な想いもあったりします。
私が初めてキム会長にお会いし非常に感銘を受けたのは、単なる自動車好きのオーナー組織を超えた存在であったこと。そしてそれが伝わり同調する人が12万人(2026.8現在は13万人超)を超えていたこと。さらに全世界で100万人を目指したいと仰ったこと。あらゆることに共感し、それを日本でも行いたい。しかし当時は韓国本国のみでしか活動は行われておらず、非常に良い活動であるのにもったいない。100万人は夢物語ではないがそのためにはグローバル展開が必須だ。そう思い発足させたのです。しかも最初のグローバル展開が日本というのも意義深いものだと思っています。東京ーソウルは約1200㎞、最短距離の対馬ー釜山はなんと約50㎞とまさに隣国ですが色々と取りざたされる両国関係。それを交流によって関係改善のための一助となれば、などという想いもあったりします。
話を戻しますが、韓国視察に行くというのはこれまで書いたこと、私が体験したこと、ヒョンデのすべてに触れてそれを日本で、とりわけヒョンデオーナーへ広めてほしい。まさにオーナーとメーカーをつなぐ架け橋になってほしい。そういった思いがあります。結果としてそれが未来のオーナーへ繋がる。それがHMCJが存在する意味であり、やるべきことであると感じています。
日本では売れないと言われるメーカーを、なぜ愛するのか。その答えは、売れるかどうかではなく、良さを知った者がメーカーとオーナーをつなぐ側に回れる楽しさと意義があるからです。収まるところはやはり「いつも通り」、HMCJは【Becoming a hub connecting owners and manufacturers】であり続けます。
【HMCJ(Hyundai Motor Club JAPAN)】 ヒョンデ車オーナーを中心に、メーカーとオーナーをつなぐ架け橋を目指す日本のオーナーズクラブ。韓国本国のHyundai Motor Clubの海外初の公式組織として、2025年4月にIOQより名称変更、同年8月正式発足。オフ会などイベントの情報やお知らせを発信しております。
(公式サイト:hyundai-motor-club.jp)
脚注
※1:現在はX上にあるHYUNDAI情報館へと名称変更
※2:Hyundai Motor Clubは会員数13万人を誇る本国組織。正式名称はHyundai Motor Club(HMC)だがここでは日本組織HMCJと区別の為KOREAのKをつけて表記した。
辻榮亮(つじえりょう):Hyundai Motor Club JAPAN 会長。
2014年、日産eNV200よりEVライフをスタート。初代、2台目のリーフ、2022年より現在のIONIQ5に乗る。一般社団法人 電動車両推進サポート協会代表理事も務めながらEVに特化した防災士として平時有事を問わないEVのフェーズフリーな使い方を伝えている。


























