軽自動車より360mmも短いのに4人乗り! フィアット「ムルティプリーナ」など、広がるコンパクトEVの世界
日々の買い物や子どもの送迎など、私たちが日常でクルマを使うシーンの多くは「近所への短い移動」です。そんな等身大の毎日にぴったり寄り添ってくれそうな、とても魅力的な1台がフィアットから発表されました。先日パリモーターショーでお披露目されたばかりの新型EVコンセプト、「ムルティプリーナ(Multiplina)」です。これまでの超小型モビリティの常識を少しだけ広げてくれる、イタリアらしい愛嬌と賢さに満ちたこのクルマの魅力をご紹介します。
軽自動車よりもコンパクト。たった3.04mの空間に4人が乗れる驚きのパッケージ
ムルティプリーナの最大の特徴は、その驚異的なサイズ感にあります。ボディサイズは全長3.04m、全幅1.40m、全高1.53m。日本の軽自動車の規格(全長3.40m以下、全幅1.48m以下)と比べても、長さで360mm、幅で80mmもコンパクトに収まっています。ヨーロッパでは「L7e(重四輪車)」というカテゴリーに分類される超小型のEVです。
驚くべきは、この小さなボディの中にしっかりと「4人分」のシートを収めていること。バッテリーを床下に配置するEVならではの強みを活かし、無駄を極限まで削ぎ落とすことで、信じられないほどの空間効率を実現しています。住宅街の狭い路地でのすれ違いや、スーパーの窮屈な駐車場でも、このサイズならストレスフリーで動けそうです。
毎日の「ちょっとそこまで」に寄り添う、新しいカテゴリーのEV
フィアットにはすでに「トポリーノ」という人気の超小型EVがありますが、あちらは2人乗りです。一人や夫婦での移動には十分ですが、「子どもを後ろに乗せて学校や習い事へ送りたい」「たまには家族3〜4人で近所へ食事に行きたい」というシーンでは、少し物足りなさがありました。ムルティプリーナは、まさにその「2人乗りのトポリーノ」と「一般的な乗用車(コンパクトカー)」の間にある隙間を埋めるために生まれました。
フィアット自身が「マルチ・パーパス・クアドリサイクル(多目的四輪車)」と呼ぶように、大げさな航続距離や立派なボディサイズは持たずとも、私たちの日常生活に必要な「4人が乗れる実用性」だけをしっかりと確保しています。
1956年の名車「600 ムルティプラ」の思想を受け継ぐ、ミニマルな豊かさ
このユニークなクルマのインスピレーションの源となっているのは、1956年に誕生した歴史的名車「フィアット 600 ムルティプラ」です。わずか3.5mの車体に6人を乗せるという、当時としては魔法のようなパッケージングで人々を驚かせた天才的なモデルでした。今回のムルティプリーナは、単に過去のデザインを懐かしむレトロカーではありません。「最小限の寸法で、最大限の空間と使い勝手を生み出す」という、フィアットが昔から得意としてきた人中心の哲学を、現代のEVとして再解釈したものです。コンパクトで軽く、必要なだけの空間を持つムルティプリーナは、製造時の資源も走るための電気も少なくて済みます。
ルノー 5、トゥインゴ、スズキ e SKY。広がる選択肢でEVライフはもっと楽しくなる
こうした「小さくて賢いEV」のアプローチは、いま世界的なトレンドになりつつあります。先日日本での発売が発表されたばかりの「ルノー 5(サンク)」や、今後登場が期待される次期型「トゥインゴ」。さらには、日本の軽自動車規格のど真ん中をいくスズキの新型軽EV「e SKY(イースカイ)」など、日常の足として活躍するコンパクトEVの選択肢が、驚くほどのスピードで充実してきています。
これまでは「EVといえばこれ」という限られたモデルの中から選ぶ状況でしたが、これからは自分のライフスタイルや住んでいる街の環境に合わせて、個性的で扱いやすいスモールEVを自由に選べる時代です。
「より少ないもので、より多くのことをする」。そんな持続可能な社会にふさわしい豊かさの形を提案するムルティプリーナをはじめ、続々と登場する魅力的なコンパクトEVたち。選択肢がどんどん広がっていくこれからのEVライフは、間違いなくもっと楽しく、彩り豊かなものになっていくはずです。






























