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劣化するのはバッテリーだけ? EVの寿命を考える


TEXT:琴條孝詩 PHOTO:TET編集部
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EVの寿命はいつ?

EV(電気自動車)の懸念点としてもっとも多く挙げられるのが「バッテリーの劣化」だ。だが冷静に考えると、バッテリー以外の主要部品、駆動モーターやインバーターなどは劣化しないのだろうか。いや当然ながら、これらにも劣化や経年変化は存在する。ただし、劣化といっても、それは即故障を意味するわけではない。重要なのは、その進行速度と実用寿命との関係である。EVの動力システム全体を俯瞰することで、その信頼性が見えてくる。

日産リーフ

<バッテリーの劣化の実態>

まずバッテリーの現状を整理しておこう。カナダのテレマティクス企業Geotabの大規模分析によれば、2万2千台以上のEVデータを分析した結果、バッテリーの年間平均劣化率は2.3%だった。この傾向が続くと8年後でもバッテリーの健全性(SOH)は約80%程度にとどまると推定されるという。

EV用のバッテリー

充電方式による劣化にも注目すると、同じGeotabの分析では充電電力と充電頻度が劣化に大きく影響することも示されている。100kWを超えるDC急速充電に大きく依存する車両では平均して年間3.0%の劣化率を示し、主にACまたは低電力充電を使用する車両では1.5%の劣化率だったとのこと。ただし、いずれも極端に高い劣化率ではないともいえるだろう。充電頻度に関しては、頻度の高い急速充電は相対的に劣化率を押し上げる傾向があると報告されている点にも注意したい。

<モーターの劣化は起こるのか>

では、EVの核心部品である駆動モーターはどうか。現在のEVのほとんどはAC(交流)モーター、とりわけ永久磁石同期モーター(PMSM)を採用している。ACモーターには燃焼室やピストン、バルブといった往復運動部品が存在しないため、内燃機関と比較すれば機械的な摩耗部位は圧倒的に少なく、巻線や磁石、軸受けが主な寿命決定要素となる。巻線は絶縁体の劣化や絶縁破壊が発生するが、適切な温度管理と定格内使用が前提であれば、理論上は数十年単位の寿命が見込まれる。

EVのモーター

磁石に関しては、NdFeB(ネオジム磁石)を代表とする希土類磁石が主流で、高温環境や強い逆磁界が長期間かかることで磁力が低下する懸念がある一方、EV用モーターは冷却系や電流制御で温度を抑制するため、規格内での使用であれば著しい磁力低下は生じにくいとされる。

また、モーターの回転子を支える軸受けは、油脂の劣化や摩耗が進むことで「異音」や振動が発生する原因となるが、実走行データや実機試験では、20万km超の走行実績はめずらしくなく、用途によっては40万kmに達した事例もあり、自動車全体の寿命よりもモーターが先に機能停止するケースは稀とされている。

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