PHEVではなくHEVが見直されている
電気自動車(EV)の販売が必ずしも順調に伸びず、ホンダは2040年に販売する新車をすべてEVまたは燃料電池車(FCV)とする方針の見直しを正式に発表した。世論はマルチ・パス・ウェイを指針としたトヨタの戦略に称賛を送る。市場においても、ハイブリッド車(HEV)の販売が伸び、たとえば中国のBYDもEVだけでなくプラグインハイブリッド車(PHEV)を合わせた販売で急成長している。

EVよりHEVという方向が正しいのだろうか? いまの売れ筋という視点では、HEVに注目が集まっている。しかし、ようやくそういう時代になったのかとの感慨もある。
トヨタが、世界初となる量産市販のHEV、初代プリウスを発売したのは1997年だ。それから30年近く経つ。それほど永い時間を要してようやく市場がその気になってきたことへの感慨だ。なんと長い時間を要したのだろう。

それは、環境という課題に対する消費者の認識の遅さを物語っている。改めていうまでもないが、環境とは、いま世界的に人々が注目する気候変動はもちろん、地域の大気汚染も環境問題のひとつだ。
そしてHEVの普及は、その両方に貢献できる選択肢だった。ガソリンエンジンはディーゼルエンジンに比べ大気汚染を抑制する排気の有害成分を少なくできる。かつて、クリーンディーゼルともてはやされたディーゼルターボ車も、窒素酸化物(NOx)の排出量ではガソリンエンジンを上まわっていた。しかし、多くのメーカーや媒体はそのことに触れなかった。
また、ガソリンエンジンもディーゼルエンジンと同様に燃料を直噴で供給すると、粒子状物質(PM)の排出があり、これも大気を汚染するが、それを語るメーカーも媒体も評論家もないに等しかった。

ガソリンエンジンに比べディーゼルエンジンのほうが燃費はいいことから、欧州を中心にダウンサイジングターボのかけ声で、ディーゼルターボ車の販売が2000年以降に急増した。日本市場では、輸入業者やHEV開発に余力のないメーカーなどがディーゼルターボを波及させた。それによって、かつて1970年代ほどではないにしても、大気汚染は起きている。
クリーンディーゼルと呼んだ排気浄化性能を維持しながら、加速に優れる動力性能を両立することの難しさが露呈したのは、フォルクスワーゲンによる2015年の米国での排気偽装事件だった。そこから、欧州ではEV化が急加速した。

そもそも欧州メーカーは、初代プリウスが発売された当時からHEVへ疑問を呈してきた。開発自体に新たな投資が必要なうえ、エンジンとモーター、ガソリンとバッテリーという要素が増えることで原価が高くつくためだ。そしてHEVを飛び越しEV化を急いだ。それ自体は間違った方向性ではない。排気ゼロのEVは、気候変動も大気汚染ももたらさないからだ。ただ、消費者にはそうすぐに転換できない生活習慣というものがある。そこを丁寧に対処しなかった。
また、EVで懸念されるリチウムイオンバッテリーの原価が下がるには、大量生産の成果が出るまで待つ必要があった。
日本でも、ハイブリッド車をもつのはほぼトヨタのみという状況が長く続いた。そのトヨタも、30年近い歴史を積み上げながら、全車HEVとはしてこなかった。そこに、欧州メーカーのいうHEVも原価が高いとの実態をみることができる。とはいえ、EVに比べればバッテリー車載量は少なく済むHEVは、エンジン車からEVへという道筋のなかで、採るべき手段であったかもしれない。




















































