EVが自動車の操作を変える
車内の造形に目を向けると、機能のすべてが電気で動くEVは、それを前提とした空間設計ができる。
代表例が、テスラ「モデル3」や「モデルY」だろう。当初の「モデルS」でも、大画面モニターを用いた室内の造形や、それを活用した操作性など独特の世界感があった。モデル3となってさらに進化し、ダッシュボードには大画面しかない簡素な造形に徹した。各種設定は大画面で行い、微調整はステアリングスポーク部分のボタンスイッチで行う。
バイ・ワイアと呼ばれる、電気配線で操作の指示を伝達し、各機能を遠隔操作させる手法は、すでにエンジン車の時代から用いられてきた。テスラはEVであることを活かし、バイ・ワイアを徹底して採り入れ、たとえばモデルSはキーを持つ人が近づくだけでドアロックを開錠する。乗り込み、着座すれば、イグニッションスイッチを操作することなくブレーキペダルを踏むだけで起動し、シフトレバーをD(前進)やR(後退)へ操作すれば走れる。手順を驚くほど簡略化した。
テスラのこうした取り組みは、操作に多少の違いはあっても「モデル3」に引き継がれている。電源を入れるか切るかで、操作するしないを明確に判別できるので、スイッチを設けなくても、人が運転操作をする手順のなかで電気的な処理を徹底し、操作を簡素化した。それで何の支障もない。
他社のEVもテスラを倣い、車内の操作や情報確認の手法をEV専用に進展させようと試みている。しかし、まだエンジン車時代の名残を覚えさせる面が残っている。誕生から130年以上エンジン車を開発してきた自動車メーカーは、発想の転換に時間を要しているようだ。そうしたなか、韓国のヒョンデや中国のBYDなどは、それぞれの国がスマートフォン開発でし烈な競争をしており、電気を駆使した操作性や機能装備について先んじていると感じさせるところがある。

EVが創造する新たな室内デザイン
エンジンがないだけでなく、ラジエターや排気管、そして変速機などもいらないことにより、EVは部品点数が少なく、簡素化された車体は、客室の前後に荷室を設けることも不可能ではない。容量の多少はあるが、テスラは車体前後に荷室を設けている。ちょっとした機能性の違いではあるが、EVならではの空間活用法だろう。
将来的には、トヨタのコミューターEVバスである「e-Palette(イー・パレット)」のように箱型で、室内空間を最大に広げたEVが、公共交通や物流などで活躍するかもしれない。車体寸法もこれまでのエンジン車の概念を超えた発想によって、快適に移動できながら、小型で邪魔にならないクルマの大きさや姿が、創造されていくのではないか。そうなってはじめて、EV時代の到来といえるだろう。



















































