実走行ではカタログの7〜8割が目安となる
<なぜ実走行では距離が短くなるのか?>
では、なぜ実際の走行距離はカタログ値よりも短くなるのだろうか。一般的に、実航続距離はカタログ値の7割から8割程度が目安とされている。カタログ値が500kmのEVであれば、350kmから400km程度が現実的な数値となる。この乖離を生む主な要因を挙げよう。
まずは、エアコンの使用だ。とくに冬場の暖房は電力消費が大きい。EVはICE(内燃機関)車のように排熱を利用できないので、暖房の際、電力だけを利用して車内を暖める。これが要因となって航続距離が大幅に短くなることがあるのだ。
次に運転スタイルも影響する。これはICE車でも燃費が悪くなる要因になりうるが、急加速や急減速は電力を大きく消費する。反対に、EV特有の機能として回生ブレーキをうまく活用した穏やかな運転は、航続距離を伸ばすことにつながる。同様に渋滞や頻繁な信号停止、急な登坂路などは電力消費を増やす。高速道路での高速巡航も、空気抵抗が大きくなるため電費が悪化しやすい。
外気温も重要だ。気温が低い冬場は、リチウムイオンバッテリーの性能が低下し、蓄えられるエネルギー量や出力が減少する。これにより航続距離も短くなる。
最後に挙げられるのがタイヤの状態だ。空気圧が低いタイヤや転がり抵抗の大きいタイヤは、走行に必要なエネルギーを増やし、航続距離に影響を与える。
以上のような要因が複合的に絡み合うことで、カタログ値と実走行距離の差が生まれるのである。
<カタログ値をどう読み解くか?>
カタログ航続距離が実走行と異なるからといって、その数値が無意味なわけではない。前述のとおり、WLTCモードはすべての車種を同じ基準で測定しているため、車種間で航続性能を比較検討する際には非常に有効な指標となる。また、現在もっとも実測値に近いといわれているのが、米国で用いられているEPAモードである。米国で販売されているEVであれば、この数字を参考にするのもいいだろう。
ともあれ、EVを選ぶ際には、カタログ掲載の航続可能距離は単なる「ものさし」に過ぎないので鵜呑みにするのはやめ、実際の距離としては2割程度低く見積もって考慮することが重要だ。そのうえで、自身が本当に必要な航続可能距離を考えてみよう。たとえば、毎日の通勤距離が往復50km程度であれば、実航続距離が300km程度のEVでも余裕をもって対応できるし、週末に長距離ドライブを頻繁に楽しむのであれば、より航続距離の長いモデルを選ぶか、途中の充電計画を立てる必要があるだろう。
結論として、カタログ航続距離はEVの性能を知る上での出発点である。現実的には、カタログ500kmであれば、条件がよくても実用上は400km程度をひとつの目安と考え、冬や高速移動、空調強めの運用ではさらに余裕を見て計画するのが安全だ。カタログ値は詐欺的な数字というより、比較基準としては有用だが、使い方の前提を外すと簡単にズレる数字——そう理解して付き合うのが、EVの航続可能距離を読み解くうえで失敗しないコツである。






















































