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日本でもテスト車両が目撃されている
ただし、唯一残念なポイントが、搭載バッテリーの種類です。インスターには三元系バッテリーが搭載されており、耐久性に強みを持つLFPではありません。今回の40-50kWh程度というコンパクトなバッテリー容量の場合、充放電回数が増えてしまうことによって、相対的なバッテリー劣化速度は早まるわけです。
小型EVにおいて重要なコスト抑制という観点とともに、耐久性に強みをもつLFPとの相性がいいものの、おそらくインスターは車両サイズが小さすぎることによって、最大49kWhのバッテリーパックを搭載するためには、LFPではエネルギー密度が足りなかったのではないかと推測可能です。いずれにしても、インスターのバッテリーの耐久性、そしてコスト競争力は懸念点といえるでしょう。
もっとも注目するべき値段設定については、まだ正式公表はされていないものの、欧州において概ね2万5000ユーロから発売される公算です。現在の記録的な円安によって、日本円換算で430万円と高額であるように見えながら、欧州市場においてはかなり競争力の高い値段設定となります。
実際に2.5万ユーロ以下で発売されているEVというと、ダチアSpringくらいしか存在しません。また、2.5万ユーロからとして、ルノー5、およびその兄弟車の日産マイクラEVが2024年後半にラインアップされることから、これらのEVたちと競合することになります。
そして、インスターについては、じつは我々日本市場でもすでにテスト車両が複数目撃されていることから、まず間違いなく日本にも導入される見込みです。果たして2025年早々に導入見込みのインスターが、競合のコンパクトEVと比較してどれほどの競争力を有しているのかを、BYDドルフィン、日産サクラ、およびホンダのN-VAN e:などと比較していきましょう。
まずはじめにインスターは、サクラやN-VAN e:のような軽自動車よりもわずかに大きいようなサイズ感です。それにもかかわらず、ホンダN-VAN e:よりも1.5倍近い大容量バッテリーを搭載。じつは、N-VAN e:は商用車として購入するユーザーだけではなく、車中泊などの新たな使い方として、一般ユーザーが購入を検討しているケースが多数存在します。よって、バッテリー容量がさらに大きく、なおかつ車内コンセント搭載、フロントシートまでもフルフラット化が可能なインスターについては、かなり競合となり得るわけです。
他方でBYDドルフィンは、車両サイズとしてはふたまわりほど大きいものの、同じようなバッテリーサイズを搭載しながら、日本国内で363万円で発売中。したがって、今回のインスターは、少なくともドルフィンをさらに下まわるような値段設定で発売することが必須でしょう。
また、N-VAN e:の4人乗りバージョンの値段設定などを考慮すると、おそらく日本国内では、補助金を含めて300万円という値段設定がひとつの基準になると推測できそうです。
このように、ヒョンデが2025年早々にも日本国内に導入見込みの小型EVインスターは、最大49kWhというゆとりの容量を搭載しながら、フロントシートもフルフラット化可能、車内コンセントも搭載するなど、短距離専用のシティカーとしてだけではなく、中長距離にも対応可能な性能を実現してきています。
また、インスターの派生モデルとして、よりアウトドアに特化したインスタークロスもラインアップ予定です。ボルボがEX30における派生モデルとして、EX30のオフロードバージョンもラインアップする流れと同様であり、このインスタークロスの最新動向にも注目が集まりそうです。
他方で、軽自動車に近しいサイズ感とはいっても、やはり軽自動車ではないことから、その税制優遇などを受けることはできません。するとEV補助金も、軽EVに対する55万円ではなく、ヒョンデ向けの35万円が適用されることになり、日本国内におけるコスト競争力ではまだまだ不透明な部分が残ります。
果たして、今回コストパフォーマンスの基準として設定した300万円という値段設定を、ヒョンデジャパンがクリアすることができるのか。最新情報がわかり次第情報をアップデートしていきたいと思います。