音質にこだわる人はAWDがオススメ
<試乗のときから気になってはいた>
正直なところ、試乗の段階からなんとなく気にはなっていた。営業担当者にボリュームを上げていただいて、しばらく音楽を聴かせてもらったのだが、なんというか音が少し”細い”。旧型のモデルYで感じた、車内全体がふわっと鳴るあの感覚がない。「音は旧型のほうがいいですね」と営業の方自身がおっしゃっていたが、そのときは「まあ、そういうものか」と深く考えなかった。
テスラはEVなので、エンジンノイズはゼロだ。しかしそのぶん、タイヤからのロードノイズや高速域での風切り音が相対的に気になりやすくなる側面がある。とはいえ、新型モデルYは旧型と比べて静粛性が明確に向上しているので、音響の質の良し悪しがより際立って聞こえるという側面もある。純粋に音楽に集中できる環境としては、悪くない。
テスラの車内には音楽アプリがいくつかプリインストールされており、自分が契約しているサービスをそのまま使える。私が普段愛用しているのはApple Musicだ。

<テスラのApple Music事情>
納車後、さっそくさまざまなジャンルの音楽を再生して試してみた。音源はBluetoothでつないだiPhoneのApple Musicだ。
以前、テスラ内蔵のApple Musicの音質を検証したことがある。テスラのApple Musicでは、音楽データの圧縮に64〜128kbps程度のHE-AAC(High-Efficiency Advanced Audio Coding)コーデックを使用しているとされていた。同じ曲でデータ消費量を比較してみると、たしかにテスラのほうが小さかった。
このHE-AACというのは、AACの拡張版だ。低いビットレートでも高音質な伝送を可能にする技術で、帯域が限られた環境に強い。そのため「低音質」と一概にはいえないものの、TIDALのロスレスや、少しビットレートの高いSpotifyと比べると、細かなニュアンスの再現という点では一歩譲る印象は否めない。
ただ、2025年末のファームウェア・アップデートで、Apple Musicの音質がよくなったと感じた。iPhoneのApple Musicとさほど変わらない。SNSを検索してみると同様の声が多数上がっていた。海外フォーラムでも同じように音質が良くなったとの評判が広まっており、テスラからの公式な発表はないものの、通常のAAC(256kbps)に近いビットレートで再生されるようになったのではないかという見方が広まっている。
<音に包まれる感覚がない>
いずれにしても、だ。
もともと「音響がすばらしい」と評判だった13スピーカーの旧型モデルYと比べて、新型RWDの9スピーカーは正直、物足りない。明らかに異なるのは、車内空間全体が鳴って音に包まれる感覚がないことだ。
フロントのダッシュボード付近から音は聴こえる。その音自体は、けっして悪い音ではない。クリアで解像度も高い。だがそれだけなのだ。後方から音がまわってこない。低音の厚みが足りない。音楽を再生しているというより、前から音が聴こえてくるだけ——そんな印象になってしまう。
スピーカーの数が主な原因であることは間違いない。とくにサブウーファーがないRWDでは低音域の再現性に限界がある。AWDは旧型モデルYと同等以上の16スピーカーが搭載されているので、音響にこだわりたい方はAWDを選ぶべきだろう。

<設定変更で多少マシになった>
私はRWDのチープな音が気になりはじめ、オーディオ設定を調整することにした。
まず、イコライザーの「トーン」設定で低音(バス)と高音(トレブル)をそれぞれ増やした。これで多少の迫力は出る。しかし、それよりもはるかに効果が大きかったのが「バランス」の調整だ。
音場の中心をぐっと後ろにずらした。リヤシートの後方あたりを軸にするイメージだ(画像リヤシート上の白い丸)。
これが効いた。前からだけ聴こえていた音が、まわりをぐるりと取り囲むように変化した。あの「音に包まれる」感覚が、ようやく戻ってきたのだ。リヤシートで聴いていても違和感はない。スピーカーの絶対数が少ないことはどうにもならないが、設定を追い込むことで、まぁ納得のいくモデルYの音空間ができあがった。

試行錯誤の末にたどり着いた設定——これがいまの私の答えだ。RWDオーナーの方には、ぜひ一度試してみてほしい。案外、純正のままでも工夫次第でここまで変わるのか、と驚いてもらえるはずだ。
それにしても「オーディオ沼」というのはなかなか侮れない。できればサブウーファーを増やしたいと思い、いろいろと探してみるが、そのような製品はない。いまのところこれで満足するしかないのが現実的だ。とはいえ、駐車中ならより没入感満載で音楽が楽しめるのはモデルYの静粛な空間とより良い音質ならでは、といえよう。今後、テスラはApple Musicのロスレス音質にも対応するかもしれないというウワサもあるので、じっくりと時がくるのを待つことにしよう。























































