日本でも安価にEVが買える日が来るかもしれない
関税は0%。それでも日本価格が高くなる理由
「輸入されるクルマが高いのは関税のせいだろう」と考える人は少なくない。ところが日本自動車工業会(JAMA)の公表資料によれば、日本の乗用車の輸入関税は1978年以降、無税(0%)だ。
ではなにが積み上がるのか。
そのヒントは、すでに欧州市場で見ることができる。EZ-6は「MAZDA6e」として2025年秋から欧州で販売されており、マツダの英国法人は2026年2月10日に英国価格を公表した。78kWhのLFP(リン酸鉄リチウム)電池を積む2グレードに絞り、3万8,995ポンドから。2026年2月当時の為替レート(1ポンド約210〜215円)で計算すると約820万円台だ。一方の中国仕様は、発電用エンジンで航続距離を伸ばすレンジエクステンダーとBEVの全11タイプで、11万9800元から16万2800元。日本円で約289万円から約392万円である。電池も装備も同一ではないが、基本設計を共通とするクルマが、単純比較はできないものの、2.5倍ほどの値札を提げている事実は動かない。

まず重いのが認証だ。日本で新型のクルマを売るには型式指定を取得し、保安基準への適合を証明しなければならない。そこへ販売網とアフターサービス網の構築費用、物流費、為替リスクが乗る。急速充電規格も中国はGB/T、日本はCHAdeMO(チャデモ)と別物で、車両側の充電インレットや通信制御などを日本仕様へ変更する必要がある。ハンドル位置はどうか。マツダはMAZDA6eの英国仕様で右ハンドル化をすでに済ませたが、日産のN7に同じ手当てはまだない。つまりマツダに限れば、日本固有の課題は充電規格対応と型式指定、そして販路づくりの3点が中心となる。

日本で割安なBEVに乗れる日は来るのか
2026年8月1日現在、両方のクルマとも日本向けラインアップになく、正式発売の発表もない。ただしN7は、ジャパンモビリティショー2025で日本初公開されている。また、日本で販売するにあたり、価格を押し上げる要素も変動する可能性がある。認証費や開発費など多くは固定費であり、売れる見込みが立てば1台あたりは軽くなる。安くするには大きな市場規模が必要なのだ。実際、日本経済新聞によれば、日産のイバン・エスピノーサ社長は2026年4月24日の北京モーターショーで、中国で開発・生産するNEVを将来的に年間30万台輸出する方針を示し、日本への「逆輸入」も検討していると明言した。

総じて、中国市場におけるマツダEZ-6や日産N7の爆安価格は、地場メーカーを含めた中国市場全体の巨大な規模、完結した低コストなサプライチェーン、そして現地の法規と規格に特化した設計という、複数の好条件が重なって初めて成立するものである。それらを日本市場へ導入するためには、ローカライズ、認証取得、物流、そしてサービス網の構築という、多岐にわたる追加投資が不可避であり、それが結果として、日本向け価格が中国価格より大幅に高くなる大きな理由なのである。次にBEVを検討するときは、車両価格だけでなく、そのクルマがどの市場の相場で値付けされたのかまで興味を持って調べてみると、おもしろい事実が浮かび上がってくるかもしれない。






















