コラム 記事一覧

コラム コラム
TEXT:高橋 優
アメリカの関税で苦しみ中国市場で困難極まるマツダはどうなる? EVの欧州展開で活路は見いだせるか

マツダは新モデル投入で中国市場での大逆転を狙う 中国市場における生き残りを賭けた最後の戦いとして、マツダがミッドサイズSUVであるEZ-60を9月までにローンチしながら、EZ-6の海外展開の最新動向を含めて解説します。 まず、中国市場におけるマツダについて、このグラフは2025年6月までの車種別、および全体の販売台数の変遷を示したものです。2025年上半期の販売台数は2万7646台と、前年同月比ー24.8%という大幅な販売落ち込みを記録しています。とくに6月単体の販売台数の変遷を見ると、2020年6月の1.25万台から毎年販売台数が減少。2025年6月は5000台を割り込み、販売規模は半減以下という状況です。とくに、Changanマツダの車両生産工場の稼働率は低迷しているはずであることから、収益性を含めて、マツダが中国市場でノックアウト寸前である様子が見て取れるのです。 車種別の内訳を見ると、とくに売れ筋モデルだったマツダ3の低迷が著しいです。これはコンパクトセグメントに、BYDドルフィンやシーガル、ジーリーXingyuanなどという超強力なEVが矢継ぎ早に投入されてしまったことが要因でしょう。その一方で、CX-5は月間2000〜3000台級ともち堪えているようにも見えます。 そしてマツダは、新型EVを矢継ぎ早に投入する方針を表明。まず、2024年11月から納車がスタートしているのがEZ-6というミッドサイズセダンです。合弁先のChanganのEV専門ブランドDeepalから発売されている、SL03というミッドサイズセダンEVのOEM供給車として設計開発されています。EZ-6で注目するべきはBEVとともに需要が増えているEREVを両方ラインアップしてきたという点です。 他方で、このグラフはマツダのEV販売台数の変遷を示したものです。コンプライアンスカーだったCX-30 EVと比較すると一定の販売台数を達成しているものの、直近の6月単体の販売台数はたったの678台と、発売開始1年未満にもかかわらず落ち目を迎えています。 そして、このマツダに関する新たな動向として、EZ-6を欧州市場をはじめとする海外マーケットに輸出するという点が挙げられます。すでに6月から欧州の主要マーケットでは受注受付がスタートしています。欧州市場ではマツダ6eと名付けられ、全長4921mm、全幅1890mm、全高1485mm、ホイールベースが2895mmというミッドサイズセダンです。 6eは、後輪側にモーターを搭載するRWDグレードのみをラインアップしながら、68.8kWhと80kWhという2種類のバッテリー容量をラインアップ。TAKUMIグレードとともに、ナッパレザーシートや開閉式サンルーフなどを搭載した上級グレードのTAKUMI+をそれぞれラインアップしています。航続距離は欧州WLTCモードにおいて最長552kmを確保。たとえば日本国内でも発売されている日産アリアB9が536kmであることから、アリアB9よりも長く走行できるとイメージしてみると、実用的な航続距離を確保しているといえます。 そして、今回注目するべきは急速充電性能です。航続距離552kmを確保する80kWhバッテリー搭載グレードの場合、最大90kWにしか対応せず、SOC10-80%で47分という充電時間を要します。その一方で、68.8kWhバッテリーでは、最大165kWという充電出力に対応、SOC80%まで24分で充電可能と、充電性能がまったく異なるのです。68.8kWhバッテリーはSL03にも採用されているLFPバッテリーであり急速充電性能が最適化されているものの、80kWhのほうは三元系バッテリーで充電スピードに対して非常に保守的です。とくに80kWhバッテリーは中国市場で採用されておらず、最適化という詰めが甘いように感じます。 また、ヒートポンプシステムやソニー製の14スピーカーシステム、64色のアンビエントライト、14.6インチのセンターディスプレイ、空力性能の最適化のための電動リヤウイングなどは標準搭載されています。

TAG: #EZ #MAZDA
TEXT:井元貴幸
EV路線バスは中国のBYDが全盛! 国産メーカーもあるのになぜBYDが選ばれるのか?

車両価格の差が大きい 国産各メーカーもさまざまなEVがリリースされている昨今、自家用車でEVをチョイスするユーザーが着々と増えている。しかし、充電環境や航続距離、使用するシーンが多様な個人ユースでは、EVへ買い換えたいユーザーでも足かせになってしまっているケースもあるのが実情だ。 しかし、公共交通機関である路線バスなら、決められたルートを決められた時間に走行するため、自家用車と比較するとバッテリーの消費などが事前に想定できるため、圧倒的に導入しやすい。また、オイル交換が不要になるなど、EVならではのメリットでもあるランニングコストの低減に加え、営業所などに充電ステーションを設置できることから、充電時間に縛られたり、スポットを探したりする手間などもなく、EVとの相性はいい。 最近では首都圏を中心にEVバスを導入する事業者も増えてきており、街なかで目にしたことがある人も多いのではないのだろうか。 国産メーカーではいすゞ自動車がエルガEVを、日野自動車がポンチョEVを生産しているが、導入されているのは中国製のBYD(比亜迪)が多い。なぜ国産ではなくBYDのバスが選ばれるのか? まずBYDは圧倒的に車両価格が安い。小型のJ6は1950万円、大型のK8でも3850万円と、国産のディーゼルバスとほぼ同価格で販売している。ちなみに国産の場合は大型の路線バスタイプのEVで6000万~1億円とも言われており、その差は歴然だ。それでも国内ユースでは、市場を知り尽くした国産メーカーの方が強いイメージがあるが、BYDのJ7は、日本向けにドアや座席数の変更が可能となっており、地域や事業者に合わせてカスタマイズが可能だ。 実際、路線バスはEVに限らず事業者により座席レイアウトをはじめさまざまな仕様があり、オーダーメイドの状態となっているのが国内路線バスの特徴でもある。その点BYDは、輸入車でありながらそうしたニーズにも応えている。 そして、導入の際にネックとなる営業所への充電ステーションの設置は、BYDの場合だとバスの導入と同時に行えるパッケージも用意されている点も、導入のハードルを下げている。 路線バスの世界では、EVはまだまだ都市部の導入にとどまり、主力はディーゼル車だ。もちろん都市部でも国産車が多く、ディーゼルハイブリッドやFCVといったモデルも混在している状況。しかし、ディーゼル車と同等の価格でEVバスを導入できるとなると、地方路線でも海外製のEVバスが走る日も近いのかもしれない。

TAG: #バス #路線バス
TEXT:山本晋也
ガソリン代 vs 電気代! ハイブリッド車とEVでどっちが安いのか比べてみた

FIAT600のEVとマイルドハイブリッドで比較 EVとエンジン車のランニングコストはどれほど違うのだろうか? これまでEVを所有したことがなく、EVへの乗り換えを検討しているユーザーにとっては気になるだろう。 EVが走るために使う電気には、ガソリン税のように自動車ユーザーを狙い撃つ税金がかかっていない。そのぶんだけEVユーザーの負担が少なくなる。それに対して、エンジン推しのユーザーからは、「ハイブリッドカーの効率は優れているから、ガソリン税を抜くとエンジン車のランニングコストが低くなるはず」という批判的な意見もあるようだ。 はたして、EVとエンジン車のランニングコストはまったく違うレベルなのか、それともガソリン税を考慮するとEVが有利になるのか。同じ車体でEVとエンジン車(マイルドハイブリッド)をラインアップするFIAT600から18インチタイヤを履く「ラ プリマ」グレードをサンプルにして、カタログスペックで比べてみよう。 まずは同じ距離を走るのに必要なコストから計算してみたい。 EVであるFIAT600eのバッテリー総電力量は54.06kWhで、WLTCモードでの一充電走行距離は493km。そしてWLTCモード電費は126Wh/kmとなっている。 ご存じのようにWLTCモード電費は、バッテリーを充電するのに消費した電力をベースに計算している。充電時のロスぶんだけ消費量は大きくなるが、ランニングコストとしてはこちらで計算するのが妥当だ。 一方、FIAT600 HYBRID(マイルドハイブリッド)のWLTCモード燃費は23.2km/L。燃料タンク容量は44リットルで、使用燃料はハイオクガソリンとなっている。 126Wh/kmと23.2km/Lでは、距離と消費したエネルギー(電気やガソリン)の関係が真逆の単位となっているので、燃費のほうをkmが分母にくるような単位に変えて比べてみるとわかりやすい。そして燃費の単位を逆さにすると、23.2km/Lは0.0431L/kmとなる。 つまり、FIAT600のEVとマイルドハイブリッドで比較したとき、それぞれ1kmを走るのに必要な電力は126Wh、燃料は0.0431リッターということだ。これをベースに、それぞれ燃料単価をかければ、日常的なランニングコスト差は明らかになるわけだ。 電気料金は、契約形態などによって変わるが、平均的には1kWhで31円として計算してみよう。ハイオクガソリンの価格も地域や店舗によって異なるが、ここでは1リッター180円という全国平均に近い数値を使いたい。

TAG: #エンジン車 #ランニングコスト
TEXT:琴條孝詩
充電したあと休憩できない! トイレが遠すぎる!! SA・PAの急速充電場所が不便すぎる問題はナゼ起こる?

出口付近に充電器を配置するSA・PAが多い 高速道路を利用するEVドライバーなら一度は経験があるのではないだろうか。充電のためにサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)に立ち寄ったとき、急速充電器の場所を探して右往左往することを。そして多くの場合、充電器は高速道路への出口付近、つまりSA・PA敷地のもっとも端っこに設置されている。 しかも、多くのSA・PAで充電器エリアから施設の建物まで歩いて3〜5分程度かかることも珍しくない。充電時間は通常30分だが、この間にトイレや食事、買い物を済ませたくても、充電器の場所次第ではまったく時間が足りず、中途半端に急がなければいけない。2025年度末までに急速充電器の充電口数を約1100口まで大幅に増設する計画が進行中だが、その配置場所についてはまだ改善の余地が大きいというのが現状である。 <出口付近配置がもたらす利用者の困惑> この配置の問題は、単に歩く距離が長いということだけではない。もっとも深刻なのは、充電エリアが満車の場合の対応である。多くのSA・PAでは、充電エリアへの進入路が一方通行になっており、一度入ってしまうと充電できない場合でもUターンして戻ることができない構造になっている。そのため、充電待ちができない場合、高速道路本線にそのまま戻るしかなく、トイレ休憩や食事のためにSA・PA内の一般駐車場を利用することができなくなってしまう。 とくに週末や連休のときには、充電器の数に対してEVの台数が多く、30分以上の待ち時間が発生することも珍しくない。このような状況で、充電もできず休憩もできずに次のSA・PAまで走り続けなければならないのは、ドライバーにとって大きなストレスとなっている。また、充電できたとしても、とくに高齢者や小さな子ども連れの家族にとっては、施設までの往復を考えると負担が大きい。

TAG: #SA・PA #充電器 #急速充電器
TEXT:御堀直嗣
どう考えてもエンジン車より高額なEV! 高い理由はバッテリーにあるってマジ?

バッテリーの原価は1kWhあたり1万6000円ほど 電気自動車(EV)の値段が高いのは、バッテリー原価のせいだといわれている。それはいまなお続いている。 では、いつになったらエンジン車と同等の価格に落ち着くのか? 米国の総合情報サービス会社であるブルームバーグの数値などを参考にすれば、初代リーフが発売された2010年当時、リチウムイオンバッテリーの原価は1kWh(キロ・ワット・アワー)あたり1000ドルといわれていた。円換算は、その時代の為替相場に負うため、日本円でいくらになるかを正確には表現しがたいが、当時は80円台から90円前後であったので、90円で計算すると、1kWhあたり約9万円になる。 初代リーフは、24 kWhのバッテリーを搭載したので、それだけで216万円になる。また、2009年に発売された三菱i-MiEVは、バッテリー容量16kWhの軽EVでありながら438万円(消費税抜き)と値付けされたが、それくらいの価格でないと採算が取れなかったであろう。 では、現在はというと、2024年の数字で1kWhあたり111ドルであり、現在の円相場は145円弱なので、1万6000円ほどだ。現行の2代目リーフの標準車は40kWhを搭載するので、64.3万円がバッテリーぶんと考えられる。 バッテリーの原価だけを見れば、15年を経て83%も値下がった一方、バッテリー搭載量が1.6倍に増えたことにより、車載のバッテリー原価の点では、70%減になる。 以上は、ざっくりとした試算であり、全体像を掴むうえでの数字を考えておいてほしい。 リチウムイオンバッテリーの価格は、初代リーフが発売されたころに比べ、大幅に安くなっている。 安くなった要因のひとつは、電極の材料価格が下がったことによる。ただし、ここは資源の話なので、需要と供給の様子によって一方的に下がっていくということにはならず、状況に応じて上下する可能性がある。 それから、バッテリーパック内にいかに効率よくセルを詰め込めるかというパッケージング技術の改善や向上も、バッテリー原価の低減に効いてくる。 そのうえで、いかに減価償却費を下げるかであり、それには大量生産という昔ながらの手法が求められる。それが、ギガファクトリーと呼ばれるような大規模工場の建設につながる。ただし、ただ工場を大型化すればよいわけではなく、その稼働率をいかに100%へもっていくか、采配が問われる。 あるバッテリー専門家によれば、「稼働率がバッテリーの値下げに不可欠だ」という。つまり、売れるEVを開発し、それを計画どおり売り切る販売戦略があってはじめて、バッテリー工場の稼働率を100%へもっていけるのである。

TAG: #リチウムイオンバッテリー #価格
TEXT:山本晋也
あっという間に充電できるフォーミュラEのピットブースト! じつはバカッ速充電は市販車でも可能な時代になっていた

日本と中国で進める次世代CHAdeMO は最大900kWを想定 東京での公道レースが話題となったフォーミュラEでは、2025年より「ピットブースト」なる要素が加わっている。その内容は、レース中に34秒間のピットストップを行い、その内の30秒間で600kWの急速充電を実施するというもの。 日本国内で普及しているCHAdeMO急速充電では最大150kW、テスラ・スーパーチャージャーでも最大250kWといった市販車向け急速充電の出力からすると、フォーミュラEのピットブーストが使う600kWという数字は”超・急速充電”と呼びたくなる。 当然、多くのEVユーザーは「このくらいの大出力で愛車を充電したら、どんなに便利になるだろう」と想像してしまうだろう。 机上の計算でいえば、150kWで30分かかる電力量を、600kWであれば7分半でバッテリーに送り込むことができるからだ。 しかしながら、それは夢物語ではない。じつは、フォーミュラEのピットブーストを超える大出力の急速充電規格は、すでにできあがっていたりする。 それが、日本の誇る急速充電規格CHAdeMOの第三世代となる『ChaoJi 』だ。 じつは現在のCHAdeMO(第二世代)でも、規格上は最大出力400kWが上限となっている。そして、第三世代CHAdeMOとして開発され、日中共通の急速充電規格となるChaoJiでは、最大900kW(1500V×600A)という超高出力が規格の上限となっているのだ。 現実的にいっても、最大500kW超の急速充電をChaoji は考慮している 。数字的にはフォーミュラEピットブーストと同等の急速充電を、誰もが利用できるための次世代規格といえる。 急速充電においてはバッテリーのみならず、充電ケーブルも発熱してしまう。その対策としてChaoJi ではケーブルやコネクタに液冷機能を備えることも規格として決めている。まさに超・急速充電のグローバルスタンダードとなり得る内容なのだ。

TAG: #ピットブースト #急速充電
TEXT:琴條孝詩
ホントにEVに乗り換えて大丈夫かな……不安なら確認! EVオーナーが語る買う前にチェックすべき3つのポイント

事前に確認すべき3つのチェック項目を解説 電気自動車(EV)への関心が高まるなか、SNSなどを覗くと多くのドライバーが「そろそろEVに乗り換えてみようかな」と考え始めているようだ。静かで滑らかな走行感や環境への配慮、そして燃料費の削減といったメリットが注目されているからだろう。しかし同時に、「充電が面倒なのではないか」「本当に不便を感じないだろうか」といった不安の声も聞こえてくる。 政府は、2030年までに30万口の充電インフラ設置をめざし、EVを取り巻く環境は急速に整備されつつある。がしかし、ガソリン(ICE)車とは根本的に異なる特性をもつEVでは、購入前の準備が快適なEVライフの鍵を握る。 ここでは、EV購入を検討する方々が後悔しないEVオーナーとなるために、事前に確認すべき重要な3つのチェック項目を解説していこう。これらのポイントをクリアできれば、EVは単なる移動手段を超え、あなたの生活に新たな価値をもたらす存在となるはずだ。 1)充電環境の確保がEV生活の成功を左右する EV生活の満足度を決定づけるのは、なによりも充電環境である。経済産業省の調べでは、2024年度末時点で整備されている充電器は約6.8万口(急速約1.2万口、普通約5.6万口)と着実に増加しているものの、ガソリンスタンドのように「どこにでもあって便利」とまではいえないのが現状だ。また、充電スポットの分布は都市部と地方で大きく異なり、地方や郊外ではまだまだ数が限られている。 まず最優先で検討すべきは自宅充電環境の整備である。戸建て住宅なら200V普通充電用コンセントの設置は比較的容易で、工事費用は10万円程度が相場だ。自宅に200Vの電源を引き込める駐車スペースがあれば、出力約3kWの充電器を使用した8〜12時間の充電で、航続距離100〜150km走行できる。1日の走行距離次第では、夜間にゆっくり充電でき、朝には満充電状態で出発できるのだ。これにより日中の充電スポット探しに悩まされることもなく、日常の使い勝手は格段に向上する。 マンションなどの集合住宅では、管理組合の承認が必要となるためハードルは高くなる。東京都では2025年4月に施行された条例により、新築マンションについては駐車台数の2割以上に充電設備設置が義務付けられるなど、環境整備は進んでいる。しかし、既存物件では、住民合意が必要となることが多く、月極駐車場の場合も設置の可否を事前に確認する必要がある。 自宅充電が困難な場合は、職場や商業施設、道の駅などの外出先充電スポットの把握が不可欠となる。充電スポットを検索できる無料専用アプリを活用して、よく利用する場所周辺の充電スポットを事前に調べておこう。急速充電器の場所や稼働状況、混雑具合も確認が必要だ。充電待ちの発生や充電器の故障なども想定し、複数の選択肢をもっておくことが重要だ。 長距離移動や旅行時には、事前に経路上の急速充電器の設置場所を調べ、充電計画を立てることが不可欠だ。充電サービスへの会員登録やアプリの利用もスムースな充電のためには必須となる。設置されてから10年以上が経つ充電器は、老朽化による故障が発生し始めており、行ってみたら故障で使えなかった、という事態に備えて代替手段の確保も考えておきたい。

TAG: #オーナー #新車購入
TEXT:御堀直嗣
何十年にも渡る日産の粘りが実を結ぶのはこれから! 「電気の日産」のEVヒストリーをみると偉大すぎる!!

1947年にたま電気自動車が登場 年内に、日産リーフがフルモデルチェンジする。これにより、リーフは3世代目の電気自動車(EV)となる。EVで、3世代に渡り歴史を積み上げるのは、世界でリーフだけであるという。 リーフは、2010年に初代が発売された。それから、15年目に入る。 三菱自動車工業は、リーフより1年前の2009年に軽自動車のi-MiEVを発売し、これが世界初の量産市販EVとなったが、i-MiEVは改良(マイナーチェンジ)を施しはしたものの、フルモデルチェンジによる世代の継続はなく、新たにeKクロスEVとして軽EVの価値を継承した。 リーフが3代目を迎えることも歴史的な出来事だが、日産自動車は、それ以前からもEVとのつながりの深い系譜を持つ。 1947年(昭和22)のたま電気自動車は、日産と合併する前のプリンス自動車工業の前身となる東京電気自動車が売り出したEVである。 第二次世界大戦から2年後の昭和22年当時は、まだガソリンなどが配給制であり、誰もが容易に手に入れられる時代ではなかった。そこで、戦時中は立川飛行機の技術者だった人たちが電気で走るEVを開発したのであった。 バッテリーは、クルマの補器を動かすために今日も用いられている鉛酸式であったが、床下のバッテリーを交換式として、利便性の確保につとめた。また、最高速度は時速35kmほどであったが、一充電航続距離は96kmを実現していた。日本に高速道路ができるのは、1963年の名神高速道路であり、その15年以上前の時代であれば、十分な走行性能を備えていたといえるのではないか。 そして、1966年に日産とプリンスは合併する。 次に、EV開発が本格化するのは、約50年後の1996年だ。旭化成の研究者であった吉野彰博士がリチウムイオンバッテリーの実用化にめどをつけ、1991年にソニーが実用化し、それをクルマに適用したのが日産のプレーリージョイEVである。そして、1997年に限定的に30台のリース販売を行った。最高速度は時速120kmで、一充電走行距離は200km以上である。 トヨタが、ニッケル水素バッテリーでハイブリッド車を発売したのが1997年だ。それに対し、日産は、EVの開発を粘り強く進め、2000年にふたり乗りのシティコミューターとしてハイパーミニを完成させた。 最高速度は時速100kmだが、市街地を中心に走るクルマとしては十分な動力性能だ。そして、リチウムイオンバッテリーを使い、一充電走行距離は115kmである。その実用性だけでなく、アルミ押し出し材によるフレーム構造や、パンクしても走り続けられるランフラットタイヤの装着、非接触式充電など、将来の実用化を視野に新技術が投入され、国内では神奈川県横浜みなとみらい地区でカーシェアリングを実施し、米国ではカリフォルニア大学デービス校で用いられるなど、日常の足としての実用性を検証した。

TAG: #新型 #歴史
TEXT:高橋 優
カタログじゃわからないEVの本当の性能を一斉テスト! ノルウェーでマル裸になったEV各車の実力

NAFが2025年夏のテストを実施! EV最先進国家ノルウェー市場でEVの一斉航続距離テストや充電スピードテストが実施されました。カタログスペックと比較してどれほどの乖離があるのか。日本でも発売されている最新EVや欧州に進出している中国製EVを含めて、EVの進化とともに一挙に紹介します。 まず、ノルウェーの自動車連盟NAFは、世界でもっともEV普及率が高い国であることから、数年前からEVのリアルワールドにおける性能を検証するために、ノルウェーで発売されている新型EVを一堂に集めて一斉に航続距離テストや充電性能テストを実施しています。とくにノルウェーは、冬場の寒さが厳しい北欧地域であるために、毎年2回、夏と冬にそれぞれ検証を実施しています。そして、今回発表されたのが2025年6月に開催された夏シーズンの最新テストです。 今回検証されたEVのなかで注目していきたいのが、中国メーカー勢の新型EVです。というのも、現在多くの中国メーカー勢が、レッドオーシャン化する中国国内を飛び出して海外マーケットを開拓し始めています。なかでも世界的にEVシフトが進んでいる欧州市場に目をつけ、その欧州進出における試金石としてノルウェー参入がひとつの流れとなっているのです。今テストには、BYD Tang・Sealion7・Hongqi EHS7・MG Cyberster・MG S5・Voyah Courage・Zeekr 7Xという7車種がテスト車両として派遣されています。 まず、航続距離テストの結果について、このグラフはWLTPサイクルのカタログスペックと、実際の航続距離をそれぞれ示したものです。トップに君臨したのがLucidのフラグシップセダンAirです。航続距離はなんと828.6kmと、NAFのテスト史上最長航続距離を達成。第2位のテスラ・モデル3も720.8kmと史上2位の長さを記録したものの、Lucid Airはさらに100kmも長く走行したことになります。 また日本国内で発売されるEVは、 BMW iX xDrive60:668km テスラ・モデルYロングレンジAWD:652.1km アウディQ6 e-tron Quattro:563km ポルシェ・マカン4 AWD:548km BYDシーライオン7 AWD(91.3kWh):523km フォルクスワーゲンID.Buzz GTX:454km ロータス・エメヤR :450km となりました。 ちなみに中国勢トップはZeekr 7X Privilege AWDが593kmを達成しています。とくに7Xには265/40R21のパフォーマンスタイヤを装着しながら、0-100km/h加速は3.8秒と、今回の検証車種のなかではロータス・エメヤR、Lucid Air GTに次ぐ高性能EVです。その上でカタログスペック比+9.6%という結果には、ポテンシャルの高さがうかがえます。Zeekrは日本国内にも進出予定なので大いに期待できるでしょう。 次に、このグラフは電費性能を比較したものです。圧倒的な電費のよさを実現したのがテスラ・モデル3ロングレンジRWDです。全行程平均電費が10.7kWh/100kmと、他の追随を許さない電費性能を実現。また、SUVトップもテスラで、モデルYロングレンジAWDが12.6kWh/100kmと、やはり優れた電費性能がリアルワールドの検証でも実証された格好です。 ちなみに航続距離最長モデルのLucid Air GTは13.3kWh/100kmと、0-100km/h加速が3.2秒の大型セダンとしては優れた効率性を実現しています。

TAG: #NAF #テスト
TEXT:渡辺陽一郎
小型で安くて長距離も乗れるって国産EVマジでヤバいぞ! ヒョンデ・インスターの選び方

3種類のグレードをラインアップ ヒョンデ自動車は韓国の大手メーカーで、日本には電気自動車と燃料電池車を輸出している。インスターは、このなかでもっともコンパクトで安価な電気自動車だ。ボディサイズは、全長が3830mm、全幅は1610mm、全高は1615mmに収まる。この大きさは、スズキ・ジムニーの5ドアとなるノマドの3890mm×1645mm×1725mmに近い。インスターは、コンパクトSUVのなかでもとくに小さい。 インスターのグレードは、ベーシックなカジュアル(価格は284万9000円)、中級のボヤージュ(335万5000円)、上級のラウンジ(357万5000円)になる。 駆動用リチウムイオン電池の総電力量は、カジュアルが42kWh、ボヤージュとラウンジは49kWhだ。駆動用モーターは全車共通だが、電池容量によって出力が変わるから動力性能も異なる。42kWhのカジュアルは、最高出力が97馬力で、49kWhのボヤージュとラウンジは115馬力になる。最大トルクは15kg-mで共通だ。 動力性能はとくに高くないが、コンパクトなボディで車両重量も電気自動車では比較的軽い。カジュアルは1300kg、ボヤージュは1360kg、ラウンジは1400kgだ。そのためにパワー不足も感じにくい。 ボディがコンパクトで最小回転半径も5.3mに収まるため、混雑した街なかや狭い裏道でも運転しやすい。その一方で、駆動用電池の容量に余裕があり、ボヤージュとラウンジであれば、1回の充電でWLTCモードにより458kmを走行できる。 日産サクラや三菱eKクロスEVは、リチウムイオン電池の容量が20kWhで、1回の充電で走れる距離は180kmだ。インスターではカジュアルの走行可能距離が未発表ではあるが、総電力量が2倍以上だから走れる距離も長い。コンパクトな電気自動車でありながら、長距離を移動することも特徴だ。 価格は前述のとおりカジュアルがもっとも安い。ただし、安全装備はシンプルで、ヘッドライトはハロゲンになってしまう。価格は50万円少々高くなるが、中級のボヤージュを推奨したい。車間距離を自動制御できるクルーズコントロール、後方の並走車両を検知できる安全装備、LEDヘッドランプ、ルーフレール、アルミホイールなどが加わり、リチウムイオン電池の総電力量も49kWhに拡大される。 国から交付される補助金額は、ヒョンデ・インスターの場合、すべてのグレードが56万2000円だ。ボヤージュの価格は335万5000円だから、補助金額を差し引いた実質価格は279万3000円に収まる。この金額はトヨタ・ヤリスクロスハイブリッドZの288万7500円よりも少し安い。つまり、ヒョンデ・インスターでは、国産のハイブリッド車と同等の出費で買えることも大きなメリットになっている。

TAG: #新車 #購入
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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