電解液にも負荷がかかる
そして急速充電は、電解液にも悪影響を及ぼす。大きな電流で電気を受け入れると、電極の電圧が急激に高まるため、電解液に負荷がかかり、分解反応を生じる懸念がある。そして、リチウムイオンの電極への出入りが制約を受け、性能を落とす。
以上の影響は、一度起こると元へは戻れない。つまり、劣化が進むだけということだ。
劣化には、温度も関係する。
劣化の要因となる化学反応は、温度が10℃高くなると反応速度は2倍になるとされ、急速充電では高電圧・大電流を用いることで高温になりがちで、劣化を進める化学反応が何倍も高まる懸念を否めない。
まとめると、急速充電は電池の寿命に深く関係し、急速充電すればするほど劣化が進む。理由は、リチウムイオンの移動が速くなり、結晶構造がより脆くなるからだ。
リチウムイオンバッテリーにとって最適な温度は、一般に人間が快適に暮らせる気温に通じるといわれている。具体的には、使用温度が4~46℃が適切との解説がある。
科学的検証は別として、急速充電を人間にたとえると、早食い競争は稀にするならいいかもしれないが、毎食早食いをしていたら、胃腸を壊してしまうだろう。食事は、よく噛んでゆっくり食べるのが健康によいといわれ、充電でいえばそれは普通充電だ。
また、よく噛んで食事をすれば、腹八分目で適度な満腹感が得られるといわれるが、リチウムイオンバッテリーも80%を目安に普通充電を基本とすれば、健康で長持ちするといえるのではないか。
また、人間も猛暑の炎天下で運動すれば熱中症の懸念が高まる。健康を保つには配慮が必要で、適切な冷房と水分が不可欠になるのと同じように、急速充電をするなら、冷却機能を備え、適切な温度管理をすることが求められる。
いわば、リチウムイオンバッテリーの扱いは生き物的であり、人にやさしい処置と同様の配慮が必要だということだ。そしてEVの使用環境が許されるなら、普通充電を基本とするのが望ましい。
つまり、充電の社会基盤は、急速充電より普通充電を優先し、集合住宅や月極駐車場に問題なく、当たり前にコンセントを設置できる社会への意識改革が、喫緊の課題なのである。
それには、単に補助金政策だけでなく、法令や行政指導など、政治や行政を通じた制度改革への支援が不可欠だ。また、報道媒体も、知ったかぶりの記事ではなく、本質を見誤らない解釈を広める努力が求められる。
御堀直嗣










































