<日本への影響と戦略的対応>
日本の対応はふたつの柱で構成される。ひとつは中国以外からの調達網構築である。総合商社の双日とJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)は、2011年からオーストラリアのレイナス社に出資し、2023年3月には約180億円規模で追加出融資を実施した。これによりマレーシア工場で精錬される重希土類の最大65%を日本向けに供給する契約を締結している。また、2024年5月には、経済産業省がフランスのカレマグ社のレアアース精錬事業に約1億ユーロ(約162億円)を拠出し、将来的に日本の需要の20%相当の供給確保をめざしている。
もうひとつの重要な取り組みがレアアース依存からの脱却である。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2024年からレアアースを使用しないモーターの開発に着手し、部品メーカーや新興企業が2027年から2028年にかけての量産化をめざしている。
その他、プロテリアル(旧日立金属)は、フェライト磁石を使用したEV駆動用モーターを試作し、レアアースを使わずに100kWの最高出力を確認した。同社は2030年代前半の実用化をめざしている。デンソーも鉄とニッケルのみで構成する「鉄ニッケル超格子磁石」の5〜10年内実用化を表明している。
また、ネクストコアテクノロジーズは、レアアース問題に対するまったく新しいアプローチとして、磁石ではなくモーターの鉄心(コア)部分を革新することで電力損失を70%程度低減可能な省エネルギーモーターを実現。そのため、性能の劣るフェライト磁石でも実用レベルになり、結果的にレアアース依存から脱却できる。
<価格競争力という新たな壁>
ただし、課題も残る。中国メーカーの磁石の価格は日本勢より安いため、部品会社は調達の切り替えや代替技術の導入をためらっている現実がある。短期的なコスト重視が長期的なサプライチェーンリスクを増大させる可能性もある。
国際エネルギー機関(IEA)は、2040年時点でも中国がレアアース精錬の78%を占め、ほぼ独占状況が続くと予測している。一方で、日本が先行投資してきたマレーシア・オーストラリア系の精錬能力が15%に達する見込みであり、脱中国依存の取り組みが一定の成果を上げる可能性も示されている。
中国のレアアース輸出規制は、確実に日本の自動車産業に影響を与えているが、2010年の経験を教訓とした戦略的取り組みが徐々に実を結び始めている。供給網多角化とレアアースフリー技術開発という二正面作戦により、中長期的には危機を乗り越える道筋が見えてきた。今後は技術開発の加速とコスト競争力確保が鍵となるだろう。
琴條孝詩












































