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リチウムイオン・バッテリーの製造研究施設も完備……世界初のEV専門職大学の本気度


TEXT:TET 編集部
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前編:日本初のEV専門大学がオープン……日本の自動車業界に風穴を開けるエンジニアを養成できるか

後編はキャンパス内の施設を紹介

2023年4月、「学校法人赤門学院 電動モビリティシステム専門職大学(電動モビリティ大学)」<山形県飯豊町>がオープンした。文部科学省より認可を得た「専門職大学」であり、世界初の「電気自動車」と「自動運転」に特化した教育機関である。

前編」では、本校の教育内容などを紹介した。後編では、キャンパスには一体どのような設備があるのか、施設面を紹介したい。

キャンパスは大きく4つの施設で構成

キャンパスには、「教育棟」「研修棟」「実習棟」「テストコース」が設けられている。

「教育棟」は、地元の木材を使用して建てられた温かみのある建物となっている。まるでロッヂの中にいるようで、くつろげる雰囲気がある。

この中には、教室・学生ラウンジ・ものづくり室・図書館等が設けられている。さらに、日本EVクラブ製作のEVレーシングカー「電友一号」や、細かく分解された「テスラ・モデル3」、一人乗りのパーソナルコミューター「プラチナカー」などが展示されている。特に「テスラ・モデル3」の解体標本は、それだけでも見ごたえ十分だ。

最新のCADも用意するが職人技を鍛える昔ながらの工作機械も完備

教室の中では、学生がCAD(キャド:設計ソフト)の学習をしていた。ここには、自動車業界御用達のハイエンドソフト「CATIA V5(バージョン5)」が18端末分用意されている。また、プログラミングのプラットフォーム「MATLAB(マトラボ)」を使用している学生も見られた。

この教室の隣には「ものづくり室」がある。旋盤・ボール盤・フライス盤・溶接機の工作機械に加えて、それらに使用する工具一式が揃っている。この時代にアナログな機械のように思えるが、やはり自分の手で品物を考え・作り・仕上げるというのは、ものづくりの基本中の基本である。

工業品を製作してみるとわかるのだが、仕上げた面の荒さや、ノギスで測った際の0.0数mmの誤差などは現品を確認しなければ分からない。金属やプラスチックは“ナマモノ”なのだ。

このあたりの“職人のカン”は、アナログな手法でなければ鍛えられない。メタバースなどでのシミュレーションは無理である。ちなみに教室内にあった溶接機の隣には、アルミ板を溶接したものが置かれていたが、熱で反りまくっていた。この失敗の経験が必要なのだ。

今年入学の生徒にはまだアルミ溶接は難しいだろうが、実習を通して技術と勘をがっちりと鍛えてほしい。もちろん旋盤やボール盤も同じである。

教育機関では日本唯一と見られるバッテリーの製造設備

「教育棟」の向かい側に「研究実習棟」がある。ここでの注目設備は、リチウムイオン・バッテリーの製造設備である。正極・負極材に用いる素材の“粉”を調合し、ラミネートセルまで作れるのだ。

さらには充放電などの試験・評価設備も整っている。バッテリーに関する設備をここまで整えている教育機関は、日本でもここだけのようである。

最新のEVモデルがバラバラに

筆者が1番興味をそそられたのは「ガレージ」だ。最新のEVが分解されていた。一例を挙げると「BYDアット3」や「テスラ・モデルY」が見事にバラされていた。

そのため、「アット3」の特徴の一つである「ブレードバッテリー」や、テスラの大型鋳造技術「ギガプレス」にて作られたパーツの実物を見ることができた。

それ以外にも「BMW i3」や、テスラの初代「ロードスター」など計30台が分解されていた。これだけのEVの解体標本が揃う学校も、日本ではかなり珍しいはずだ。

雪上などシビアコンディションでのテストが可能

このキャンパスの大きな特徴は、テストコースを自前で持っているところにあるだろう。1周400mの外周を備えた舗装路面で、EVの完成車のほか自動運転のテストも可能だ。冬場は凍結したり積雪があるが、そういった厳しい環境でのテストを行えるのは逆にメリットである。EVの要であるリチウムイオン・バッテリー作りから実走テストまで行えるとは、なんとも羨ましい環境だ。

飯豊町が学生の生活面を支援

キャンパスのある山形県飯豊町は、人口約6,500人の小さな町である。大学の設置・運営には大いに協力的とのことで、学生の生活支援の一環として3DKの町営住宅を低価格で提供したり、奨学金の検討、アルバイトの機会の提供など、数々の支援策を打ち出しているとのこと。地元はもちろん、首都圏からの入学も安心できる環境と言える。

世界的カーデザイナーのケン・オクヤマ氏に続く人材を山形から

余談ではあるが、世界的なカー・デザイナーの奥山 清行氏(ケン・オクヤマ氏)は、山形県の出身である。もしかしたら奥山氏に続く世界的な自動車エンジニアが、また山形から生まれるかもしれない。「電動モビリティ大学」は、そんな可能性を秘めている。日本の自動車業界を変えるエンジニアが、一人でも多く育ってほしい。

ちなみに8月26日にはオープンキャンパスを予定している。自動車系の学校への入学を検討している人は、是非とも訪れてみてはいかがだろうか。また、キャンパス内にてEVの試乗会も開催するという。その機会には、許される限り大学も見学してほしい。

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