注目度が増しているインホイールモーターとは
電気自動車(EV)を駆動する方法のひとつとして古くから考えられてきたのが、イン・ホイール・モーターだ。言葉どおり、タイヤを組み込むホイールの内側に、駆動用のモーターを取り付けて走るというものである。
一例として、昨年2025年、自動車部品メーカーであるアステモが、最新のインホイールモーターを発表した。円盤状の薄型モーターで、直径は12インチである。この直径であれば、軽自動車や小型車にも活用できる。最高出力は13kWだが、最大トルクは370Nmで、軽自動車のターボエンジンさえ上まわる。また空冷式を採用しているので、保守管理も楽になるだろう。

インホイールモーターの利点は、プラットフォームや車体側にモーターを搭載しないため、床下に敷き詰めた駆動用バッテリーのほかは、制御コンピュータや充電器以外に場所をとる部品がほぼなくなり、客室内の空間を今まで以上に有効活用できることだ。したがって、軽や小型のEVで十分と思えるほど利用価値が高まり、そのぶん、車幅などをあまり気にせず運転できたり、駐車でも限られた広さの場所に容易に停められたりすることになる。見栄えや嗜好は別として、小さなEVで満足度が高まれば、交通としての合理性が向上する。

一方、ホイールの内側というと、いわゆるバネ下と呼ばれるところでの重量が増し、走行性能への懸念がいわれ続けてきた。
バネ下とは、サスペンションの先という意味で、そこが重くなれば、バネやダンパーの負担が高まり、それがサスペンションを取り付ける車体側にも及び、乗り心地や車体の耐久性などにも影響しかねない。バネやダンパーの調整が十分でないと、タイヤ、ホイール、インホイールモーター、ブレーキを含めたものが上下に大きく振動し、乗り心地はもちろん、路面への接地性も悪化させかねない。

しかし、そうした懸念を払拭する取り組みも過去に行われている。
三菱自動車工業は、2009年にi-MiEVを発売する前、EVの研究開発の段階で、小型車のコルトを使ったインホイールモーターの試作を行っていた。その車両を試乗させてもらい、適切にバネとダンパーの調整を行えば、乗り心地も操縦安定性も損なわずに済むことを体験した。机上で考える以上に、ものづくりとしてはインホイールモーターの採用は不可能ではない。
ただし、たとえば4輪にインホイールモーターを使い、4輪駆動とした場合、同じく三菱自動車のランサーでその試作車を運転した際には、直線路を走っていても、わずかに直進性にふらつきが出るのを経験した。それは、インホイールモーターの4輪駆動が不都合であるということではなく、的確な走行の実現には、路面変化を踏まえながら4輪の駆動力制御を精緻に行わなければ、不自然さが残るという教えであった。開発段階でのインホイールモーターの4輪駆動車であるから、必ずしも完成された状態ではなかったのである。

そして、完成車という点では、メルセデス・ベンツがGクラスのEVでモーターを4輪個別に駆動できる仕様にして販売した。これは、既存のエンジン車のGクラスを基にしているので、インホイールモーターではないが、4つのモーターで4輪を駆動することから、4輪それぞれ別に駆動力を発揮させることができ、機能としては4輪インホイールモーターと同様といえる。そしてGクラスのEVは、まったく不自然さがないのである。
また、4輪を個別に駆動させることができるため、たとえば片側の前後輪は前進、反対側の前後輪は後退方向へ回転させると、その場で旋回することができる。つまりキャタピラで走る車両と同じような動きが可能になる。まして、GクラスのようなSUVで、未舗装路を走っているとき、その場で旋回しなければならないほど道幅が狭くても、それを可能にするのが、4輪個別の駆動の大きな特徴になる。

軽や小型で4輪にインホイールモーターを用いたと仮定するなら、行き止まりの道で方向転換する際、車体全長分の道幅があれば、その場で旋回して、道を戻ってくることができるようになる。このことは、後退が苦手という運転に不慣れな人でも、ひとりで運転して出かけることへの不安の軽減になるかもしれない。ただし、本来価格の安い小型のクルマに4つもモーターを使ったら、原価が高くなってしまうだろう。

排気の出ないEVであれば、屋内へもそのまま入っていけるということなど含め、インホイールモーターを活用したEVは、これまでエンジン車などで考えられなかった、あるいは実現不可能であった機能をもたらすことができる。それは、交通の新たな未来を切り拓くきっかけになるかもしれない。



















































