先進安全機能に悪影響を及ぼす改造はご法度
OTAとはOver The Airの略称で、無線通信による車載制御プログラムのアップデートを自動的に行う機能。この普及において欠かせないのが外部からの侵入を防ぐセキュリティであり、そうしたセキュリティを突破して制御プログラムを書き換えることは困難になるだろう。仮にサードパーティ製チューニングプログラムへの書き換えができたとしても、OTAによって制御プログラムが書き換えされると上書きされて純正プログラムへ戻ってしまうことも考えられる。
一方、最近よく目にするSDV(ソフトウェア定義車両)においては、単純に基本機能をアップデートするだけでなく、ユーザーの好みに応じたカスタマイズも考慮している。たとえば、メーターデザインを有料販売するといったビジネスモデルが想定される。そうしたビジネスにおいて、オーナーの走りに合わせたパワー制御プログラムの販売を考慮しているメーカーもあるようだ。安全性を担保しつつ、カスタマイズが楽しめるような、ソフトウェア変更というのはあり得そうだ。
フットワーク系チューニングとしては、ブレーキパッドやローターの交換、ショックアブソーバーやスプリングなど、サスペンションの高性能化といったカスタマイズが知られている。
こうした要素についてはEVについても対応できそうだが、いくつか注意すべき課題はありそうだ。
ブレーキについていえば、高性能なEVになるほど駆動モーターによる回生ブレーキが強くなっており、従来のメカブレーキと協調制御が行われている。場合によってはブレーキパッド交換などでメカブレーキの性能を変えてしまうことで協調制御のバランスを崩してしまうことも考えられる。
とはいえ、ハイパフォーマンスEVはゆうに2トンを超えるような超重量級となっていることが多く、メカブレーキの性能アップはプラスに働くことも期待できる。このあたり、ケースバイケースなので車種ごとにノウハウをもつプロショップの知見を聞きながらチューニングを進めていくとよさそうだ。
サスペンションについては、先進安全機能とのマッチングを考慮することが重要だ。高性能なADAS(先進運転支援システム)になるほどセンサー位置が想定範囲からズレてしまうことに敏感だからだ。車高ダウンによって前方監視カメラの地上高が下がってしまうと検知範囲が狭くなってしまうため、先進安全機能が想定どおりに働かず、エラーが出てしまうこともある。エアロパーツの装着によりレーダーの性能が発揮できなくなるようなカスタマイズも同様だ。
これはEVに限らず、ADASを搭載しているクルマ全般にいえることだが、先進安全機能を支えるセンサーの機能を損ねたり、AEB(衝突被害軽減ブレーキ)の性能に悪影響を及ぼしたりするような改造はご法度というのが現在のチューニングにおける常識といえるだろう。