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中国市場はまだまだEV化の流れが止まらなかった! 内燃機関からPHEVを介してEVシフトするシナリオの中身


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
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BYD・ファーウェイ・シャオミによる内燃機関車からの解放戦

それでは、この中国市場における展望について、バッテリーEVの停滞が続くのか、そして既存メーカーのさらなる苦悩というふたつの観点から考察していきたいと思います。

まず初めに、バッテリーEVの停滞が続くのかという観点について、結論から申し上げると、シェア率についてはもう少し上昇するものの、概ね30%程度で足踏みをする可能性が高いと推測しています。

というのも、まず大前提としてバッテリーEVの販売台数自体は4月以降大きく上昇するポテンシャルを秘めています。なかでも大きなポテンシャルを秘めていると考えられるのが、プレミアムセダンセグメントです。

中国市場における高級セダンの週間保険登録台数のグラフ

このグラフは、モデル3を筆頭として、Avatr 12、Luxeed S7、Zeekr 007、そしてシャオミSU7といった、プレミアムセダンEVの週間登録台数の変遷を示したものです。とくに最直近のデータである4月1日からの週に関しては、モデル3が登録台数を大きく落とすなか、ファーウェイのLuxeed S7とシャオミSU7がどちらも1000台以上を実現しています。

S7に関しては、これまで生産を委託するCheryの生産体制の制約の問題、並びにS7に採用されているADAS用のチップであるMDC-810の供給不足によって、大幅に生産台数が制限されていたという背景が存在します。4月以降は生産の制約が解消されたことで急速に販売台数を伸ばすでしょう。

Luxeed S7のフロントスタイリング

※Luxeed S7

いずれにしても、ファーウェイとシャオミというスマホの巨人のEVたちの存在によって、とくに競合となる、ドイツ御三家の3シリーズ、A4、Cクラスという内燃機関車の販売台数を大きく奪う可能性があるわけです。

次に、既存メーカーのさらなる苦悩という観点として、やはりなんといっても、BYDによる極限のプレッシャーという観点を指摘せざるを得ません。

中国市場における大衆セダンの週間保険登録台数のグラフ

このグラフは、大衆セダンセグメントの週間登録台数の変遷を示したものです。現在Qin PlusとDestroyer 05の存在によって、日産シルフィやトヨタ・カローラ、ホンダ・シビック、フォルクスワーゲン・ラヴィダなどの既存メーカーの内燃機関車の販売台数がまったく戻ってきていません。BYDの生産体制が増強された暁には、さらにその差が広がることは確定的でしょう。すでに大衆セダンセグメントについては、BYDの手に落ちたといっても過言ではありません。

中国市場におけるコンパクトSUVの週間保険登録台数のグラフ

さらに、この流れは大衆SUVセグメントにも波及中です。BYDのSong Plus、Song Pro、Yuan Plusという強力なEVたちの存在によって、トヨタ・カローラクロスやRAV4、ホンダCR-Vといった内燃機関車の販売規模が戻ってきていない様子が見て取れます。

よって、既存メーカーの販売台数の稼ぎどころでもあった大衆セグメントの内燃機関車が、この4月以降も販売台数を回復できず、これまでとは異なる、より一層の販売台数減少というリスクに直面する可能性が高いわけです。

したがって、その内燃機関車からの解放戦の真っ最中であるBYDに関しては、まずは既存メーカーの内燃機関車のシェアを奪うために、Honor Editionによる大幅値下げによって、内燃機関車と同等の値段にまで引き下げることで、PHEVへの転換を促して、その効果が現れ始めているわけです。

こうなると、バッテリーEVの普及スピードよりも早く、BYDのPHEVがシェアを伸ばすことによって、現在のトレンドである、PHEVのシェア上昇トレンドが1年ほどは持続するものと見られます。

ただし、2025年中旬を境にバッテリーEVがもう1段階巻き返しを図るとも推測しています。具体的には、

・中国EV市場の話題の中心であるシャオミ、そしてファーウェイについては、SU7やS7の生産能力の増強を完了させているタイミングであるということ
・BYDに関しては、2024年後半にも第二世代のBlade Battery、および次世代EVプラットフォームであるe-platform4.0を発表見込み。EV性能が飛躍的に向上することで、PHEVからのリプレイスが進み始めるのではないかということ
・NIOとXpengの大衆車ブランドが2024年後半にも発売をスタート、その生産能力が増しているのが、2025年前半ごろになる見込みであるということ

したがって、これらの動向から、今年である2024年シーズンについては、BYDによる内燃機関車からの解放戦によって、まずは内燃機関車からPHEVへの置き換えが急速に進み、とくにPHEVの躍進がフォーカスされる一年となる見込みです。

一方で、2025年中盤以降については、その内燃機関車からの解放戦に加えて、今度はPHEVも含めた解放戦が幕を開けるわけです。とくにBYDだけでなく、ファーウェイとシャオミ、そして中国EVスタートアップたちによる大衆ブランドの生産体制が大幅拡充されることで、2025年後半からは、バッテリーEVがこれまでにはない躍進を見せ始めるのではないかと推測できるのです。

シャオミSu7の集合カット

※納車がスタートしているシャオミSU7は、すでに10万台以上のバックオーダーを抱えています

いずれにしても、この3月の中国EVシフト動向については、歴史上最高の新エネルギー車の販売シェア率を更新しながら、なんといってもそれをリードしているのが、中国BYDのHonor Editionによる内燃機関車からの解放戦です。さらにファーウェイとシャオミに関しても、4月からの週間登録台数において登録台数が急増し始めています。

そしていよいよ、日本メーカーを筆頭とする既存メーカーたちの内燃機関車が、明確に販売ペースを落とし、その販売ペースが戻らなくなり始めている状況であり、内燃機関車からの解放戦が不可逆的なものとなり始めている様子が見て取れます。

この中国市場における不可逆的なEVシフトがどのように推移していくのか。4月末の北京オートショーにおいて発表された、さらなる新型EVの動向についても含めながら、最新動向をウォッチする必要があるでしょう。

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