カタログ値はあくまで参考にすぎない
EV(電気自動車)を初めて購入した人が、乗り始めてすぐに感じる疑問がある。それはEVのカタログに記載された航続可能距離と実際に車内のメーターに表示された距離の差が大きいこと。「カタログ値540kmなのに440kmしか表示されない。実際に走ってみても、長距離走行でも400km前後。これは詐欺ではないか?」という戸惑いの声がSNSで散見される。
しかし、カタログの数値は決して詐欺ではなく、国際的に定められた特定の測定方法に基づいて算出されたものだ。ここでは、この航続可能距離の謎を解き明かし、EVと賢く付き合うための知識を解説しよう。
<カタログ航続距離の算出方法「WLTCモード」>
EVのカタログに記載されている航続距離は、「WLTCモード」という国際的な試験法で測定されている 。WLTCは「Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycle」の略称で、世界中のさまざまな走行環境を反映させるために策定された基準だ。
この測定は、現実の走行条件を模した「市街地」「郊外」「高速道路」を想定した「低速・中速・高速(超高速を含む)」といった複数の走行パターンを組み合わせて行われる。シャシーダイナモと呼ばれるローラーの上で、規定された速度パターンで車両を走行させ、その際のエネルギー消費量を測定する。そして、試験で測定された電費(消費電力量)をもとに、満充電時の航続距離を算出するのだ。
重要なのは、この試験が温度や湿度などが管理された室内で行われることだ。エアコンなどの電装品は基本的にオフの状態で測定されるため、現実の走行で必ず発生するさまざまなエネルギー消費要因が排除されている。そのため、WLTCモードの数値は、あくまで異なる車種の性能を同じ条件下で比較するための「ものさし」であり、誰もが必ず達成できる実用的な航続距離を示すものではないのである。



















































