EVヘッドライン
share:

「ヒョンデ アイオニック5 試乗記」その4


TEXT:TET 編集部
TAG:

ストレスフリーの運転感覚

アイオニック5の日本に導入されているグレードは4つ。バッテリー容量が58.0kWhの後輪駆動、同じく72.6kWhの後輪駆動が装備違いで2つ、そして72.6kWhの四輪駆動となる。58.0kWhのベーシックモデルは125kW(170ps)と350Nm、72.6kWhの中間グレードと上級グレードが160kW(217ps)と350Nm、同じく72.6kWhのAWDがシステム合計で225kW(305ps)と605Nmだ。僕が試乗できたのは、72.6kWhの後輪駆動の上級グレードである「ラウンジ」と、72.6kWhの後輪駆動の「ラウンジAWD」だった。

まずは後輪駆動のモデルに乗り込んで駐車場から一般道に左折すべくウィンカーレバーを操作したら、メーターパネルの表示が変化した。パネルの左側にポッカリと丸く、ボディ左サイドの死角になっている部分が映し出されたのだ。次の交差点で右折をしようとしたら、右側に円形の死角映像が表示される。これは車線変更などのときにも同様で、そのたびにウィンカーと連動して死角を映し出してくれる。もちろんそれだけ注視していれば安全というわけではないけれど、大いに助けになることはたしかだ。ほかのデジタル仕掛けのクルマたちもこうしたらいいのに、と思った。

メーターパネルそのものも、情報量はそれなり多いが、シンプルに整理されて表示されているから、欲しい情報を瞬時につかみやすい。くわえてフロントウィンドーに投影されるヘッドアップディスプレイが備わっているので、走行中に本当に必要な情報をチェックするのも容易だ。視界はいいし車体の四隅もつかみやすい部類だから、それらが走らせやすさにつながっている。

EVならではの滑らかな加減速

が、やっぱり最も大きな要因は、モーター駆動であるということだろう。ゼロスタートの段階から350Nmというたっぷりしたトルクの恩恵にあずかることができていっさいの力不足を感じないし、そのトルクのコントロールをドライバー自身がしやすいから、思ったとおりにクルマが走ってくれる感覚になれるのだ。しかも、制御が緻密で加減速がすばらしく滑らかだから、何だか自分のドライビングが巧くなったような気さえしてくる。また回生ブレーキの効きをパドル操作で段階的に切り換えられ、いわゆるワンペダルドライブで発進から停止までまかなうこともできるから、右足の精度の高いドライバーはそれを多用して安楽さと楽しさを享受したくなることだろう。それらはすべて、モーター駆動の強みである。

高速道路にすべり込んでも、そのあたりの印象は変わらない。フル加速をしても途方もなく速いというほどではないが、スムーズに素早くスピードを上げていくさまは掛け値なしに気持ちいいといえるほど。EVの宿命で伸び感はゆっくり少しずつ穏やかになっていくが、そのときにはすでに結構な速度域に入っているはずだ。過剰な刺激を求めでもしない限り、まず不満を感じることはないだろう。

もう一方の四輪駆動のモデルも、街中での印象は後輪駆動と較べてちょっと力強いかも、という程度でそれほど極端な違いは感じられなかった。が、フル加速を試みたり高速道路での中間加速を味わってみたりすると、数値の違いをはっきり体感できる。明らかに速い。0-100km/h加速は5.2秒で、あまり意味のある比較とはいえないが、それはポルシェ・ケイマンよりたった0.3秒遅く、BMW Z4 sDrive30iより0.2秒速い数値だ。605Nmのトルクは伊達じゃない。しかもその605Nmがフルに掛かっていると思われる状況でも、クルマの動きが乱れることはまったくない。フロントモーターの存在を感じる瞬間だ。パフォーマンス的には不満を感じることがないどころか、しっかり満足のゆくレベルである。

なかなか優秀な移動体

乗り心地に関しては、基本的には良好で快適といって差し支えないだろう。とりわけ高速域ではフラットと表現していいフィーリングを味わえる。ただし、だ。後輪駆動、四輪駆動ともに、路面の荒れた場所やちょっとした段差を乗り越えたときには、ちょっとバタつきを感じることがある。おそらくそれは後輪駆動で235/55R19、四輪駆動で255/45R20というバネ下の重い大径タイヤに起因するものなんじゃないかと思う。ものすごく気になるというほどでもないのだが、アイオニック5に乗っていてちょっと気になったのがそこだけだったので、逆に印象に残ってしまったかたちだ。

車室内は高速走行に入っても風切り音やロードノイズが耳に障るわけでもなく、実に静か。あまりの静寂をいいことに、その日に一緒に移動していた人がインスタライブをはじめたのだが、視聴者の方が驚いていたくらいだった。

移動体として、なかなか優秀なのである。

 

Hyundai IONIQ5 Lounge AWD スペック
全長:4,635mm
全幅:1,890mm
全高:1,645mm
ホイールベース:3,000mm
車両重量:2,100kg
前後重量配分:前1,060kg、後1,040kg
乗車定員:5名
交流電力量消費率:142.4Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:577km(WLTCモード)
最高出力:225kW(305ps)/2,800-8,600rpm
最大トルク:605Nm(61.7kgm)/0-4,000rpm
バッテリー総電力量:72.6kWh
トランスミッション:1段固定式
フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式
リアサスペンション:マルチリンク式
フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク
リアブレーキ:ソリッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R20、後255/45R20
最小回転半径:5.99m
荷室容量:後527L、前24L
車両本体価格:5,890,000円

 

その5 「まとめ」に続く

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本に何が起こった? BEVが売れない……ハズが2025年10月は電気自動車が売れまくっていた
エンジンサウンドが聞こえてシフトショックも感じられるEVが超進化! ヒョンデ「IONIQ 5 N」がマイナーチェンジ
60年もの不動車がバッテリー交換だけで走り出した! EVの長期保管はエンジン車よりも簡単!!
more
ニュース
日本にも来春やってくる韓国Kiaの商用EVバンが快挙達成! 「PV5」がアジアメーカー初の「インターナショナル・バン・オブ・ザ・イヤー」を満場一致で受賞
2025年度でもっとも優れた輸入車は日本で唯一の電動ミニバン! フォルクスワーゲンID.BUZZが「2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー」で二冠に輝く
EVだけじゃなく水素でも世界をリードする! 「ヒョンデ」がジャパンモビリティショー2025で新型ネッソを本邦初公開
more
コラム
「EVは下取りが安い」は事実! 逆にいえば「上質な中古車」が安く買えるんじゃ……と思ったらそのとおりだった
やっぱりBEVが売れる中国ではブランドによって明暗クッキリ! 経営立て直し中の日産は販売好調!!
踊り場はEVのありかたを見直す大切な時間! 歴史を感じる奈良で開催されたEV試乗会で思う電気自動車の現在地
more
インタビュー
「BMWの核はセダン」。「i5」での表現は、BEV世代のセダンの在り方を示している。
「i5」の造形を、BMWエクステリア・デザイン責任者がディテールから語る
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 4]
more
試乗
【試乗】速さはスーパースポーツ並! AWD技術も完成の域! アウディS6スポーツバックe-tronに望むのは「感性に訴えかける走り」のみ
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
マイチェンで名前まで変わった「アウディQ8 e-tron」ってどんな車? [Q8 e-tron試乗記]
more
イベント
軽自動車市場参入を表明したBYDの軽EVはスライドドアのスーパーハイトワゴン!? 注目モデルが目白押しなジャパンモビリティショー2025のBYDブースは要注目
三菱自動車、東京オートサロンに2台のカスタムEVを展示
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択