まさかこんなふうに世の中が変化してしまうとは……
コロナ禍となり、世界のモーターショーシーンが一変した。衝撃的だったのは、スイス・ジュネーブショーのドタキャンだ。3月3日開催だったが、2月末にいきなり中止が発表されたのだ。

さらに驚きだったのは、それに伴い急遽仕立てられたオンラインでの自動車メーカー各社のプレス発表だった。メルセデス・ベンツはドイツからの配信となったが、過去に事例がないドイツ国内スタジオでの社長インタビューといった作りだった。その後、各メーカーもオンライン会見を開いたが、その多くはイメージ動画を流すといった抽象的な表現にとどまった。
そもそも欧州では2010年代半ばごろから「モーターショーは本当に必要か?」という議論が巻き起こっていた。実際、筆者はパリショー主催者代表と「モーターショーのあるべき姿」について意見交換したが「このままでは消滅する」という主催者の本音を聞いている。
背景にあるのは、メルセデス・ベンツが提唱したマーケティング用語である「CASE」だ。通信によるコネクテッド、自動運転技術、シェアリングなどの新サービス、そしてEVを筆頭とする電動化だ。こうした技術やサービスの変化に加えて、ユーザーの自動車との接し方や考え方など社会変化からも、モーターショーの意義を問い直すべきという自動車産業界での風潮になったといえよう。

また、次世代自動車技術のお披露目の場としては、米ネバダ州ラスベガスで開催の世界最大級IT及び家電等の見本市のCES(コンシューマエレクトロニクスショー)台頭の影響が大きかった。
さらに、アップルやグーグル(親会社はアルファベット)、半導体のNVIDIA、そして台湾の鴻海(ホンハイ)などは自社イベントで新製品や新技術を発表する手法を取り入れるようになり、自動車メーカー各社もオンライン開催を含めて自社イベントの強化を進めるようになっていたことも、モーターショー抜本見直しに拍車をかけた。
そんななか、長年にわたり自動車産業を牽引してきたドイツがいち早く、モーターショーという考え方から脱却した。ドイツ国際モーターショー(IAA)は、フランクフルトで2年に一度開催されてきた。日本も含めて一般的にフランクフルトモーターショーと呼ばれ、メルセデス・ベンツが巨大な独自ブースを展開するなど、地元ドイツ勢の力強さが目立っていた。

ところが、コロナ禍を受けて、モーターショーを抜本的に見直す動きがドイツで加速し、2021年には開催場所をフランクフルトからミュンヘンに移転。名称をIAAモビリティとして再出発を図ったのだ。初回はコロナ禍であったことから開催規模は限定的だった。
こうしたドイツでの大きな変化が日本にも影響を及ぼし、2023年からはそれまでの東京モーターショーを改めてジャパンモビリティショーへと進化したことは記憶に新しい。

IAAモビリティは、まさに100年に一度の自動車産業大変革期を象徴する存在だ。今後どのように変化していくのか、日本の自動車メーカー関係者からの期待が高い。
















































