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「ヒョンデ アイオニック5 試乗記」その1


TEXT:TET 編集部
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史上初のインポート・カー・オブ・ザ・イヤー受賞EV

2022年の自動車業界にまつわる代表的なトピックのひとつは、「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」と「2022-2023 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」の受賞車がどちらもBEVだった、ということだろう。EVとしては2011年に日産リーフがイヤーカーを受賞していてこれが2度目となるが、インポート部門でEVが受賞したのは初めてのことだった。

ちなみに今回は、全エントリー49車種のうち11車種が、EV“専用”モデルだった。リーフが受賞した年は55車種中1車種のみ、以降、2014年が38車種中1車種、2015年が45車種中1車種、2019年が35車種中2車種、2020年が33車種中2車種、2021年が29車種中2車種、といった具合。それ以外にも既存モデルに内燃機関搭載車と並行して設定されたEVもあるわけだが、そんなところからもここにきてEV「専用」モデルが急速に増えてきたことが判る。今やそういう時代なのだな、とあらためて思わせられたものだ。

話をもとに戻すと、「2022-2023 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を勝ち得たのは、ヒョンデ・アイオニック5だった。その受賞理由を、日本カー・オブ・ザ・イヤーの公式ウェブサイトではこう記している。

「革新的なエクステリア/インテリアデザインとともにバッテリーEVとして、498km~618km(WLTCモード)という実用的な航続距離や卓越した動力性能のほか、充実した快適装備や安全装備、V2Hや室内/外V2Lにも対応している点などが評価された。さらに、ステアリングのパドルシフトレバーで回生制動量を変更できる点も、走りの楽しさを高めてくれるポイントとして指摘する声が多かった」

捲土重来

ヒョンデが最初に日本市場へ参入したのは2001年のこと。当時は「ヒュンダイ」を名乗っていた。1967年に創立され、1975年に韓国初のいわゆる国産車をデビューさせたヒュンダイは、1980年代半ばから1990年代にかけてカナダや北米などでコストパフォーマンスに優れるという点から評価が高く、売れ行きも好調で、満を持しての日本上陸だった。

が、そう上手くはいかなかった。日本には数多くの自動車メーカーが存在し、この国の地の利も活かしたコストパフォーマンスに優れたクルマは山ほどあって、サービス網も整備されている。輸入車ということでは古くから参入している欧米のメーカーたちが根ざしていて、バブル期にさらに深く広く浸透して地位を固めた直後のことだった。難問が山積みだったのだ。結局、販売が思わしくなかったうえに原材料高騰などに起因する値上げがさらに脚を引っ張るかたちになり……という悪循環から脱することができず、2008年に日本市場での販売をやめることが発表され、2010年をもって乗用車の日本での販売から完全に撤退、となった。

と、あまり歴史的な事柄に関心のない人にとってはどうでもいいかもしれない話を連ねたのだが、それには僕なりの理由がある。

セールスメソッドの改革

2022年に再上陸を果たした「ヒョンデ」は、時代を見据え、以前とはアプローチのまったく異なる展開で、じっくり腰を据えて勝ちに来ているように思える。

ひとつはEVのアイオニック5とFCVのネッソのみでスタートし、未来を見据えた姿勢を提示していること。そしてアフターサービス拠点網は別として、正規ディーラー網を構築せずにオンライン販売を基本とすること。この時点でヒョンデが見つめている顧客層を窺い知ることができるだろう。カーシェアリングのエニカと提携して相当数のクルマを一般ユーザーに貸し出し、それを試乗機会としているところからも。つまり、急いでいないのだ。

もちろんヒョンデとして顧客と直接触れ合う場所も用意してあって、新横浜駅の徒歩圏内に居心地のいいカスタマーエクスペリエンスセンターを設け、クルマの現物チェックや購入相談はもちろん、試乗することも、急速充電やV2Lを体験することも、カフェを楽しみながらメインテナンス風景を眺めることも、しっかりした納車セレモニーも、すべてがワンストップで可能になるよう整えてある。

ヒョンデの2022年の新規登録台数は、アイオニック5のオーダー受付が開始された5月から11月までの数字で426台。「だったの?」と思われる人もいるだろうが、そうした販売方法を採ってることを考えると、これはむしろかなり好調であるといえるだろう。そして「2022-2023 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」の受賞、である。結果を急いでないのに、結果が出はじめている。

もちろんアイオニック5の出来映えがいいからというのが最も大きな要因であるのは間違いない。それは実車に触れ、試乗をしてみると明確に理解できることだろう。今回はほぼ序文のようなところで終わってしまうことになるが、僕もアイオニック5に様々なシーンで試乗することができているので、次から細かくお伝えしていきたいと思う。

 

Hyundai IONIQ5 Lounge AWD スペック
全長:4,635mm
全幅:1,890mm
全高:1,645mm
ホイールベース:3,000mm
車両重量:2,100kg
前後重量配分:前1,060kg、後1,040kg
乗車定員:5名
交流電力量消費率:142.4Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:577km(WLTCモード)
最高出力:225kW(305ps)/2,800-8,600rpm
最大トルク:605Nm(61.7kgm)/0-4,000rpm
バッテリー総電力量:72.6kWh
トランスミッション:1段固定式
フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式
リアサスペンション:マルチリンク式
フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク
リアブレーキ:ソリッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R20、後255/45R20
最小回転半径:5.99m
荷室容量:後527L、前24L
車両本体価格:5,890,000円

 

その2 「基本構成とスタイリング」に続く

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