コラム 記事一覧

コラム コラム
TEXT:御堀直嗣
2000馬力のEVスーパーカーもリーフも同じ金額! 自動車税の面でEVはめちゃくちゃ優遇されている

EVは1リッター以下の区分に該当 毎年、5月末までに支払うクルマの税金が、自動車税であり、軽自動車税だ。この税金は、エンジン排気量を基準に税額が定められている。では、エンジンのない電気自動車(EV)は、無税なのか? 答えは、NOだ。EVも自動車税を支払っている。ただし、エンジン車より割安ではある。 登録車の場合、エンジン排気量の区別は、1ッター以下から6リッター超えまで、10段階に分けられている(東京都)。そしてEVは、もっとも排気量が少ない1リッター以下に該当するとされ、その税額は2万5000円だ。 そのうえで、新車で新規登録を行った場合は、グリーン化特例により、最初の1年分のみおおむね75%の軽課の扱いになる。以後、2万5000円というわけだ。 EVの税額は車格の大小を問わず同一である。5ナンバーEVのヒョンデ・インスターからポルシェ・タイカンなど超高性能EVまで同額になる。 たとえばポルシェ911のカレラ4 GTSは、エンジン車で水平対向6気筒の排気量が3.591リッターだから、6万5500円(令和元年10月1日以降に初度登録)の自動車税額になる。したがってタイカンは、その半分以下でしかない。 軽自動車は、エンジン排気量が660ccと一律なので、それ以上もそれ以下もなく、EVを含め1万800円だ(東京都港区)。ただ、登録車の事例と同じように、新車を新規登録した翌年5月の税額は、グリーン化特例の75%軽減対象車にEVは当てはまるので、2700円になる。

TAG: #維持費 #自動車税
TEXT:桃田健史
新型リーフを日産が公開! 厳しい経営状況のなかで日産はどんな戦略をとるのか?

第3世代リーフはSUV? 日産が6月3日、第3世代「リーフ」に関して、デザインを中心とした情報を正式にリリースした。同月内には、国内で正式発表されるとの報道もある。 いわずもがな、リーフは日産EV戦略の中核であり、また次世代日産のシンボルである。 時計の針を戻せば、2000年代後半、当時のゴーン体制で日産は世界に先駆けてEV事業への本格参入を目指した最終準備段階にあった。 筆者は当時、日産が開発中のEV先行実験車両を日米で試乗している。アメリカでは、西海岸のカリフォルニア州からテネシー州へ北米日産の拠点が移転して間もないころだったが、その敷地内で同実験車両の走行や充電を体験した。 その後、リーフが発売されてから、日本、アメリカ、欧州、そして中近東でリーフを試乗したり、日産のEV開発者らが出席するEV関連の国際会議を数多く取材してきた。 元来、リーフが日産の主力EVとして量産効果を生みながら、セダンモデル、商用モデル、さらにはリーフの技術を活用した小型モビリティなど日産EVワールドを構成する計画だった。 ところが、日産の当初予想に反してEV市場はグローバルで広がらなかった。一方で、独自ブランド戦略を突き進んだテスラの存在感が増していった。 2010年代後半になると、欧州連合の執務機関である欧州委員会による欧州グリーディール政策がきっかけとなり、グローバルでEV関連事業への過剰な投資が進んだ。 そうしたなかで、日産は「アリア」や、国内では「サクラ」を導入。 中国では、BYDを筆頭として中国地場メーカーによるEV価格競争が激化し、EVに限らず日系メーカー各社の事業に大きな打撃を与えるようになった。 コロナ禍を経て、欧州でのEVバブルが収束し、中国ではレンジエクステンダーやPHEVの需要が高まり、そしてアメリカでは第二次トランプ政権による自動車環境政策の大幅な見直しや関税政策が打ち出されているところだ。 以上のようなグローバル市場の動きを踏まえて、日産は北米市場に対しては、近年拡大傾向が明らかになっているハイブリッド市場を見据えて、第3世代e-POWERの導入を進める意向だ。 同システムを採用した次期「エルグランド」も日本市場に導入されることが明らかになっている。詳細は、10月にジャパンモビリティショーで公開されるだろう。そのほか、日本市場向けは、前述の第3世代リーフやサクラに次ぐ軽EVの登場を期待したいところだ。 いずれにしても、エスピノーサ体制での日産事業再生計画が今後、正式に発表されるなかで国や地域別でのEV及びe-POWERの導入ロードマップが明らかになることだろう。

TAG: #リーフ #第3世代
TEXT:石橋 寛
テスラに続けと一攫千金を狙う !? ウガンダにもベトナムにもブラジルにも誕生した新興自動車メーカーの本気度

EVビジネスに挑戦するメーカーが多数 テスラの時価総額はイーロン・マスクとトランプ大統領の決別を受け、かなり下がったものの9000億ドル以上をキープして、自動車メーカーとしてはダントツのトップ。こうした一攫千金にも似たEVビジネスに挑戦する企業はあとを絶たず、いまや世界中にEVメーカーが乱立しているといっても過言ではありません。 ご存じ中国はもちろん、ベトナムやタイといったアジア圏に加え、アフリカやブラジルでもEVメーカーが虎視眈々と次なるテスラを目指しているのです。もっとも、なかには金に目がくらんだかのような頼りないメーカーもいたりして、玉石混交の様子ではあります。 キーラモータース/ウガンダ アフリカ初のEVメーカーとして、2018年にウガンダ政府によって創立されました。が、同国のEVは2007年に国立マケレレ大学の学生たちが作った試作車が出発点。インド市場を対象とした5人乗りのプラグインハイブリッド電気自動車、Vision 200を設計するという世界的なサミットに、アフリカから唯一参加したことがきっかけで、その後も同大がEV開発をリードすることに。2011年にはアフリカ初のオリジナルEV「キーラEV」が完成し、すぐさま政府がキーラモータースを設立して販売ということに。 やっぱり政府主導となると各国の出資も集まるからか、当初の研究室レベルからは格段の進化を遂げています。2016年にソーラーパネルを装備した電動バス「カヨーラ」をリリースすると、アフリカのニーズに沿ったものか大量輸送車をコアに据えながら、さまざまなEVを発売。いまやアフリカ大陸でEVといえばキーラモータース一択、くらいのポジションを築き上げたとか。学生のプロジェクトに目をつけて、それを伸ばして成長させ、さらには一定の成功を収めるという絵に描いたようなストーリーではあります。 ビンファスト/ベトナム 2017年に、ベトナムの最大財閥ビングループが自動車産業に参入するために設立され、当初はガソリン車からスタートしたのですが、2022年にEV専業となっています。驚くべきは翌2023年にアメリカのナスダックに上場すると時価総額が一気に1900億ドルにもふくれあがり、テスラ、トヨタに続く3番手になったこと。これにはアメリカ市場ならではのマネーマジックがあったようですが、ビンファストのEVは、マーケットの妙な動きとは裏腹に着実に存在感を増しているようです。 たとえば、2022年から主力商品となっている「VF8」はご覧のとおり、スタイリッシュなクロスオーバーSUVで、出力380馬力のデュアルモーター×全輪駆動、航続距離もエコモードならば470kmを達成するとされています。また、ベトナム国内だけでなく、アメリカやドイツにも輸出され、戦略的な値付けもあるのか飛ぶように売れているのだとか。 いまでこそEVのビンファストとして知られていますが、創業当初はピニンファリーナやBMWといったパートナーを迎え、ラクス・シリーズというなかなか攻めたモデルを作っていたわけで、EVオンリーになってしまうのはいささかもったいないような気もします。

TAG: #ビジネス #メーカー
TEXT:高橋 優
中国の勢いが止まらない! シャオペンが超最先端ADASを搭載したのに200万円台の激安EVが登場

Xpengの「XNGP」を搭載する最安EV Xpengが大人気車種のMONA M03に対して、ハイエンドADASが搭載された最上級Maxグレードを追加設定しました。発売から1時間で1.2万台以上の注文を獲得することによって、競合となる日産N7の販売にも影響が出る可能性など、競争が激化する中国大衆EVの最前線を解説します。 まずXpengについて、2024年8月末に発売をスタートした大衆セダンのMONA M03が爆発的ヒットを達成。さらに、11月から納車をスタートしている、フラグシップセダンのP7+も月間1万台級の販売台数に到達。これはとくに競合として圧倒的な存在であるシャオミSU7とテスラ・モデル3に次ぐ販売台数であり健闘しているといえます。 この2車種の大ヒットによって、6カ月連続で月間3万台の大台を突破しており好調です。ちなみにXpengは2025年Q1決算においても過去最高の決算内容を実現。Q1販売台数は9.4万台を達成して、前年比+331%という爆増を実現しながら、2023年中盤でマイナスに転じていた粗利益率も15.56%と過去最高水準に到達。さらに営業利益率も-6.59%と、Xpeng史上過去最低水準の赤字幅に抑えることに成功し、2025年Q4における黒字化目標に向けて順調な様子が見て取れます。 そして、Xpengが新たに発売をスタートしたのがMONA M03のMaxグレードです。じつはM03のMaxグレードは、当初2025年2月中に納車をスタートさせる予定だったものの、想定をはるかに上まわる通常グレードの需要によって発売が延期されたのです。実際に通常グレードの販売集中のおかげで、M03は現在月間1.5万台級の販売規模を実現しています。 このグラフは、主要BEVセダンの月間販売台数の変遷を示したものです。トップはシャオミSU7であるものの、4月はM03がNo.2にランクインしています。また、BYDの新型大衆セダンQin L EVも4月は7600台以上を発売。さらに日産N7も大規模納車がスタートし始めており、よってM03としてはMaxグレードを追加することで、競合を迎え撃つ体制を構築しようとしているのです。 今回のMaxグレードにおいてもっとも特筆するべきは、Xpengの最新自動運転システム「XNGP」が標準搭載されているという点です。Xpengの強みはEnd to Endのビジョン方式のハイエンドADASであり、このXNGPを目当てにXpengのEVが人気となっているほどです。 これまでの通常グレードはレベル2 ADASであるXpilotしか搭載されていなかったため、ついにXNGPをM03でも使用可能となり、XpengのハイエンドADASを採用する最安EVとして期待が集まっているのです。 MONA M03は全長4780mm、全幅1896 mm、ホイールベースが2815 mmというミッドサイズセダンセグメントに該当します。車両サイズではテスラ・モデル3と似通ったサイズ感であり、このM0″3″の3もモデル”3″をリスペクトしての命名です。 そしてMaxグレードの発売にあたり、発売開始9カ月という段階でマイナーチェンジを実施しました。とくに新色の内外装カラーを追加設定しながら、ホイールデザインも変更。3.3kWのV2L機能を標準設定したり、シート機能をマッサージにまで対応させるという豪華シートにアップグレード。 これまでのM03の痒いところに手が届くようなマイナーチェンジが発売開始たったの9カ月で行われるという、中国勢の爆速開発体制の様子が見て取れるでしょう。

TAG: #Max #MONA M03 #Xpeng
TEXT:すぎもと たかよし
EVシフト全開のアウディ! Q6 e-tronの新たなデザイン表現をプロが斬る!!

伸びやかで柔らかなスタイリングへの移行期? e-tronシリーズとしてBEVラインアップを着実に進めるアウディが送り出した新型Q6 e-tron。新型プラットフォームによる優れた総合性能と高い効率はもちろん、新しいデザイン哲学もまた注目ポイントとされています。そこで、今回はあらためてそのエクステリアデザインの特徴をチェックしてみましょう。 まず、全体を見渡すとポルシェと共同開発したBEVプラットフォームにより、非常に長いホイールベースと短いオーバーハングの伸びやかなボディに気付きます。また、キャビンフォワード気味に寝かされたAピラーによるキャビンは比較的スリムですが、緩やかに下るルーフラインに沿いつつ、リヤタイヤへ大きな荷重がかかって見えるのもポイント。 近年のアウディデザインは、2014年からデザインを統括してきたマーク・リヒテ氏による筋肉質でエッジの効いたスタイリングが特徴でした。ただ、昨年その後任に就いたマッシモ・フラセッラ氏の影響もあるのか、このQ6では意外にも全体の印象がソフトに変化していることに気付きます。 で、フロントの見所といえば、Q4 e-tronでも見られた開口のないシングルフレームですが、ブラックもしくはボディ色にすることでQ4ほど「浮いた」感じにはなっていません。もうひとつ、フロントではこれまた開口のないサイドエアインテーク部の広大さに目が止まります。 この部分、Q4では金属パーツを使った「ガソリン車風」でしたが、Q6では広く平面的な樹脂製のブラックパーツで覆われ、いかにもBEVであることを提示しているよう。ここは新型のA6 e-tronも同様の表現になっているので、BEVとしての新しい見せ方なのかもしれません。

TAG: #Q6 e-tron #デザイン
TEXT:桃田建史
オワコン化した世界のモーターショーが身の丈にあった提案で復活しつつある! いまのモーターショーの役割とは?

多くのフランスメーカーが出展 フランスでパリモーターショー(一般公開2024年10月14〜20日、於:ポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場)が開催された。パリモーターショーといえば、前回の2022年開催ではいわゆる「オワコン」と称されるような厳しい状況だった。 それが2024年は、出展メーカーは欧州メーカーといってもやはりフランスメーカーがほとんどで、そこに中国メーカーが加わるといった形だった。 ショーの規模としては、在りし日と比べれば圧倒的に小ぶりになったとはいえ、メディアにとっても来場者にとっても有意義な内容で満足したという声が少なくない。地元フランスメーカー各社が、次世代に向けた発想を世に問う姿勢を明確にしたのだ。 モーターショーといえば、日本では東京モーターショーがコロナ禍を経て、ジャパンモビリティショーへと進化し、成功を収めた。 だが、北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)も精彩を欠き、また独フランクフルトショーはミュンヘンショーとなり、そしてスイスのジュネーブショーは消滅してしまうなど、世界のモーターショーはいま、大きな転換期に直面している。 そうしたなかで、パリモーターショーは、いまのフランス、そしてこれからのフランスをユーザーの生活に対して等身大で表現したことで、来場者がその場を心地よく感じたのだと思う。 自動車業界の視点で見れば、いまのフランス、いまの欧州は、急激なEVシフトの揺り戻しによる、いわば「踊り場」といったところだ。2010年代後半から、欧州連合による欧州グリーンディール政策では、「2035年までに欧州域内での乗用車新車100%をZEV(EV及び燃料電池車)化」を政策パッケージとして掲げていた。 だが、ドイツが「合成燃料を使用する内燃機関もそれに含めるべき」との主張があり、当該政策パッケージに関する法案はいま、宙に浮いた状態だ。 日本が主張してきた、2050年カーボンニュートラルには多様なパワートレインを国や地域の社会状況に応じて臨機応変に対応する、マルチパスウェイに対する認識が高まっている。 いまだからこそ、パリモーターショーが目指したのが、実現に向けてけっして無理のない形でのカーボンニュートラル関連の展示、そして未来に向けた楽しい生活を送るための新しいモビリティの提案だ。 欧州で超小型車に分類される、シトロエン「AMI」が多様なカラーリングや仕様で展示されていたのは、そうしたパリモーターショー主催者の想いが具現化されたといえるだろう。

TAG: #パリモーターショー #フランス
TEXT:山本晋也
EVを蓄電池代わりにして電気代を浮かして得する……のは不可能! V2Hに経済的なメリットを求めるのは間違いだった

EVのバッテリーを住宅につなぐ「V2H」 EVの活用や補助金情報を検索していると「V2H」という言葉を見かけることがある。これは“Vehicle to Home”を省略したもので、Vehicle(クルマ)とHome(住居)をつなぐという意味。EVのバッテリーを自宅で利用できるようにする機器やシステムのことを指している。 簡単にいうと、グリッド(電線)からの電力を使わずに、EVのバッテリーに溜めてある電力で家電などを動かそうという仕組みといえる。 太陽光発電を設置しているのであれば、蓄電池を設置して電力消費を抑えるという手段もあるが、定置型蓄電池の代わりにEVのバッテリーを利用することで、蓄電池ぶんのコストを抑えつつ、電気代も抑えてしまおうというソリューションだ。 なお、日本国内で流通しているV2H機器は、急速充電CHAdeMOを利用してEVとつなぐ設計となっているものがほとんどすべてといった状況だ。そのため、CHAdeMOに対応していない一部のEVではV2Hを利用できないという現実もある。 それはともかく、V2Hを導入すると、果たしてどれほどオトクになるのだろうか。 現状での結論は、「保険としての役割を無視すると金銭的メリットが大きいとはいいがたい」といったものになる。 というのも、V2H機器の設置には工賃を含めて100万円以上のコストがかかることが多い。EV購入時の補助として知られるCEV補助金にはV2Hシステム向けの補助金もあり、それを利用すると機器代と工賃に対して、最大45万円の補助金が期待できる(過去の実績であり現時点では未発表。詳細はhttps://www.cev-pc.or.jp/hojo/v2h_contact.html)。 地方自治体によっては、さらに多額の補助金が支給されることもある。たとえば、東京都の場合であれば自己負担は20万~80万円ほどになると試算されている。

TAG: #V2H #災害
TEXT:高橋 優
テスラ・モデルYキラーに世界が驚いた! 中国シャオミの新型SUV「YU7」の「安ウマ」っぷりがスゴイ

シャオミがYU7をワールドプレミア シャオミが2車種目のEV「YU7」のワールドプレミアを行いました。驚異的な完成度を実現したことによって、いよいよテスラ・モデルY一強時代の終焉が到来する可能性が高まりました。 まず現在、シャオミはSU7を発売中であり、すでに発売開始から1年以上が経過したものの、その月間販売台数は3万台弱という規模にまで継続的に成長中です。そして、2車種目となるYU7について、全長4999mm、全幅1996mm、全高1600mm、ホイールベースが3000mmという中大型SUVセグメントに該当します。たとえばポルシェ・カイエンが全長4930mm、全幅1983mm、ホイールベースが2895mmであることから、カイエンよりもひとまわり大きいサイズ感として、大きさが求められる中国市場においても十分なサイズ感といえます。 今回のワールドプレミアにおいて発表されたYU7のスペックについて、とくに今回は直接の競合であるテスラ・モデルYと比較します。まずYU7は、RWDの標準グレードとともに、ProとMaxという3グレード展開。Proには96.3kWhのBYD、もしくはCATL製LFPバッテリーとデュアルモーターを組み合わせ、Maxには全グレード共通のV6s Plusモーターを後輪、V6モーターをフロントに搭載し、その上で101.7kWhのCATL製三元系Qilinバッテリーを搭載。 そして、エントリーグレードであるRWDグレードの航続距離は835kmを達成し、これはセダンであるSU7の94.3kWhバッテリーを搭載した、Proグレードの830kmすらも上まわる航続距離の長さです。 なぜSUVであるはずのYU7の電費がここまで優れているかの理由が、全グレード800Vシステムを採用してきているという点でしょう。電力損失を低減しながらハーネスの小型化などによる軽量化も実現可能です。確かにモデルY RWDの11.9kWh/100kmという電費と比較すると、YU7が電費で不利であるように見えます。ところがYU7はポルシェ・カイエン級の中大型SUVであり、その上で100kWh級の大容量バッテリーを搭載しているという点を加味すれば、この電費性能は中国市場においてもトップクラスの効率性であるといえるのです。 また、充電性能について、全グレード800Vシステムを採用してきたことによって、96.3kWh LFPバッテリーの場合はSOC10%から80%まで21分間で充電可能。さらに最上級Maxグレードの場合、5.2C充電に対応させることで、SOC80%まで12分間で充電可能。15分間の充電で620km分の航続距離を充電可能という、セグメントトップクラスの充電スピードを実現しています。 動力性能もまったく抜かりがなく、エントリーグレードのRWDグレードでも0-100km/h加速は5.88秒、最高速は時速240kmを実現。Maxグレードは最大690馬力を達成し、0-100km/h加速は3.23秒、最高速も時速253kmを実現します。 さらに、CDC付きのデュアルチャンバーエアサスペンションによって、最低地上高は最大で222mmを確保可能。ボンネット下には141リットルもの巨大なフロントトランクを確保しています。 また、インテリアについて、16.1インチの3Kの解像度を誇るセンタースクリーンとともに、1.1mもの横長の投影スクリーン「Xiaomi HyperVison」を初採用。リヤには6.68インチのタッチスクリーンも搭載。 これらのインフォテインメントシステムを駆動するのが、モバイルプラットフォームで採用されているQualcomm Snapdragon 8 Gen3の存在です。これはシャオミ15 Ultraなどのフラッグシップスマートフォンで主流のSoCであり、現在主流のSnapdragon 8295と比較しても性能向上が見込まれます。

TAG: #YU7 #シャオミ
TEXT:琴條孝詩
EV乗りにとって恐怖の電欠! EVオーナーが語る地獄を見ないための5箇条

最新のEVでも油断は禁物 電気自動車(EV)に乗るうえで気になるのが「電欠」だ。ガソリン車の「ガス欠」に相当し、とくに長距離ドライブや土地勘のない場所では不安になる。EVの航続距離は年々伸びているが、それでも油断は禁物だ。いざというときに慌てないためには、電欠時の対処法と事前の備えを知っておく必要がある。 <電欠直前ではとにかく停車!> ほとんどのEVユーザーは、電欠にそなえて早め早めの充電を心がけ、また急速充電器の場所を事前に調べていることだろう。しかし、予定していた急速充電器が故障中などで使用できなかったときに「その事態」は訪れる……。 通常、多くのEVはバッテリー残量が20〜10%を切ると、車両の警告が表示される。さらに残量が少なくなると、出力制限がかかるなど走行性能に影響が出る。そういう状態でアクセルの反応が鈍くなったと感じたら、すぐに停車を検討すべきだ。高速道路を走行中に電欠が迫った場合は、サービスエリアやパーキングエリア、または非常駐車帯にできるだけ早く退避する。一般道ではコンビニやスーパーの駐車場、公共施設の駐車場など、安全でほかの利用者の迷惑とならない場所を選ぶ。 電力が完全に尽きるとハザードランプも使用できなくなる可能性があるため、早めの判断が重要となる。 <ロードサービスやアプリを活用> 停車後は、保険会社のロードサービスやJAF、カーメーカーの緊急サービスセンターなどに連絡する。EVのなかには、車内からオペレーターに連絡できるボタンが備わっているものもある。事前に緊急時の電話番号も調べておくといい。 近年、JAFなどのロードサービスではEV対応を強化しており、EV専用の可搬型急速充電車やレッカーによる牽引が行なわれる。応急的に普通充電を行えるサービスもあり、数kmの移動に必要な電力を確保することも可能だ。

TAG: #対策 #電欠
TEXT:桃田健史
自動車メーカーですら苦戦する「EV」に電子やITメーカーが参入するのはなぜ? どこに「勝ち筋」を見いだしているのか

多くの非自動車メーカーがEV市場に参入 「ソニー」や「シャープ」など、電気/電子系やIT系のメーカーが近年、EV市場への参入を正式に発表している。こうした話は、コンセプトモデルや将来構想というレベルでは、随分前から国際展示会・見本市、または各社の自社で開催するイベントなどで紹介されることがあった。 そしていま、各社は量産に向けた準備に入ったわけだが、そこにユーザーとしてどんなメリットがあるのだろうか? まず触れておきたいのは、なぜ非自動車メーカーのEV参入が目立つようになったのか、という点だ。そこには自動車産業を取り巻く技術的な環境の変化がある。 2010年代半ば、ドイツのメルセデス・ベンツ(当時ダイムラー)がCASEを提唱した。通信によるコネクテッド、自動(自律)運転、シェアリングエコノミーを活用した新サービス、そしてEVに代表される電動化のことを指す。 それが2010年代後半になると、ESG投資の嵐がグローバルで吹き荒れた。従来のように財務状態だけではなく、環境、ソーシャル(社会性)、ガバナンスを重視した投資のことである。 このトレンドによって、一時期はやや停滞気味だった自動車メーカー各社のEV投資が活発化し、また非自動車メーカーでもESG投資を念頭としたEV戦略を描くようになったといえる。

TAG: #メーカー #発表
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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