#電気自動車
TEXT:TET 編集部
ホンダが2026年から全世界に向けて発売する新シリーズEV! 「ホンダ0」をCES2024で初公開

2026年から投入されるホンダのEV新シリーズ 2040年までにグローバルで販売するEV・FCEV比率を100%とする目標を掲げ、そして2050年までに関わりのあるすべての製品と企業活動におけるカーボンニュートラルを実現することを目指しているホンダ。そんなホンダが、米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES2024」において、EVの新シリーズとなる「ホンダ0(ゼロ)」を発表した。さらに、そのコンセプトモデルとなる「サルーン」と「スペースハブ」、そして、次世代EV向けに新たにデザインされた「H」マークを世界初公開した。 大きく変革するホンダを象徴する新しいEVシリーズとなるホンダ0。その名称には、新たなEVシリーズの開発にあたり、「ホンダのクルマづくりの出発点に立ち返り、ゼロからまったく新しいEVシリーズを創造していく」という決意が込められている。 ホンダ0シリーズは2026年から北米市場を皮切りに、日本、アジア、欧州、アフリカ・中東、南米と、グローバル各地域へと投入されるという。 ホンダ0シリーズの開発にあたっては、新たなEV開発アプローチを「Thin, Light, and Wise(薄い、軽い、賢い)」を提唱。その新たなEVアプローチを体現するモデルとして、ホンダが提案するコンセプトモデルが、今回公開された「サルーン」と「スペースハブ」だ。 サルーンは、ホンダ0シリーズのフラッグシップとなるべきモデルで、EV専用のアーキテクチャーを採用。デザインの自由度を拡張し、ホンダM・M思想をEV時代に再現したコンセプトカーとなっている。ひと目見て他との違いを感じさせる低全高でスポーティなスタイルながら、外観からは想像できないほどの広い室内空間を両立している。 インパネはシンプルで直線的な操作が可能なデザインを採用し、シームレスなUI(ユーザー・インターフェース)を実現している。 さらに、ホンダ独自のロボティクス技術で培った姿勢制御などのモーションマネジメントシステムを進化させることで、さまざまな走行シーンでの思い通りなコントロール性の実現を目指し、EV時代の究極の「操る喜び」を追い求めたている。 一方スペースハブは、ホンダ0シリーズに共通するデザイン要素を採用し、「人々の暮らしの拡張」を提供することをテーマに開発されたミニバンのコンセプトモデルとなる。 「ユーザーの『やりたい』に即座に応えるフレキシブルな空間を備えるスペースハブが、人と人、人と社会をつなぐハブとなり共鳴を生み出す」クルマになるという。 これらホンダ0シリーズには、新たにデザインされた「H」マークが装着される。新デザインの「H」マークでは、変革への思いを示すとともに、原点を超え、挑戦と進化を絶えず追い求めるホンダの企業姿勢を表現する。 今回発表された新「H」マークを装着した次世代EVの「ホンダ0」シリーズは、2026年からグローバル市場へと投入される。

TAG: #CES #国産車 #電気自動車
TEXT:TET 編集部
レンジローバー初のEVモデルが登場! ティーザー画像と動画を公開

もっとも静かで洗練されたレンジローバーを開発 2023年12月13日(現地時間)、ランドローバーは、レンジローバー初となる電気自動車モデル「レンジローバーエレクトリック」のティーザー画像および動画を公開。 同時に「レンジローバーエレクトリック」の予約を優先的に案内するプライオリティアクセスの登録サイトをオープンした。 「レンジローバー エレクトリック」は、極端な温度環境、あらゆる気候条件、どんな地形にも対応する走破能力、850mmの渡河水深を確保すべく、現在、プロトタイプを使ってテストを行なっているという。 エンジニアたちは、史上もっとも静かで洗練されたレンジローバーを開発するという目標を掲げ、独自のアクティブ・ロードノイズ・キャンセリング・システムとサウンドデザインに加え、モダンラグジュアリーを体現するEVならではの静穏で快適なキャビンを実現。 800Vのアーキテクチャーを採用し、公共充電ネットワークでの急速充電に対応する(欧州仕様)。 また、簡単な充電、エネルギーパートナーシップ、無線通信でソフトウェアのアップデートができるSoftware-Over-The-Air(SOTA)、航続距離を最大化する技術などシームレスなEVエクスペリエンスを提供。 レンジローバーの模範的なデザインを踏襲しながら、EVモデルならではの先進的なルックスを実現している。ぜひティーザー動画で確認してほしい!

TAG: #EV #SUV #エレクトリック #レンジローバー #電気自動車
TEXT:西川 淳
電気自動車が「クルマとしての魅力」でガソリン車を上回る時代に突入してきた!

前回は電動化という混沌とした時代において、自動車メーカーのクルマ作りが、プラットフォームを電気自動車(BEV)とガソリン車(ICE)で共有するべきか、それぞれに専用のものを用いるべきかという話をした。今回は西川 淳氏に「プラットフォーム共有派」のBMWに乗って感じたことを語ってもらった。 もはやBEV寄りの設計がメインか 前置きが長くなってしまった。今回はBEVとICEでプラットフォームを共有するパターンの雄、BMWの最新モデルである「X1」シリーズ(iX1を含む)を試乗して、いよいよBEVがICEの魅力を、「エンジンのBMW」車でさえ、上回ってきたのではないか、と思った話をしてみたい。 初期の共有モデル、「4シリーズ」や「X3」では実際にBEVとICEを乗り比べてみたところ、個人的に商品としての魅力ではICEグレードの方がまだ優っていると感じた。「7シリーズ」では「i7」の仕上がりに衝撃を受けたものの、それでも悩んだすえに選ぶならICEグレードだと結論づけた。BMWってやっぱりエンジンあってナンボのもんやね、そう思った反面、BEVの仕上がりが劇的に良くなりつつあることもまた感じていた。 そして新型X1だ。このモデル、BMWにとっては不慣れなFFをベースに改良を重ねて今日に至ったわけだが、新型のICEグレードはブランドのエントリーモデルとして十二分に通用する乗り味にまで仕上げてきた。 その上でBEVグレードに乗れば、これがもう完全にICEを上回るクルマになっている。共有設計に臨む姿勢がまるでBEVよりになったかのようだ。最近のICEは効率化重視でBMWといえども容易には官能性を表現できない。燃費のために走るようなエンジンであればいっそ電気モーターでも、と思うのがクルマ運転好きの思考というものだろう。 出だしのしなやかな動き、街中でのアクセルペダルの扱いやすさ、応答に優れたハンドリングの確かさ、高速走行時の安定感、そして全体を通じての爽快感など、どれをとってもBEVグレードはICEグレードを超えている。 繰り返しになるけれど、BMWグループは電動化に最も熱心なブランドだ。意外にも聞こえるが、エンジンに熱心である以上に他の動力源にも熱心だ。例えばFCEVへの取り組みでいうと、日本のトヨタと並ぶ本気度を見せている。“駆け抜ける歓び”は彼らのクルマ造りの信条で、その実現と発展に寄与するのであればICEに拘らない。シルキー6によって歓びが生まれたのではない。歓びのクルマにシルキー6が積まれていただけなのだ。

TAG: #BMW #EV #電気自動車
TEXT:西川 淳
電動化時代にクルマはどうやって作ればいい?まずはプラットフォームを軸に考えてみる

100年に一度の大変革期が自動車業界に訪れている。そして各メーカーは将来BEV(バッテリー電気自動車)専売ブランドになる年を明言し、BEVのラインナップを大幅に増やしている。しかしその作り方にはメーカーによって差がある。今回はプラットフォームに注目してその「差」を西川 淳が考察する。 プラットフォーム共有派のBMW 欧州ブランドの電動化、なかでもBEVへの取り組みに関しては、車体側のコンセプトとして大別すると2つのパターンがある。ICE(内燃機関)モデルとBEVモデルのプラットフォームを共有させるパターンと、全くわけてしまうパターンだ。 なかにはモデルの大小=コストに応じて混在させるブランドもあるが、それでも明確な方向性で考えたならいずれかのグループに区分けすることは可能だ。 前者の代表格としてBMWを挙げたい。ドイツプレミアムブランドの中では最も早くに電動ブランド“ i ”を立ち上げたこともあって、その名を冠するモデルの人気は上々で、独プレミアムブランドのなかでBEVを最もよく売っているメーカーだ。 「i」そのものはもはや独立したブランドとして機能していない。けれども、早い時期にそのイメージを定着させたことが現在に生きているようにも思う。加えて「iX」というインパクトあるデザインの専用設計モデルでハイトなBEVも得意だというアピールもできた。 だからこそ、ICEと同じカタチ(≒プラットフォームを共有する)をしたBEVでアピールできる。コンサバな顧客に安心感を与えることができたこともさることながら。

TAG: #BMW #EV #電気自動車
TEXT:桃田 健史
出雲大社の周辺道路で、EV「グリスローモビリティ」の実証。フリー乗降区間もあり観光に最適

島根県の出雲市内で今、EVカートを使ったグリーンスローモビリティが走行している。自家用車やレンタカーで訪れた際の現地の足として、また観光バスや電車で来た場合の補助的な交通手段として、出雲大社周辺を巡るには最適な乗り物だと評判になっている。どんなルートを走るのか、現地で体験してみた。 グリーンスローモビリティとは? まち歩きがもっと楽しくなる!グリーンスローモビリティで出雲大社周辺巡り。 そんなキャッチコピーを掲げているのは、一般社団法人 出雲観光協会だ。 島根県の出雲市といえば、出雲大社の存在が大きい。 出雲大社の資料によれば、神の国、または神話の国として知られている、八雲立つ出雲の国。その中心にあり、大国主大神様をおまつりするのが、出雲大社である。 出雲大社へのアクセスは、自動車の場合は山陰自動車道から、また高速バスはJR出雲市駅から一畑バス。また、電車では、一畑電車大社線で出雲大社前駅へ。 自動車で来た場合、新楽殿や教務本庁(おくにがえり会館)に近い無料の大駐車場に駐車するか、または参道に向かう神門通りにある民間の有料駐車場を利用することになる。 一方で、一畑電車など公共交通を使って来た場合、出雲大社の周辺移動は、観光タクシー、空港連絡バス、そして路線バスなどと徒歩移動をうまく組み合わせる必要がある。 そこで、出雲観光協会では、出雲大社周辺に巡りやすいルートを設定し、そこにグリーンスローモビリティを走らせる実証実験を行うことになった。 車両は、ヤマハ製のゴルフカートを一部改良したもの。 グローンスローモビリティは、ゴルフ場などで活用されているカートを公道で走行させるもの。最高速度は時速19kmと、乗用車に比べるとスローであり、またEVであることで排気ガスがなく、走行音も静かであることから、明確な定義はないが、総称としてグリーンスローモビリティという。国土交通省も、この呼称を用いて地域交通のひとつの手段として様々な交通関連施策に盛り込んでいる。 フリー乗降区間も設定 今回の実証試験の運行コースは、大きく2つ。 ひとつは、大社行政センターから参道に向かう神門通りを抜け、途中に出雲大社駅、有料駐車場がある神門通り広場、参道前の勢溜に止まり、そこから海側への神迎の道を行く。 稲佐の浜で折り返して同じルートで大社行政センターまで戻る。 もうひとつは、参道の東側にある古代出雲歴史博物館と稲佐の浜を往復するルートだ。 いずれも、朝から夕方まで1時間の間隔で走行。参道の入口からだと、2つのルートが重なるため、稲佐の浜までは30分間隔で運行することになる。 また、興味深いのは、神迎の道など、ルートの一部をフリー乗降区間としており、利用者の希望した場所でグリーンスローモビリティを乗降りできる点だ。 料金は1乗車あたり400円。 運行日は9月15日から11月13日の、金・土・日・月のみ。10月9日と29日は運休。 出雲市では、今回の実証試験の成果を検証して、今後の対応を検討していくことになるだろう。

TAG: #EV #国内ビジネス #電気自動車
TEXT:御堀 直嗣
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

TAG: #EV #EV知識・基礎の基礎 #御堀 直嗣 #電気自動車
北米でのホンダBEV戦略についての説明。筆者撮影
TEXT:桃田 健史
未だホンダBEV戦略ロードマップの詳細見えず。24年発売アキュラ「ZDX」でGM協業スタートするも、ホンダ独自専用BEVプラットフォームとの”すみわけ”は?

未だにホンダBEV戦略の実態が見えてこない。GM協業「アルティウム」とホンダ独自のBEV専用プラットフォームとの“すみわけ”はどうなるのか。また、日本でのBEVシフトに対してコンサバ過ぎる印象もある。ホンダのBEVはこれからどこに向かうのか? アメリカ市場最優先は当然の流れ ホンダのアメリカ現地法人のアメリカン・ホンダモーターが2023年8月18日、米カリフォルニア州モントレーで開催された「モントレー・カー・ウィーク」で、アキュラブランド初のBEVとなる「ZDX(ゼィーディーエックス」量産モデルを発表した。北米での発売は2024年初頭の予定。最高出力500馬力の「ZDX タイプS」も合わせて公開した。 そのほか、アメリカでは「ZDX」の兄弟車である、ホンダ「プロローグ」も2024年に発売される。 日本には現状で、アキュラブランドを展開する計画についてホンダは明らかにしておらず、「ZDX」が日本で販売される可能性は低いものと考えられる。また「プロローグ」についても北米市場向けとなる見込みだ。 周知の通り、ホンダのグローバル事業はアメリカ市場への依存度が高い。 そのアメリカでは、バイデン大統領が2021年8月に2035年に向けた自動車の電動化に関する大統領令を発令。次いで、2022年8月にはIRA(インフレ抑制法)が上下院で可決された。IRAによって、BEVの国内生産やBEV関連部品の調達についてアメリカ国内外からの投資を促す形となっている。 ホンダのみならず、日系メーカー各社の幹部は「グローバルで見た時、直近で最も重要なのはIRAへの対応」と本音を漏らす。 そもそもアメリカ市場を重視する必要があるホンダとしては、アメリカでの急激なBEVシフトに必死で食らいついていく必要があると言える。 そのため、オハイオ州メアリズビル工場とアンナ・エンジン工場、そしてジョージア州内のトランスミッション工場でのBEVシフトに向けた工場再編に着手しているところだ。

TAG: #ホンダ #電気自動車
TEXT:烏山 大輔
電動モビリティシステム専門職大学が8月26日土曜日にオープンキャンパスを開催

電動モビリティシステム専門職大学は、電気自動車と自動運転に特化したカリキュラムで、日本のみならず世界で活躍できるエンジニアの輩出を目指す大学だ。学生は、卒業時に学士(専門職)の資格を得ることができる。 今回のオープンキャンパスでは、下記のように様々なプログラムが実施される。 模擬講義 同学ならではの、電池、自動運転、モーター・インバーターなどの各領域について、それぞれの担当教授から、どんなことが学べるのか講義内容の紹介がある。 研究室見学 リチウムイオン電池の研究・開発に必要な全ての機器を備える同学の研究室を特別開放。各分野のプロフェッショナルである講師に直接質問もできる。 イベント 電動ミニカート試乗体験会、3D CAD操作体験会、二輪走行ロボットの制御方法が学べるロボット探求学修を実施する。 講演会 自動運転のソフトウェアを開発するスタートアップ企業であるティアフォアのCEO兼CTOの加藤 真平氏による講演会を開催する。 この他にも入試説明会や個別相談会、キャンパスツアーも行われる。最寄りの赤湯駅からの無料送迎バスも用意されている。 日本でも2035年にガソリン車の販売が禁止され、ハイブリッド車やPHEV、BEV(バッテリー電気自動車)、FCEV(燃料電池車)などにシフトしていく。自動運転についても今年4月にレベル4が解禁になった。今後は無人バスの社会実装など、同学で習得できるスキルはこれからの世界で必要とされるものだ。 電動化や自動運転の分野のトップランナーである現役の講師陣から学べる意義はとても大きい。これからの電動モビリティを創造する側で活躍したいと志す人は、ぜひこのオープンキャンパスに行って、自分の夢に近づいて欲しい。

TAG: #専門職大学 #自動運転 #電気自動車
ロールス・ロイス スペクターのフロントビュー
TEXT:小川フミオ
ロールス・ロイスはEV時代もスペックを語らない。CEOが語るスペクターが目指した「あるべき姿」

ロールス・ロイスはかつて、エンジンパワーをことさらに語らず「必要にして十分」とのみ記していた。今回、スペクターについてのインタビューでも、CEOはほとんど数字について触れることはなかった。電気自動車の時代になっても、彼らは彼らの流儀を守り続ける。その事実は、そんなところにも表れているようだ。 リリースに時間がかかった理由 ロールス・ロイスのBEV「スペクター」が登場するまでに、意外なほど長い時間がかかった、といえるかもしれない。 他社が次々とBEVを発表するのを横目に見ながら、満を持してのお披露目が2022年10月。そしてジャーナリストに試乗の機会が提供されたのが2023年7月。 「時間がかかったのは認めます。理由は、私たちがやるからには、完璧なモデルを出したかったからです。BEVの研究は、すでに知っているひとも多いと思いますが、10年以上にわたって続けてきました。そこでついに、ということです」 ロールス・ロイス・モーター・カーズのトルステン・ミュラー=エトヴェシュCEOは語る。スペクターはセグメントで初のBEVであるのも事実。なのでそう慌てる必要もなかったと続ける。じっくりと完璧をめざす。それがロールス・ロイスの姿勢というのだ。 いっぽう、ロールス・ロイスのBEVは、ドライブトレインをBMW「i7」と共用するというグループ内の計画に沿ったタイミングもあったのでは、と推測される。 ただし、あまりに皆がi7との共通点を質問するので、一度はロールス・ロイス側から、商品(スペクター)説明に先立って「みなさんは2台がじつは同じクルマなんじゃないかと聞きたいかもしれないですが(間を置いて)まったく異なったクルマです」と前置きしたこともあったと聞く。 スペクターは(i7と異なり)アルミニウムの押出し材を使ったスペースフレーム構造を採用する。ロールス・ロイスが「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」と呼ぶものだ。設計の自由度は高く、2030年までにラインナップを電動化するというロールス・ロイスの計画に適したものという。 「スペクターを皮切りに、これから、BEVモデルが出てきます。そのときも、ロールス・ロイス車のポリシーともいえる、エフォートレスドライビングやマジックカーペットライドは守ります。先に進みながらもヘリティッジを大切にする。このポリシーで作る未来のBEVは、デザインは新しいかもしれません。でも誰が乗ってもすぐに、ロールス・ロイスだ、とわかるモデルになっていくはずです」 数字よりも大切なこと インタビューをしていて、私がおもしろいなと思ったのは、ほとんど数字が出てこないことだ。バッテリー容量の話もないし、航続距離や加速性能の自慢もない。 CO2排出量を含めた地球環境保全のことは、すこし触れられたが、話題の内容は、もうすこし漠然とした“ロールス・ロイスらしさ”について。ただし別の面からみれば、モーターやバッテリーの性能よりも広い視野に立った、クルマづくりのポリシーの話である。 「私たちは数字のことを語りませんね。数字をどうこういうブランドではないのです。私たちにとって重要なのは“フィーリング”を伝えて、それを理解してもらうこと。具体的に語るのは難しいテーマなのは承知しています。作る側としては、からだに染みついたフィーリングで、乗ってもらうと、すぐに私たちの意図をわかっていただけるのです」 ミュラー=エトヴェシュCEOは、どう説明したらいいのだろうと一瞬思ったのか、ちょっとじれったそうに、そう言いながら、笑顔を見せる。たしかに「数字よりもフィーリングだ」なんて堂々と言える自動車メーカーが、ほかにどれだけあるだろうか。 「電動化してもロールス・ロイスらしさを守るには、きちんとした設計が必要です。私たちは、いまのカリナンやゴーストを電動化することはありません。これから登場するロールス・ロイスのBEVは、まったく新しいものです」 新しい、でも、伝統的。こういう興味深い命題を抱えながら製品づくりをするところが、まさにロールス・ロイスなのだろう。

TAG: #EV #スペクター #ロールス・ロイス #電気自動車
ロールス・ロイス スペクターのフロントビュー
TEXT:小川フミオ
誰が乗ってもロールス・ロイスと感じるEVが出来た理由。CEOが語るスペクターが目指した「あるべき姿」

ロールス・ロイス「スペクター」は、電気自動車だからといって、これまでのICE車と大きくかけ離れたデザインや仕掛けは与えられていない。なぜなら、グッドウッドから送り出すべきは、斬新なEVではなく、あくまでロールス・ロイスであるべきだから。同社CEOはそう語る。 ロールス・ロイスならではの開発要件 「ロールス・ロイスが手がけるBEVは、いかにもBEVでございというデザインである必要はありません」 そう語るのは、ロールス・ロイス・モーター・カーズのトルステン・ミュラー=エトヴェシュCEOだ。最初はシリコンバレーも候補地だったけれど、顧客のライフスタイルとの相性がよりよい場所にしようと選ばれたというプレミアムワインの産地、ナパバレーでの試乗会でのインタビューにおける発言だ。 スタイルしかり、とミュラー=エトヴェシュCEOは続ける。 「BEVを開発しようと決定してから私の頭のなかにずっとあったイメージは、乗るひとに感動してもらえるスタイルがほしい、ということでした。そこでワーミング(デザイン統括)とディスカッションし、美しいファストバックのクーペこそ、ロールス・ロイス初のBEVにふさわしい、と決めました」 クーペ(本来はホイールベースを短く切り詰めた、という意味)といっても、きちんと4人の大人が乗れるパッケージングは重要というのも、スペクター開発当初からの要件だった。 ロールス・ロイスの調査によると、顧客の多くは、パーソナルな雰囲気の強いクーペを好んでも、それでも友人たちと4人でレストランに出かけるなどのスタイルを送れるクルマを欲しがっているそうだ。 顧客に提供したいロールス・ロイス像とは、よく書かれているように、従来からロールス・ロイスが大事にしてきた特徴を、きちんと備えているものだったそうだ。 「ロールス・ロイスでは、いくつもの要件があります。力の要らない操縦性であるエフォートレスドライビング、飛んでいるように路面からの衝撃を受けず、そして静かなマジックカーペットライド、それにワフタビリティと私たちが呼ぶ静かな水面を進んでいくような乗り心地とか。これらを、スペクターも継承するのが、私が開発陣に対して出した条件です」 目指したのはICE車と同じフィーリング 結果は、まさにミュラー=エトヴェシュCEOの要望どおりに仕上がった。スペクターがBEVと知らされないまま運転する機会をもったロールス・ロイス車のオーナーがいたとしたら、操縦性になんの違和感も抱かないにちがいない。 「開発総責任者を務めてくれたドクター・アヨウビは、私が何を求めているか、最初に“BEVを作ることになったよ”と電話したときに、すぐ理解してくれたようです。私のなかにも、彼のなかにも、もはやロールス・ロイス車のフィーリングが染みついていて、なので、何度もテスト車の試乗を繰り返すなかで、お互いの言いたいことはすぐにわかったんです」 とくにBEVは、エンジン車と車体構造が異なるし、重心位置もちがう。スペクターに乗った瞬間に驚くのは、102kWhもの大容量のプリズム型バッテリーのパックを搭載しているはずなのに、床面は低く、サイドシルも低いこと。従来のICEのロールス・ロイスそのままなのだ。 「同じような乗り心地を実現することに彼は苦労していましたが、どんどんよくなっていって、それに感心しました。私が欲しいものを彼はちゃんと与えてくれる。私たちは言ってみれば、魂でつながる兄弟みたいだなあと思いました」 Vol. 3につづく

TAG: #EV #スペクター #ロールス・ロイス #電気自動車

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