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「ヒョンデ アイオニック5 試乗記」その3


TEXT:TET 編集部
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広く快適な室内

サイドから見たときのビックリするくらいのホイールベースの長さは、いうまでもなく室内のスペースを広くとることに貢献している。アイオニック5のドライバーズシートに座って自分のドライビングポジションを作り、ふとルームミラーを見てみると、リアシートがずいぶん遠くにある。そのままリアシートに移ってみると、足が組めるくらいのゆとりがある。車体がワイドな分だけ横方向にも窮屈さはまったくなく、どのシートに座っても快適だ。シートの座り心地も、リアルレザーシート、フェイクレザーシートともに良好だ。

フロントシートにはちょっとした仕掛けがあって、電動で後ろにリクライニングさせていくと、背もたれが倒れるとともにヒップポイントが沈み、いい具合にリラックスした姿勢で休むことができる。しかも運転席にも助手席にもオットマンが備わっている。そのうえ上級グレードには「ビジョンルーフ」と呼ばれるガラスルーフが全面に広がっていて空を眺めることができるし、電動式のルーフブラインドを閉めて光を遮ることもできる。つまり充電の待ち時間にゆったりと身体と心を休められるように、ということだ。もちろんサービスエリアで仮眠、なんていうときにもありがたい。充電インフラが今ひとつ整っていない現在は、充電の待ち時間だけじゃなく、場合によっては充電できるポジションに繰り上がるまでの待ち時間というのもあるわけで、嬉しい限りだ。グローブボックスが大容量の引き出し式になっていたり、メーターパネルの右端にマグネットで何かを留められるようになっていたりするのも、待ち時間を楽しく過ごすために考え出されたんじゃないかと思えてくる。

そうした心配りともいえる仕掛けはほかにもある。たとえば左右のフロントシートの間にあるセンターコンソールは前後に140mmスライドさせることができるから、リアシートから物入れやUSBポートなどにアクセスしやすい。さらにシフトのセレクターがコンソールに配されていないため、最も後方に動かしておけば左右間を行き来するのも容易いから、片側のドアが壁などに阻まれて開けられないときでも、逆側のドアからアクロバティックな動きなしに乗り降りすることができる。どうでもいいようなことと思われるかもしれないが、住環境によっては、これはとても便利なのだ。

シンプルで好ましい操作性

ならばシフトのセレクターはどこにあるのかというと、ステアリングコラムの右側、ウインカーレバーの下にレイアウトされている。先端を上にひねればDレンジ、下側にひねるとRレンジ、最先端のボタンを押すとPレンジ、である。最初は軽く戸惑ったが、すぐに慣れるし、慣れればとても使いやすい。

同じように使いやすさを感じたのは、物理スイッチの方が操作しやすい機能は物理スイッチとして残されていることだ。ダッシュボードには横長のパネルの中にデジタルメーター用とインフォテイメントシステム用のどちらも12.3インチのモニターが並んでいるのだが、近頃のトレンドのようになっているタッチパネルですべてを操作させようとしているのではなく、操作できることをわかりやすく振り分けている。すべてを把握できているわけではないが、基本、停止しているときに操作するものはタッチパネルで、走行中でも操作するものは整然とレイアウトされた物理スイッチで、という具合に考えられているように思えた。

それなりの数の物理スイッチあるのにゴチャついた感じがまったくしないのは、デザインの巧みさというべきだろう。インテリアは全体的にシンプルな印象で、過ごしやすい空間だ。ちょっとしたリビングルーム感覚、といってもいいかもしれない。よっぽどゴージャスな空間をお望みなら別の選択をするべきかもしれないが、といってこちらも質感が悪いわけじゃない。ファブリックパッドやヘッドライニング、フロアカーペットなどにはサトウキビから抽出された糸を使用した繊維を、シートとやドアトリムなどにはリサイクルペットボトルで作られた糸を、ステアリングやドアなどには菜の花とトウモロコシから抽出した成分からなるバイオ塗料を、本革シートには亜麻の種から抽出した植物性オイルを活用した皮革を使うなど、地球に優しい素材を使っているのだが、見た目からはこれみよがしな主張は伝わってこない。穏やかで優しいインテリア。好感度が高いな、と感じる。

ラゲッジルームも5人乗車時のVDA法で527L、リアシートを倒せば1016Lと、ホイールベースの長さを考えたら優秀と言える数値。フロンドフードの下にも後輪駆動モデルで57L、四輪駆動モデルで24Lのスペースが用意されている。

まだ走り出してもいないうちに、日常生活の相棒にするといいかも、という気持ちになってきた。

 

Hyundai IONIQ5 Lounge AWD スペック
全長:4,635mm
全幅:1,890mm
全高:1,645mm
ホイールベース:3,000mm
車両重量:2,100kg
前後重量配分:前1,060kg、後1,040kg
乗車定員:5名
交流電力量消費率:142.4Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:577km(WLTCモード)
最高出力:225kW(305ps)/2,800-8,600rpm
最大トルク:605Nm(61.7kgm)/0-4,000rpm
バッテリー総電力量:72.6kWh
トランスミッション:1段固定式
フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式
リアサスペンション:マルチリンク式
フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク
リアブレーキ:ソリッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R20、後255/45R20
最小回転半径:5.99m
荷室容量:後527L、前24L
車両本体価格:5,890,000円

 

その4 「ロードインプレッション」に続く

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