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「ヒョンデ アイオニック5 試乗記」その2


TEXT:TET 編集部
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アイオニック5は大小とりまぜていろいろとトピックの多いクルマなのだが、まずはプラットフォームについて触れることからはじめよう。E-GMPと呼ばれるヒョンデのEV専用プラットフォームで、EV専用であることは今どき珍しくもないのだけれど、ヒョンデのそれはリアアクスルに一体型のモーターを配置した後輪駆動が基本とされている。基本というのは、フロントアクスルにも一体型モーターを配した四輪駆動のモデルもラインナップされているからだ。

車格や価格などを考えると、トヨタbZ4X/スバル・ソルテラ、日産アリア、そしてフォルクスワーゲンID.4あたりが日本におけるライバルというか近似値にあるといえるが、日本勢はすべて前輪駆動とそれをベースにした四輪駆動。ヒョンデとフォルクスワーゲンは後輪駆動とそれをベースにした四輪駆動。ヒョンデもジェネシス・ブランドが後輪駆動であることを除けば前輪駆動ベースのクルマばかりだし、フォルクスワーゲンにいたってはすべてが前輪駆動ベースだ。なのにEVということになると、どちらも後輪駆動ベースを採っているところが興味深い。

写真で見るより大きい


車体のサイズは全長4,635mm、全幅1,890mm、全高1,645mm。わかりやすそうなところで比較してみるなら、bZ4Xよりも60mm短く、40mm幅広く、10mm低い数値だ。まだbZ4Xを街で見かけることはほとんどないだろうからわかりやすいともいえないのだが、サイズとしては小さめのDセグメントといったところ。いずれにしても写真などで見かけるイメージほど小さいクルマではない、ということだ。実際に走らせてみても、アイオニック5のほうが少しワイドだが感覚的にはトヨタ・ハリアーとかマツダCX-5をドライブしているときに近い。街中の細い裏路地やタイトなワインディングロードでは、持て余すとまではいかないものの、気持ちがやや引き締まる感じだ。にも関わらずアイオニック5がコンパクトに見えるのは、ほかのライバルたちがSUVスタイルを採用しているのに対し、ハッチバックのようなスタイリングデザインとされているからにほかならないだろう。ヒョンデはこれをCUV(Crossover Utility Vehicle)スタイルとカタログの中で謳っているが、これはクロスオーバーなどではなく、どう見ても5ドアのハッチバックだ。それも──まぁ好みはあるだろうけれど──かなり見栄えのいいハッチバックだと思う。

「コンセプトカー感」の秘密

実はこのスタイリングには、お手本のようになった存在がある。1974年のトリノ・ショーで発表された、巨匠ジョルジェット・ジウジアーロの手になるヒョンデの「ポニー・クーペ・コンセプト」。そして、それをもとに市販車に仕立て、韓国初の国産車となったポニーの4ドアファストバックセダンや3ドアハッチバック。そうした初期のヒョンデのクルマたちへのオマージュを込めつつ新時代のヒョンデをデザインした、というわけだ。アイオニック5のスタイリングのもとになった2019年の「45コンセプト」のデザインスケッチを見ると、ポニー・クーペ・コンセプトをかなり意識していることがよくわかる。ジウジアーロは水平線を大切にしたデザインが多いことで知られているが、もちろんそこは共通。さらにポニー・クーペ・コンセプトの前後ピラーのシャープなスラントを、ひとつのモチーフとしてボディサイドのキャラクターラインに投影した。その45コンセプトを実用性の高い5ドアハッチバックにアレンジしたのがアイオニック5、といっていいだろう。それらはヒョンデの社内デザインによる。

実際に目にするアイオニック5は、かなり現実的な5ドアハッチバックである。が、不思議なコンセプトカー感が漂っているのがおもしろい。おそらくそれは折り紙細工のようにパキッとした線を活かした幾何学的な構成、必要なときには自動的にポップアップするが通常はまるでスムージングでもしたかのようなフラッシュサーフェス処理が施されているドアハンドル、やぶにらみ気味の眼力の強いヘッドランプの縁取りや1970年代のデジタルサイネージのようなテールランプなどにピクセルをモチーフにしたデザイン処理が施されて、どこかフツーじゃない雰囲気を漂わせているからだろう。

それには真横から見たときのちょっとした違和感のようなものも、ひとつの要素として加担していると思う。何しろ全長がほぼホイールベース、なのだ。タイヤが思い切り四隅に寄せられているのはフロアのバッテリー搭載スペースを確保する意味合いも大きいだろうが、何せホイールベースは3,000mmもある。ライバルたちとくらべて段トツに長い。これは相当に印象的だ。

アイオニック5のスタイリング、嫌いじゃない。僕は充電環境を自宅に持てないし、一発500〜600kmなんていう移動が日常的にあるからEVを愛車にすることは現段階ではできないのだが、アイオニック5には素直にかっこいいと感じさせられている。このスタイリングのまま縮尺を小さくしたスポーツハッチがあったら欲しいな、と思うほどだ。

 

Hyundai IONIQ5 Lounge AWD スペック
全長:4,635mm
全幅:1,890mm
全高:1,645mm
ホイールベース:3,000mm
車両重量:2,100kg
前後重量配分:前1,060kg、後1,040kg

乗車定員:5名
交流電力量消費率:142.4Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:577km(WLTCモード)
最高出力:225kW(305ps)/2,800-8,600rpm
最大トルク:605Nm(61.7kgm)/0-4,000rpm
バッテリー総電力量:72.6kWh
トランスミッション:1段固定式
フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式
リアサスペンション:マルチリンク式
フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク
リアブレーキ:ソリッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R20、後255/45R20
最小回転半径:5.99m
荷室容量:後527L、前24L
車両本体価格:5,890,000円

 

その3 「インテリア」に続く

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