日本でテスラの勢いが止まらない
日産が15年守ってきた国内EV販売トップの座がテスラに脅かされている。世界全体ではテスラ減速のニュースが目立つ一方で、日本市場ではむしろ売れ行きを伸ばしているという対照的な現象が起きているのである。なぜそのような状況になっているのか。
<日本のEV市場でなにが起きているのか>
日本全体のEV市場は2024年に前年比3割以上縮小し、新車販売に占めるEV比率も2%弱と、主要国のなかで最低レベルにとどまっているといわれる。つまり「日本はEVがそもそも伸びていない市場」というのが大前提なのである。そのなかで、テスラは2025年に入って販売台数を大きく伸ばしている。JAIA(日本自動車輸入組合)の輸入車統計によると、個別ブランド名が記載されていない「Others」として集計されている乗用車はテスラが大部分を占めると考えられ、テスラは1~10月で9200台弱と推定され、前年の約4400台から倍増という勢いを見せている。

これまで国内EVトップブランドだった日産は、2010年のリーフ発売以降、輸入EVを除く国内純EV販売で15年連続トップの座を守ってきた。とくに軽EVのサクラが2022年の登場以来、月間数千台を記録し、EV普及の立役者でもあった。しかし、2025年は様相が一変。全国軽自動車協会連合会によると日産サクラの2025年10月の販売台数は704台と前月(9月)の1432台から49.2%減、前年同月の1448台から48.6%減となっている。一方、テスラの10月の販売台数は約1118台(JAIA)で、これは前年10月の340台から大幅に増加していると推定される。つまり、日本市場におけるテスラの販売が著しく拡大していることを示しているのだ。

日産の苦戦要因は、新モデル投入の遅れだ。サクラは3年経過で魅力的な更新が少なく、値上げにより競合ハイブリッド車に流れた。リーフも新型が秋以降にずれ込み、アリアの高価格が足枷となっている。
<世界不振のなかで日本だけテスラが伸びる理由>
グローバルに目を向けてみると、米調査会社のVisible Alphaは、テスラの2025年世界販売は前年から約7%減少する見通しで、2024年の1%減に続いて2年連続のマイナス成長としている。欧州では2025年の販売が前年同期比で3割減、ある月には登録台数が約5割減という報道もあり、競合EVとの競争激化やイーロン・マスクCEOの言動リスクなどがネガティブ要因として語られている状況だ。

それにもかかわらず日本でテスラが売れている背景には、いくつかの要因が重なっている。第一に、モデル3やモデルYの値下げキャンペーンを繰り返してきた結果、日本のEV補助金の施策もあり「輸入高級EV」から「国産ミドルクラス車と競合する現実的な選択肢」へと価格イメージが変わったことが挙げられる。テスラは中国で製造されたモデル3の導入以降、バッテリー仕様の見直しや為替動向を踏まえた攻めの価格調整を続けており、2025年も在庫車に対する59万円のディスカウントキャンペーンなど、タイミングを絞った値引き施策で需要を下支えしている。

第二に、海外ブランドのEVが日本にほとんど入ってこないなかで、「まともな価格と性能を両立した本格EV」としてテスラの相対的な存在感が際立っている点も大きい。日本メーカーのEVは軽EVの「サクラ」や「eKクロスEV」など、税制優遇と価格の安さで一定の支持を得る一方、リーフやbZ4Xなど、普通車クラスは販売が落ち込み、2025年の四半期ベースではテスラ1社の推定販売台数が日本勢EV合計を上まわったとの分析も出ている。




















































