トヨタはこれから一気にBEVラインアップを加速させる
たとえば、韓国ヒョンデの「IONIQ 9」は、110.3kWhという大容量バッテリーを搭載し、航続距離はEPA基準で最大539kmを確保。800Vシステムによる超急速充電に対応し、6万ドルを下まわる価格設定を実現しています。IONIQ 9は当初の税額控除基準に合わせ、米国内生産かつ米国製バッテリーを採用していましたが、税額控除終了直後の2025年Q4における販売台数はわずか1012台に留まりました。さらに兄弟車となるキア「EV9」も前年比マイナス57%となる2603台と失速しています。税額控除の打ち切りを背景に、大型電動SUVに対する需要が想定を大きく下まわっているのです。
今回のハイランダーEVの性能を、競合の大型電動SUVと簡単に比較してみましょう。とくにAWDグレードでは、IONIQ 9と比較してもハイランダーEVの電費性能(エネルギー効率)が優れています。確かに400Vシステムを採用しているため充電性能では見劣りしますが、トヨタの最大の強みは「規模の経済」によるコスト低減にあるといえるでしょう。

冒頭で触れたとおり、ハイランダーEVに採用されているバッテリーやパワートレインはbZ4XやレクサスRZ等と共用されており、製造コストの削減に寄与しています。また、電費性能を高めることで、搭載するバッテリー容量を最小限に抑えています。
とはいえ、先発の韓国勢が不発に終わっていることからも、EPA航続距離500km、800V急速充電というスペックであっても、多様な用途を想定する大型SUVユーザーを満足させられていない可能性が高いです。ハイランダーEVが成功するためには、コスト削減をどこまで突き詰め、内燃機関モデルの価格にどこまで近づけられるかが鍵となるでしょう。

一方、大型電動SUVセグメントで唯一無二のポジショニングを築いているのが「Lucid Gravity」です。Gravityは高級セグメントのためハイランダーEVとは立ち位置が異なりますが、123kWhのバッテリーを搭載し、EPA基準で724kmという圧倒的な航続距離を実現。さらに最大400kWの超急速充電に対応し、0-100km/h加速3.6秒という強烈な動力性能を誇ります。22スピーカーやトリプルチャンバー・エアサスペンションなどの豪華装備を網羅しつつ、設計の最適化によってハイランダーEVを凌ぐ車内スペースを確保しています。とくに227リットルという巨大なフランク(フロントトランク)容量や、3列目シートをフロア下に完全収納できる設計は画期的です。

実際にGravityはQ4単体で1142台を販売し、IONIQ 9を上まわる規模を見せています。ちなみにGravityには、エントリーグレードとして「Touring」が追加されました。バッテリー容量は89kWhとハイランダーEVより小さいものの、EPA基準で547kmと、ハイランダーEVを上まわる航続距離を確保しており、LucidのEV開発力の高さが伺えます。
果たして、競合が苦戦する大型SUVセグメントにおいて、ハイランダーEVは成功を収めることができるのでしょうか。トヨタはハイランダーEVを皮切りに、bZシリーズ、bZ Woodland、レクサスRZ、欧州向けのアーバンクルーザー、日本・中国市場向けのレクサスES、中国専売のbZ7など、2026年にかけてEVラインアップを一気に拡充します。「EVシフトで遅れている」と指摘されていたトヨタが、一転して競合をリードする一年となるのか注目です。

なお、ハイランダーの内燃機関モデルは日本導入が決定しているため、EVバージョンの導入にも期待したいところです。しかし、ハイランダーEVにはテスラのNACS規格が採用されているため、日本のCHAdeMO(チャデモ)規格への対応を考慮すると、ガソリン車ほどスムースな導入は難しいのかもしれません。
















































