コラム
share:

桃田 健史の視点、JMS関連報道で目立つ「日本が世界に対してEVで出遅れ感」に対する違和感とは


TEXT:桃田 健史
TAG:

第1回ジャパンモビリティショーが開幕したが、テレビニュースなどでは「日本のEV出遅れ感が浮き彫りになった」といった切り口の報道を見かけることが多い。はたして、そうした見方は本当に正しいのだろうか。

東京モーターショー改め、新生「ジャパンモビリティショー」として開幕した今回のショー。

◆写真②:トヨタのEVコンセプト「KAYOIBAKO」。筆者撮影。

 

東京ビッグサイトの東館には、トヨタ、ホンダ、日産、スズキ、マツダ、三菱、スバル、日野、いすゞなど、日系メーカー大手を筆頭にメルセデス・ベンツ、BMW、そして中国のBYDなどが大きなブースを構えた。
各社が展示したコンセプトモデルのほとんどがEVであり、また既存の量産車についてもEV推しが目立った印象がある。

こうしたジャパンモビリティショーでの光景を真正面から捉えれば、「世の中は大きなEVシフト」が起こっており、「日本も近い将来、EVが当たり前の世の中になっていく」と思われるかもしれない。
だから、開幕初日を取材した、テレビのニュース番組や新聞、そして経済系のネットニュースなどでは、こうした会場の様子を”別の角度”から表現したといえるだろう。
それが、「日本のEVに対する出遅れ感」だ。
果たしてそれは本当か?

一歩先んじた海外ショーのEVシフト

確かに、グローバルのモーターショーや次世代車を発表する各種のショーにおける、近年の流れを振り返れば、今回のジャパンモビリティショーに先んじて、グローバルでのいくつかのショーでは一気にEVシフトが進んだ印象がある。
例えば、中国では2010年代初頭から国の政策としてEVシフトを打ち出し、中国全土の中規模または大規模な都市を中心とした、公共交通機関のEV化を進め、その流れを一旦軌道修正しながら、乗用車のEVシフトを国として推し進めた。そうした国の政策が、北京ショー、上海ショー、広州ショーなどを通じて国民に広く広報されてきたという経緯がある。

また、2016年に発効したCOP21(国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議)での「パリ協定」。さらに、2018年にCOP21が示した、いわゆる「1.5度努力目標」が転機となり、2050年カーボンニュートラルがグローバルで注目される中、欧州連合がいち早く、欧州グリーンディール政策を掲げ、その中で大胆なEVシフトを打ち出した。
これにより、欧州のモーターショーは様変わりしていくことになる。

◆写真③:BYD「SEAL」の展示。ジャパンモビリティショーにて。筆者撮影。

先読みができない状況で、各社それぞれの主張

海外でのモーターショーにおけるEVシフト、また今回のジャパンモビリティショーでのEVシフトがどのような演出になったにせよ、グローバルでの課題は「将来の自動車のあり方が先読みできない」状況であることに変わりはない。
なぜならば、グローバルでの自動車市場の流れは、技術先行型だけではなく、国や地域での環境政策や投資政策による規制等に大きな影響を受けており、仮に各国で政権交代が起こると、自動車関連施策が大きく変わる可能性を秘めているからだ。

また、ウクライナ侵攻や、中東での戦闘など極めて深刻な事態の発生に伴う、経済活動の不確実性を日本も含めたグローバルの人々が実感しているところだ。
さらに、電動化の視点では、国や地域によって、EVシフトを支えるための社会環境には大きな差がある。
そうした中で、グローバルで経済活動を行っている日系大手自動車メーカー各社が、単なるEVシフトではなく、様々なパワートレインや燃料の活用を視野にいれた事業戦略を描くことは当然だ。
そうした中、ジャパンモビリティショーでは、日系メーカー各社が考えるEVのあり方を示したといえるだろう。

◆写真④:日産の展示の様子。筆者撮影。

これを、海外ショーとEVシフトに向けた演出を強化した時期の差だけを切り出しての、「日本がEVシフトで出遅れている」という表現には少々無理がある。
ジャパンモビリティショーの会場内を巡り、各社関係者と意見交換しながら、そう感じた。

以 上

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本に何が起こった? BEVが売れない……ハズが2025年10月は電気自動車が売れまくっていた
エンジンサウンドが聞こえてシフトショックも感じられるEVが超進化! ヒョンデ「IONIQ 5 N」がマイナーチェンジ
60年もの不動車がバッテリー交換だけで走り出した! EVの長期保管はエンジン車よりも簡単!!
more
ニュース
日本にも来春やってくる韓国Kiaの商用EVバンが快挙達成! 「PV5」がアジアメーカー初の「インターナショナル・バン・オブ・ザ・イヤー」を満場一致で受賞
2025年度でもっとも優れた輸入車は日本で唯一の電動ミニバン! フォルクスワーゲンID.BUZZが「2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー」で二冠に輝く
EVだけじゃなく水素でも世界をリードする! 「ヒョンデ」がジャパンモビリティショー2025で新型ネッソを本邦初公開
more
コラム
「EVは下取りが安い」は事実! 逆にいえば「上質な中古車」が安く買えるんじゃ……と思ったらそのとおりだった
やっぱりBEVが売れる中国ではブランドによって明暗クッキリ! 経営立て直し中の日産は販売好調!!
踊り場はEVのありかたを見直す大切な時間! 歴史を感じる奈良で開催されたEV試乗会で思う電気自動車の現在地
more
インタビュー
「BMWの核はセダン」。「i5」での表現は、BEV世代のセダンの在り方を示している。
「i5」の造形を、BMWエクステリア・デザイン責任者がディテールから語る
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 4]
more
試乗
【試乗】速さはスーパースポーツ並! AWD技術も完成の域! アウディS6スポーツバックe-tronに望むのは「感性に訴えかける走り」のみ
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
マイチェンで名前まで変わった「アウディQ8 e-tron」ってどんな車? [Q8 e-tron試乗記]
more
イベント
軽自動車市場参入を表明したBYDの軽EVはスライドドアのスーパーハイトワゴン!? 注目モデルが目白押しなジャパンモビリティショー2025のBYDブースは要注目
三菱自動車、東京オートサロンに2台のカスタムEVを展示
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択