PHEVはBYDの切り札となるか
それでは、今回のAtto 2 DM-iが欧州でどれほどの競争力を実現しているのかを、とくにトヨタのPHEVと比較しましょう。まず、トヨタはプリウスとCH-Rに対してPHEVを設定しています。どちらも13.6kWhのバッテリー容量を搭載しながら、熱効率41%を実現するPHEVエンジンを搭載することで、EV航続距離はプリウスが86km、CH-Rも66kmを確保。対するAtto 2の場合は最大18kWhというバッテリーを搭載して、最大90kmというより長いEV航続距離を確保しています。

また、Atto 2もトヨタも急速充電には非対応です。おそらくコンパクトモデルとして急速充電に対応させるよりも、バッテリーシステムを簡素化するほうがコストメリットが大きいと判断したものと推測できるでしょう。
ここで注目するべきは車両重量です。Atto 2は18kWhのLFPバッテリーを搭載して1620kgである一方で、CH-Rは13.6kWhバッテリーを搭載して1645kgと、車両重量でCH-Rよりも軽量化を実現できているのです。

そして、最大の注目は値段設定でしょう。Atto 2 DM-iはエントリーグレードが2万7490ユーロ、上級グレードでも3万490ユーロを実現。
これは、CH-R PHEVと比較しても、なんと日本円で約300万円という値段差がついています。しかもCH-Rのエントリーグレードである1.8リッターハイブリッドモデルの3万5980ユーロと比較しても安価な値段設定であり、トヨタのハイブリッドモデルよりも安い価格設定としたことで、まさにBYDがハイブリッド車のシェアを奪おうとしてきている様子が見て取れます。追加関税が課されないPHEVでは、BYDの強烈なコスト競争力を容易にイメージできるでしょう。
欧州ではすでにミッドサイズSUVとして日本国内にも投入されているシーライオン6 DM-iが非常に好調です。そのシーライオン6よりも欧州で人気のコンパクトとくれば、Atto 2 DM-iがさらなる成功を収めることにも期待できます。

さらにBYDは、欧州にドルフィンGを投入する予定です。ドルフィンGはドルフィンサーフとドルフィンの間のセグメントを埋める全長4000mm級のPHEVです。Atto 2よりもさらに小型な、BYD最小のPHEVとなる見通しであり、Atto 2 DM-iよりもさらに安価な値段設定、つまり約2万5000ユーロという値段設定が期待されています。
これらのBYDの海外専用のPHEVモデルについては、日本市場でも存在感を示せるかもしれません。Atto 2 DM-iはトヨタ・カローラクロスや日産キックスなどと直接の競合となり、ドルフィンGは、日産ノートやホンダ・フィットなどと直接の競合となり得ます。これらの車種は日本メーカーの売れ筋モデルとして販売ボリュームが非常に大きく、ここにPHEVを投入できると、そのコスト競争力の高さによってBYDの販売ボリューム増加にも期待可能だからです。
はたして欧州に投入されていくAtto 2 DM-iやドルフィンGといった、これまでの既存自動車メーカーたちがまったく手をつけられていなかったコンパクトセグメントのPHEVというカテゴリーで、BYDがどれほどの成功を収めることができるのか。欧州域内でも間違いなく現地生産されていくBYDの切り札的PHEVは、日本導入にも期待しながら注目です。


















































