力強い走り
アイオニック5は、ワインディングロードでもなかなか爽快なドライブを楽しませてくれた。そう、まさに爽快、という言葉が似つかわしい。スポーツカーのようにとまでいうつもりはないけれど、気持ちが綺麗にすっきりするくらいにはスポーティに走ってくれる。
後輪駆動モデルと四輪駆動モデルのどちらにも共通しているのは、まずアップダウンの多い山坂道の登りでも、“力不足”という言葉さえ思い浮かばないことだ。多少勾配がきつかったとしても、涼しい顔をしてグングンと駆け上がっていく。いうまでもなく四輪駆動モデルの方は225kW(305ps)に605Nmとパワーもトルクもある分だけ余裕はあるけれど、後輪駆動モデルの160kW(217ps)と350Nmだってじれったい想いをすることはない。勾配などモノともせずにあっさり前に進んで行ってくれるのだ。
それに350Nmといえば、内燃機関ならちょっと前だと3.5L V6自然吸気、今どきなら2.0L直4のダウンサイジング系ターボの数値。いずれもスポーツ系のモデルに多用された構成だ。けれど、いかに内燃機関で350Nmのトルクがあったとしても、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間に有効なトルクが立ち上がるモーター駆動のレスポンスには敵わない。加速の立ち上がりの強力さはEVの独壇場ともいえる大きな武器なのだ。だからちょっと元気よく走らせてみると、コーナーからの立ち上がりの素早さに思わずニンマリさせられるほど。四輪駆動モデルではフロントのモーターが効き目を示してくれたりもするから、なおさらだ。両車それぞれ、なかなかいいパフォーマンスを見せてくれるのである。
それに、よく曲がる。快く曲がる。どちらも基本は安定志向の落ち着いた曲がりっぷりではあるのだが、だからといってつまらないモノになってないのが嬉しいところ。重心が低く鼻先が軽く、だからよっぽど物理の法則を無視したようなドライビングでもしない限り、あらゆる場面でノーズは気持ちよく自然にインへと向かっていく。ちょっとやそっと追い込んだくらいでは、後輪がグリップを放棄したりクルマの姿勢が乱れたりすることはない。後輪駆動モデルではしっかりとした後輪のトラクションを感じさせながら、四輪駆動モデルではときに前輪からの引っ張りをも感じさせながら、力強く路面を後ろに蹴り出してコーナーを脱出していく。
今どきのメーカー謹製EVのほとんどは、ワインディングロードを苦手としないフットワークのよさを見せる。アイオニック5もまったく同じで、後輪駆動モデルでは1,870〜1,990kg、四輪駆動モデルでは2,100kgという重量がブレーキに与える影響を常に気に留めておく必要はあるが、楽しく気持ちよく減速→旋回→加速のサイクルを味わえる。そしてそれは元気よく走ってるときのみならず、たとえばワンペダルドライブでコーナーの連続をリズミカルにクリアしているようなときでもまったく同じだったりする。
健康的かつ経済的
仮に内燃機関のクルマのテイストをコークだとかサイダーに例えるとしたら、アイオニック5のそれは上質なミネラルウォーターのよう、といえばいいか。何だかスキッとキレがいい。だから爽快に感じられる。だから自然と無意識に飲みたい欲求にかられる。試乗を終えて、そんなふうなことを考えるでもなく考えた。有り体にいうなら、僕は気に入ったのだ。
ちなみにアイオニック5の航続可能距離は、後輪駆動モデルがWLTCモードで618km、四輪駆動モデルで577km。その数値どおりにいくことはまずないけれど、今回の箱根往復ではまったく余裕だった。自宅に200Vの充電環境がある人にとっては、結構実用的であろうと思う。もちろんCHAdeMOによる急速充電にも対応していて、90kWの急速充電器を使った場合、32分で10%から80%までの充電が可能だという。充電インフラが早くもっともっと整ってくれたらいいのに、と願う人がさらに増えそうだ。
ほかにもV2LやV2Hが可能だったりADASが充実していたりスマートキーで操作できる自動駐車システムが備わっていたりと、見どころはまだまだたくさんあるのだが、やはり大きな説得力となるのは価格だろう。58kWhのベーシックモデルは479万円、72.6kWhの中間グレード「ヴォヤージュ」が519万円、上級グレードの「ラウンジ」が549万円、四輪駆動モデルの「ラウンジAWD」が589万円である。なんとコスパに優れることか! 昔のヒュンダイ時代のクルマもたしかに安かったけれど、ぶっちゃけ、クルマそのものに大きな魅力があるとはいいがたかった。けれどアイオニック5は、様々な魅力をたっぷり持った出来映えの素晴らしいクルマ。だからこそ2021年にはドイツとイギリスのカー・オブ・ザ・イヤーを、2022年には日本のインポート・カー・オブ・ザ・イヤー、さらにはワールド・カー・オブ・ザ・イヤー/ワールドEVオブ・ザ・イヤー/ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤーを独占する快挙も成し遂げている。
新横浜のカスタマーエクスペリエンスセンターをはじめとするいくつかの拠点は誰でもウェルカムで、アイオニック5についての詳しい説明をエキスパートに求めることもできるし、もちろんテストドライブだってできる。あなたがEVに関心を持っておられるのだとしたら、ヒョンデの公式ウェブサイトから最寄りのところを探すか、あるいはエニカのシェアカーでぜひとも体験してみるべきだと思う。きっといろいろな意味で嬉しい驚きを感じることになるはずだから。
Hyundai IONIQ5 Lounge AWD スペック
全長:4,635mm
全幅:1,890mm
全高:1,645mm
ホイールベース:3,000mm
車両重量:2,100kg
前後重量配分:前1,060kg、後1,040kg
乗車定員:5名
交流電力量消費率:142.4Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:577km(WLTCモード)
最高出力:225kW(305ps)/2,800-8,600rpm
最大トルク:605Nm(61.7kgm)/0-4,000rpm
バッテリー総電力量:72.6kWh
トランスミッション:1段固定式
フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式
リアサスペンション:マルチリンク式
フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク
リアブレーキ:ソリッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R20、後255/45R20
最小回転半径:5.99m
荷室容量:後527L、前24L
車両本体価格:5,890,000円

















































